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24/12/14

資産運用・経済

【新NISA】資産に占める現金比率(キャッシュポジション)は何割がベスト?

【新NISA】資産に占める現金比率(キャッシュポジション)は何割がベスト?

2024年の株式相場は全体的には好調でした。新NISAのスタートもあり、積極的に投資している人が多いように感じます。しかし、2024年8月には大暴落も経験し、マーケット変動が大きくなっていることも事実です。

今回は、「このところのマーケット変動で不安です…。現金を残しておいたほうがいいのでしょうか?最適な現金の割合があれば教えてください」という質問について、解説します。また、資産のうち現金比率(キャッシュポジション)はどれくらいあれば良いのか、日本円を持っていることに意味があるのか、分散投資効果の側面からも解説していきますので、投資行動に活かしていただければ幸いです。

預貯金を持たず、ほとんどのお金を投資に回すのはNG!

質問に対するアンサーを先にお伝えすると、ほとんどのお金を投資に回すのはNGです。
お金は、目的・時期に合わせて適した金融商品・制度で貯めることが重要です。
そして、生活費の6ヶ月分〜1年分は必ず預貯金で持っておくことが大切。
無リスク資産(現預金・国債)が資産に占める割合の目安は、無リスク資産(現預金・国債):リスク資産=「年齢」:「120から年齢を引いた数字」です。

●お金は目的・時期に合わせて適した金融商品・制度で貯める

お金を貯めるときには、使う時期によって「短期」「中期」「長期」と3つに分けるのがベター。目的・時期に合わせて適した商品で貯めます。

<目的・時期に合わせて適した商品で貯める>

(株)Money&You作成

短期のお金は「日々出入りするお金」です。日々出入りするお金とは、日常生活費やもしもの場合に備えるお金です。これらは、すぐに引き出して使えることが重要なので、現預金で貯めます。

中期のお金は「5年以内に使い道が決まっているお金」です。5年以内に使い道が決まっているお金には、たとえば「住居購入の頭金」「車の購入費用」「留学費用」「結婚資金」などがあります。これらのお金は使うまでにやや時間がある分、少しでも増やしたいところですが、使うときに元本割れしていたら足りなくなってしまって大変です。ですから、お金を確実に準備できる定期預金や個人向け国債が適しています。

2024年は日本も「ゼロ金利政策」が解除されたことによって、金利が上昇する局面を迎えつつあります。こうした金利上昇リスクに備えるならば、半年ごとに利率が見直される10年変動国債がおすすめです。

長期のお金は「10年以上使わない将来のためのお金」です。10年以上使わない将来のためのお金とは、子供の大学資金や老後資金だけでなく、10年以上先に使う「車の買い替え費用」「リフォーム費用」「学び直し費用」などがあります。
これらのお金は使うまでに時間の余裕があるので、元本割れの可能性はあるけれど、増える可能性が高い株や投資信託を利用するのが適しています。その際、税制優遇のあるNISAとiDeCoを利用するのがベターです。

短中期のお金は無リスク資産で貯める

2024年からのNISAは使い勝手がよくなりました。投資で得られた値上がり益・配当金・分配金といった利益にかかる税金を一生涯にわたってゼロにできますし、投資できる金額の上限も増えました。さらに、途中で売却しても翌年に非課税の投資枠が復活して再利用できるからです。
しかし、NISAは万能な制度ではありません。投資である以上元本割れリスクがあるからです。つまり、NISAは短中期に使うお金を用意するのには適していないのです。

<短中期のお金は無リスク資産で貯める>

(株)Money&You作成

図の赤く囲った資産が無リスク資産。短中期のお金は、現預金や個人向け国債で貯めるのが大切です。

大前提として、投資を始める前に生活費6ヶ月分は現預金で必ず確保しましょう。急な病気やケガ、リストラなどが起こっても慌てずに済みます。もしもこうした万が一のときのお金もない状態で投資をしていたら、いざお金が必要になったというときに損失を抱えている資産でも売却せざるを得なくなります。なにより、キャッシュは心の安定を得るために必要なのです。
実際、投資やビジネスの世界では「Cash is King」と言われます。キャッシュの存在がいかに重要であるかを示す言葉です。

無リスク資産とリスク資産の割合は「120の法則」

キャッシュが必要なのはわかったとして、資産に占める無リスク資産とリスク資産の割合はどうすればよいのでしょうか。

リスク許容度(「自分がどのくらい損失に耐えられるか」の度合い)は人によって異なるので、あくまで参考情報ですが、無リスク資産とリスク資産の割合は、「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」を対応させる「120の法則」がひとつの目安です。

<無リスク資産とリスク資産の割合の考え方「120の法則」>

(株)Money&You作成

たとえば、自分の年齢が35歳であれば、無リスク資産とリスク資産の割合は「35:85」と考えるイメージです。もし資産が600万円あるなら、無リスク資産は175万円、リスク資産は425万円となります。同様に、自分の年齢が50歳ならば無リスク資産とリスク資産の割合は「50:70」。資産が1200万円であれば、無リスク資産500万円、リスク資産700万円に分けて保有するイメージです。

ただ、総資産が少ない場合は、無リスク資産の金額が少なくてもよいということになってしまいます。資産が120万円しかないといって、無リスク資産35万円:リスク資産85万円としても、35万円では万が一のときに困ってしまうでしょう。
最低でも生活費6ヶ月分は必ず無リスク資産である現預金で確保しましょう。

なお、一般的な「120の法則」は、たとえば40歳ならば「債券:株式=40:80」という具合に、債券と株式の割合で資産の割合を考えます。ただ、預貯金などの無リスク資産はこの法則とは別で考える必要があるため、正直使いにくいです。今回紹介した無リスク資産:リスク資産の「120の法則」は、筆者が使いやすくアレンジしたものです。

日本円を持つことは分散投資に有用

資産運用において「日本円」を持つことは、分散投資効果の側面からも有用です。

<資産別の相関マトリックス>

(株)Money&You作成

図はMRCI‘s Inter-Market Correlationの情報をもとに、直近半年間の資産ごとの相関をまとめたものです。ここでの相関とは、2つの資産の値動きの関係を表すもので、+1から-1の間で動きます。そして、1に近づくほど分散投資効果はがなくなり、-1に近づくほど利益を相殺します。
リスクを下げながら値動きとうまく付き合い、お金を堅実に増やしていくためには、相関は0か低相関となっていることが望ましいとされます。

日本円のところをみると、米国株価指数のS&P500、日本の株価指数の日経平均株価、金(ゴールド)と低相関になっている(=分散投資効果がある)ことがわかります。つまり、日本円を持っておくことは、分散投資効果の観点からも有用だということがわかります。

新NISAをきっかけに投資ブームになり、全額投資しようという人も多いのですが、それでもやはり貯める目的に合わせて金融商品を選ぶこと、分散投資の効果から日本円を持つことが大切だということがわかります。

「Cash is King」心穏やかに過ごすには、無リスク資産を一定比率持つこと

いくら市場が好調であっても、ほとんどのお金を投資に回すのはNG。お金は目的・時期に合わせて適した商品制度で貯めるのが重要です。

NISAやiDeCoといった税制優遇のある仕組みであっても、投資である以上は元本割れリスクがあります。ですから、短中期で使う予定のお金は現預金や個人向け国債といった無リスク資産で貯めるのがポイントです。また、投資を始める前に、生活費6ヶ月分は現預金で必ず確保しましょう。そうすることで、急な病気やけが、リストラなどが起こっても慌てずに済みます。

現預金は「Cash is King」ですから、一定比率持つことが安定につながります。無リスク資産:リスク資産は「年齢:120−年齢」を1つの目安にしましょう。日本円はS&P500・日経平均株価・金などと低相関ですので、資産運用に組み入れると分散投資交換の側面から有用です。

ぜひ今回の内容をきっかけに資産を改めて見直していただければと思います。皆さんの投資行動につながれば幸いです。

今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。


頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、TBS「情報7daysニュースキャスター」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍100冊、累計180万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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