22/04/06
年収1000万円でも老後破綻する末路を防ぐには
老後破綻とは、老後になり、年金や貯蓄だけで生活するようになった際、収入と支出のバランスが取れずに家計が赤字となってしまう状態のことをいいます。このような状態は、働いているときの年収の多寡は関係ありません。というのも、会社を退職すれば収入がなくなってしまうからです。また、現役時代に贅沢な生活が習慣となっていれば、収入が減ったとしても、なかなか支出を減らすことは難しいからです。
そのような状態のままであれば、あっという間にお金が無くなり、持っていた資産すべてを失ってしまうこともあるかもしれません。今回は、老後破綻という悲しい末路にならないための方法を解説します。
生活保護受給世帯は約165万世帯
厚生労働省「生活保護の被保護者調査」(2021年(令和3年)12月分概数)によると、2021年12月時点の全国生活保護世帯は約165万世帯。そのうち、高齢者世帯は約91万世帯(55.2%)になっています。これらの高齢者世帯のうち約84万世帯(92.3%)が単身世帯、7万世帯(7.7%)が2人以上の世帯となっています。単身世帯の方が多い理由としては、独身で過ごしたという方、夫婦の一方が亡くなってしまった方、熟年離婚をされた方などいろいろな場合が考えられます。
生活保護は、生活に困っている人を支援する国の制度のことですが、実際に生活保護を受けるには、いろいろな条件を満たす必要があります。たとえば、収入が最低生活費を下回っていることや身内からの支援が受けられないこと、住宅ローンの残債がないことなどです。
生活保護を申請しようとしても、条件をすべてクリアできずに申請できない場合、生活保護の申請するのが嫌でできていない場合などもあるでしょう。そのような場合も含めて考えると、もしかしたら、老後破綻している高齢者世帯の数はもっと多くなる可能性があるのではないでしょうか。
老後破綻が起こる4つの原因
老後破綻がなぜ起こるのか、その原因は4つ考えられます。
●老後破綻の原因1:収入・支出の現状把握ができていない
老後破綻する方は、収入と支出のタイムリーな把握ができていません。
現役時代は収入があるため、なんとなくでもお金を回すことができます。しかし、このなんとなくの状態を、そのまま見過ごし、老後を迎えてしまうと、たちまち収入と支出のバランスが狂ってしまいます。たとえ年収が1000万円以上あっても、毎月の家計が赤字の状態を放置していたら、老後破綻の可能性が高まります。
●老後破綻の原因2:支出のなかの固定費が多い
固定費とは、支出のうちの住居費、自動車費、保険料、通信費など毎月かかる費用をいいます。老後破綻する方は、固定費となる支出項目、支出額のどちらも多いのが特徴です。例えば、住居が広すぎたり、便利な立地に建っていたりして、かかる費用が大きくなりがち。わかっていてもなかなか見直しに踏み切れない事情などがあるかもしれません。
しかし、退職後に、高い家賃を支払い続けたり、住宅ローンを支払い続けたりすることがあれば、後に資金不足を招くことになります。
●老後破綻の原因3:将来受け取る年金などの確認ができていない
老後の生活の基盤となるのは公的年金です。この公的年金、実際にどのくらい受け取れるかご存知でしょうか。厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均年金月額は、老齢基礎年金の場合、月額5万6252円、厚生年金(老齢基礎年金を含む)の場合、月額14万4366円となっています。
公的年金から支給される額は、勤務年数や年収などにより変動しますが、現役時代の6~7割ほどとなります。実際のところ、思ったよりも少ないというのが現実です。しかし、老後破綻する方は、将来受け取る年金についても確認不足になりがちです。早いうちから「ねんきんネット」などでどのくらいもらえるのかシミュレーションしたり、毎年送られてくる年金定期便などもきちんとチェックしたりしましょう。
●老後破綻の原因4:貯蓄額が少ない
老後の公的年金はそう多く支給されません。そのため、何かしらの収入がなければ、貯蓄から少し持ち出しすることになるでしょう。また、そんなときに、自身の病気、配偶者の病気・介護や、その他不測の出来事で思ってもみないお金が必要になる場合もあります。そう考えると、やはりある程度の貯蓄は必要です。しかし、老後破綻する方は、貯蓄額が少ない傾向にあります。現に、年収1000万円以上でも貯蓄ゼロの世帯はあります。
老後破綻を防ぐ3つの対策
以上のようなことで老後破綻の悲しい末路をたどらないために、取るべき3つの対策を紹介します。
●老後破綻を防ぐ対策1:収入・支出をチェックしてダウンサイジング
老後破綻を防ぐためには、まずは老後の収入と支出をチェックしてみること。その際、収入よりも支出が多くなるようであれば要注意です。支出の洗い出しを行い、まずは早く効果が見える固定費の見直しを行います。
住居費は、より安く済む郊外へ引っ越したり、住宅ローンを早めに完済したりで、負担を軽くしておきましょう。自動車は、車検・燃料代・駐車場代・保険代など付随して様々な費用がかかるので、手放すことも検討します。医療保険や生命保険などは、多ければ安心というものではありません。どんな費用も、必要性をよく考え、収入に見合った内容にしましょう。
次に、変動費を見直します。変動費には、無意識で習慣的に使ってしまう飲食代や被服費などがあります。つい買ってしまうスイーツなど、無意識の飲食費は「月額3000円まで」などと予算を決めておくと節約効果が高まります。また、被服費などは、あるものを活用し、古くなり捨てたら買い足すようにするなどルールを設けてみるとよいでしょう。支出をしっかりダウンサイジングできれば、老後破綻となることはありません。
●老後破綻を防ぐ対策2:お金を貯めるしくみを作る
2019年の「老後資金2000万円不足問題」を覚えていらっしゃる方も多くいると思います。国民年金・厚生年金といった公的年金だけでは、老後2000万円程度不足するという内容でした。2000万円なんてムリと思わず、少しずつでも、老後に備え貯蓄するようにしましょう。そのためには、お金を貯めるしくみ作りがおススメです。
具体的には、自動積立定期預金などを利用した先取り貯蓄に取り組みましょう。毎月一定額が口座から引き落とされ、自動的に貯蓄にまわされるため、ムリなくお金を貯めることができます。金額も、多くしたり少なくしたり調整できるのも便利です。早く始めれば始めるほど、負担なく多くのお金が貯められます。
このしくみは、老後の年金生活をする際もできるだけ継続しましょう。そうすることで、持ち出しばかりで、どんどんお金が減ってくネガティブなイメージを払拭できるからです。「お金を貯めて、旅行に行ってみよう!」「新しい趣味にチャレンジしてみよう!」という目標もでき、計画的な老後を過ごすことができるでしょう。
●老後破綻を防ぐ対策3:老後の資金を準備する
老後破綻を防ぐためには、老後資金を準備しておくことが重要です。その際、所得税などの税金を節約しながら準備できる制度のiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を活用しましょう。
iDeCoは、60歳未満の方であれば、原則誰でも始めることが可能です(2022年5月より国民年金の加入者は65歳未満まで利用可能)。月額5000円からはじめることができ、上限は、加入者の職業等で違いがあります。
加入者は、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用し、60歳以降に一時金または年金で受け取ります。
iDeCoを利用すると、拠出した掛金が全額所得控除できるので、毎年の所得税や住民税を安くできます。また、運用益は全額非課税なので、より効率よくお金を増やせます。そのうえ、受取時にも控除が利用できるので、税金の負担を減らせます。
ただし、iDeCoは老後資金を準備するのが目的であり、原則60歳まで引き出すことができないので注意しましょう。
まとめ
老後破綻を防ぐには、お金の使い方を早いうちから計画的にすることが大切です。何から始めて良いかわからない場合には、悩みを抱え込まず、ファイナンシャルプランナーに相談してみると良いでしょう。支出のダウンサイジングやお金を貯めるための手順など、具体的なアドバイスがあり、あっさり問題解決するかもしれません。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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