24/05/28
一人暮らしで年金が月10万円…いくら稼げば生活できるのか
人生100年時代といわれ、リタイア後の生活は延びる傾向にあります。長い老後を過ごすためには、今ある資産をあまり減らさず生活することが大切です。今回は、65歳以上単身世帯の「家計調査報告(家計収支編)2023年」のデータを見ながら、不足する金額とその稼ぎ方を考えてみましょう。
65歳以上の一人暮らし世帯の手取り額は月10万円…
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年」のデータで、65歳以上単身世帯の家計収支は、以下のとおりです。
【実収入】
・社会保障給付:11万8230円
・その他:8675円
・合計額:12万6905円
社会保障給付は公的年金のことです。
【支出】
・非消費支出:1万2243円
・消費支出:14万5430円
・合計額:15万7673円
非消費支出には健康保険料や住民税や所得税が含まれます。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年」より
上記より、実収入から税金や社会保険料などの非消費支出を引いた所得である可処分所得(手取り)は11万4662円です。
さらにその他収入の8675円を差し引くと「10万5987円」。つまり、65歳以上の一人暮らしの人が自由に使える年金の目安は約10万円といえます。
年金の手取りを約10万円として、食費や光熱費などの消費支出は14万5430円です。その差額は4万5430円です。
ここで注意したいのは、住居費です。上記のデータでは「8.6%(1万2506円)」となっています。家計調査の対象の多くは、持ち家という人が多くいるうえ、住宅ローンを返済している人も含まれていないため、住居費の割合は少なくなっています。そのため、65歳以上も賃貸に住む予定という人は、住居費を多く見積もる必要があります。
以上より、持ち家の人であれば、年金だけで不足する額は約5万円。賃貸の人は「5万円+賃貸料」が不足します。つまり不足額は月5~15万円ほどとなり、その分を毎月補填する必要があるのです。
とはいえ、貯蓄から不足分を補填し続けていると、資産がみるみる減っていきます。老後資産が潤沢であれば問題ありませんが、そうでない場合「長い老後を無事に過ごせるかどうか?」という不安を抱えることになるのではないでしょうか。
そうならないために、不足分を働いて得るようにしてはどうでしょうか。
シニアの働き方にはどんなものがある?
シニアの働き方にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、「再雇用」「再就職」「個人事業主」の3つを紹介します。
●シニアの働き方1:再雇用
再雇用とは、定年まで正社員として働いた企業に、定年した後、嘱託・パート・アルバイトなどの雇用形態で働く制度です。企業によっては、再雇用後も「正社員」として雇用することもあります。今までの経験が生かせる、人間関係が大きく変わらないなどがメリットと感じる人も多いのではないでしょうか。
●シニアの働き方2:再就職
再就職とは、これまで働いてきた会社ではなく、別の会社に就業することをいいます。今までの経験を活かせる就職先を探したり、今までとは異なる分野に就職したりします。
60歳以上になると、家の近くで働きたい、短時間だけでよいなど、個々に働き方の希望が出てくる場合も多く、それにあわせてパート・アルバイトなどを探すようです。
最近では、シニアを戦力として積極的に雇用する企業も増えているため、自分のやりたいこと、強みなどにあった就職先が見つかるケースも増えています。
●シニアの働き方3:個人事業主
自分の得意、人脈を活かして「個人事業主」として働く人もいます。個人事業主のメリットは、健康であれば年齢に関係なく働くことができることでしょう。
今までの経験やスキルを洗い出し、できることがあればトライしてみるとよいでしょう。
シニアの仕事の探し方
シニアが仕事を探す場合に活用できる手段には、次のものがあります。
●シニアの仕事の探し方1:ハローワーク
ハローワークには、65歳以上の方の再就職を支援する「生涯現役支援窓口」が設けられています。
シニア向けの多様な就業先を紹介してくれたり、履歴書、職務経歴書の書き方や面接の受け方、求職活動の方法などのレクチャーをしてくれたりします。
●シニアの仕事の探し方2:シルバー人材センター
シルバー人材センターで紹介する仕事は、高齢者にふさわしい「臨時的な仕事」(1日だけの仕事あり)や「短期的な仕事」(月に10日程度)です。常用雇用ではないため、毎月一定の収入を必ず得るわけではありません。家の近くで働きたい方で、「空いた時間を有効に使う」「生活にメリハリをつけて人と交流する」ことを希望する方におすすめです。
●シニアの仕事の探し方3:民間求人サイト
民間の求人サイトにもシニア向けの求人が多く掲載されています。ハローワークの求人とあわせて、チェックしてみるとよいでしょう。
定年後も働くことを考えよう
65歳以上になれば公的年金がもらえます。しかし、公的年金だけで生活するのは厳しいという人は多いでしょう。しかし、毎月5~15万ほどの収入があれば問題なく暮らせるのではないでしょうか。
また、厚生年金には70歳まで加入可能。働きながら厚生年金をもらうこともできます(在職老齢年金)。65歳以降に支払った厚生年金保険料は「在職定時改定」といって、毎年年金額に反映されますので、給料を受け取りながら厚生年金が年々増えていきます。
シニア向けの求人は多くあります。まずは、ハローワーク、求人サイトなどでどんな求人があるのか確認することから始めましょう。働くことで規則正しい生活ができ、社会とのつながりも維持できます。働くことは、心と身体の健康にもよい影響を与えるでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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