24/03/28
定年後に最初に見直すべき「ある支出」
定年して以後は働かないとなると、お給料は入ってきません。年金をもらったり、これまでの貯蓄を取り崩したりして生活するようになると、現役時代のようなお金の使い方では、家計が成り立たなくなってしまうでしょう。そこで最初に見直したいのが無駄な支出。生活費をスリムにすることから始めましょう。
支出は人それぞれ、さまざまですが、多くの人が知らず知らずに無駄遣いをしている項目があるのです。まずは本当にその支出が必要なのかを考えてみましょう。そして、無駄だと感じたら見直してみましょう。
無駄を見直すならまずは固定費から
老後に限ったことではないですが、家計の見直しをするのであればまずは固定費から。固定費は一度見直しをして支出を抑えることができれば、その効果はずっと続くからです。食費や、趣味の支出を減らすとなると、我慢を強いられたり、努力をしたりしなくてはなりませんが、固定費の見直しは、我慢や努力を必要としないため、一度見直しをすると効果が継続できるメリットがあるからです。
固定費の代表的なものは、家賃、住宅ローン、光熱費、保険料などです。しかし、ひとくちに固定費といっても、見直しにくい費目もあります。たとえば光熱費は、契約を見直すことで節約をすることはできますが、近年のエネルギーの高騰の影響は避けられません。節約してもそもそもの金額が上がってしまうと、反対に支出が増えてしまう可能性もあります。
ですから、個人の裁量だけで見直しができるものから見直していきましょう。その代表的なものが保険料です。保険は万が一のときや、病気やケガをしたときに助けになるものですが、現役時代と老後で、同じ保障は必要ありません。つまり、老後の生活費を見直すのであれば、まずは保険料から始めてみましょう。
65歳から69歳が保険料をもっとも納めている年代
日本人は保険の加入率が高いと言われます。実際、65歳を過ぎても多くの人が加入し、年間で40万円を超える保険料を支払っているのです。
●世帯年間払込保険料(世帯主年齢別)
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」より
上の表は、1年間に各世帯が払っている保険料を世帯主の年齢別にまとめたものです。65歳から69歳までの人の保険料が43.6万円と一番高くなっています。また、年齢が上がると保険料も少なくなってはいきますが、それでも25万円以上の保険料を支払っています。
無駄遣いとなっている保険を見直そう
もちろん、本当に必要な保険であればいいのですが、そうでない場合もあるのではないでしょうか。そこで、無駄遣いとなっている保険を見直してみましょう。
一般的な生命保険は、残された家族が生活に困らないように加入しています。つまり、子どもは独立し、夫婦二人、もしくは単身になっているのであれば大きな死亡保障は必要ないと言えます。
お葬式代くらいは必要だと考える人もいるでしょうが、コロナ禍以降、葬儀の常識も変化しました。たくさんの参列者に葬送してもらう従来型の葬儀から、家族や近しい人だけで行う家族葬型が多くなっています。従来型の葬儀ではおよそ200万円程度かかるようですが、家族葬では40万円から100万円程度が相場。かかる費用もかなり少なくなります。
年間40万円以上も保険料を支払っているのであれば、必要のない保険を解約しても、2年から3年で家族葬の費用分くらいは貯蓄を増やすことができるのです。
もし65歳以降も大きな死亡保障保険に加入し、保険料を払い続けているのであれば、本当に必要かどうか見直しましょう。
また、医療保険については、老後の健康のこと考えると必要かもしれません。65歳くらいでは健康であっても、80歳を過ぎても同じように健康でいられるとは限りません。病気やケガで入院したり、治療したりすることも考えられます。入院費用や、手術費用が支払われる保険では、自己負担負担分の補填にもなります。とはいえ、日額の大きな保険や、特約がたくさんついて、保険料の高いものが必要かというと、そういうことではありません。健康保険や国民健康保険では高額療養費制度があり、自己負担金額は一定金額までとなるからです。
しかし、公的保険があっても、入院したときの差額ベッド代は自己負担になります。差額ベッド代は、6人以上の部屋であればかかりませんが、4人部屋でも差額ベッド代がかかることがほとんどです。そういった費用に備えるために医療保険があると安心でしょう。保険料が高額なのであれば、日額を下げたり、不要な特約を解約したりするなど、最低限の保障に見直しするとよいでしょう。
見直し効果の高い住宅関連費
保険料の見直しができたら、他の固定費も見直しを検討します。このなかで、簡単には見直しにくいものの、見直し効果が高いのは住宅関連費です。
住宅ローンが定年退職後まである場合や、年金収入では支払いが厳しい場合などは、それまで貯めてきたお金を使って繰り上げ返済することも一つの手段です。しかし、一度にまとまったお金を支払ってしまうと手元資金が減り、その後の生活に影響が出るようであれば、繰り上げ返済しない方がいい場合もあります。これはケースバイケースですので、金融機関に相談してみるとよいでしょう。
また、賃貸の場合は現役時代の家賃を支払うことで家計を圧迫することも考えられます。これまでは、通勤に便利なように駅から近い部屋を借りていたり、家族が多かったので広めの部屋を借りていたりすることもあるでしょう。しかし、定年退職後は会社に行くことも、家族が増えることもありません。家賃が高いのであれば老後の生活に見合った部屋に引っ越すことも考えましょう。例えば家賃が1万円安くなるだけでも年間では12万円、10年では120万円、20年では240万円も支出が抑えられます。継続して支払う固定費だからこそ、見直しの効果は高いのです。
●高齢者は賃貸が借りにくい?
もっとも近年、高齢者の賃貸物件への入居が難しい場合もあります。物件を貸す大家さんにとって、高齢者は家賃滞納や孤独死のリスク、連帯保証人の確保といった課題があると思われることから、入居を断ったり、厳しい条件を提示したりするケースがあるのです。
しかし、高齢者にとって賃貸物件は重要な選択肢の一つです。
持ち家の場合、修繕や維持管理の負担があります。また、介護が必要になったときにはリフォームがしなくてはならないかもしれません。施設に入るとなれば、売却する必要もあるかもしれません。しかし、賃貸物件であれば、こうした負担を軽減し、必要なときにサポートを受けやすい環境を選ぶことができます。
高齢者が賃貸物件を借りるには、金銭面・健康面での安定性をアピールすることが重要です。年金収入だけでなく、貯蓄や家族からの支援など、家賃を安定的に支払えることを証明しましょう。また、健康診断書などを提示することで、健康状態に問題がないことを示すことも有効です。
高齢者向けの賃貸物件を探す方法もあります。高齢者向けの物件には、バリアフリー設計や緊急通報システムなどの設備が整っており、高齢者の生活をサポートする体制が整っています。
最後は生活費全般を見直す
定年退職を迎えた方の相談にのっていると、支出の中で最後に気になるのはやはり生活費。食費や、光熱費といった細かい項目ではなく、全体としてどのくらい削減できるのかということです。
収入は当然現役時代よりも少なくなるので、支出も見直す必要があるのですが、多くの方が、現状よりも減らすことが難しいといいます。確かに、いきなり生活費を80%に抑えましょうといってもできるものではありません。ですから、まずはできることが始めてみるといいでしょう。
例えば買い物の回数を減らしてみるのはいかがでしょうか。今日は買い物に行かないと決めてしまえば、意外と行かなくても済んでしまうことも多いはずです。料理のための食材も、今日は家にあるものでなんとかする「ありものの日」と決めると、アイデアも湧いてきます。買い物に行くという時間と手間も省けますし、節約もできるので、ありものの日は意外と有効です。
無理をして節約ばかりしているとストレスにもなりますので、楽しみながらできる方法を考えてみるといいでしょう。
生活費は保険料から見直そう
老後に使える資金には限りがあります。無駄な支出を削減し、人生を豊かにするために使いたいものですね。特に見直したいのは生活費。それも、節約効果の高い固定費からです。なかでも保険の見直しは、最優先に取り組むのがおすすめです。
老後に必要な保険は、現役時代と異なります。定年退職までに保険料の払込が終わっていればいいですが、定年後も高額な支払いが続いているのであれば、本当に必要なものに見直し、支出を減らすことで家計の改善をしましょう。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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