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24/03/02

資産運用・経済

新NISAで絶対買ってはいけない5つの地雷商品

新NISAで絶対買ってはいけない5つの地雷商品

新NISAでは、つみたて投資枠・成長投資枠を利用して非課税の投資・運用が無期限でできます。2024年の「神改正」によって、新NISAは確かにより使いやすい制度になりました。
しかし、新NISAだからといって、どんな商品を買ってもいい、というわけではありません。新NISAの対象商品の中には、絶対に買ってはいけない「地雷商品」もあるのです。
今回は、新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品を5つ紹介します。

新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品1:信託報酬の高いインデックス型の投資信託

新NISAのつみたて投資枠で投資ができる商品は、国が定めた「厳しい条件」をクリアした投資信託・ETFとよく説明されています。具体的には、次のような商品です。

<つみたて投資枠で購入できる商品>

著書「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)より

こう見ると確かに、細かい条件はいろいろあります。
このなかで注目したいのが信託報酬。投資信託を保有している間にずっとかかる手数料です。たとえば、インデックス型の投資信託の場合、国内資産に投資するものならば年0.50%以下、海外資産に投資するものならば年0.75%以下が条件になっています。

この信託報酬の条件は一見「厳しい条件」かと思いきや、実はそうでもありません。というのも、信託報酬がこの条件よりはるかに低い投資信託がたくさんあるからです。

たとえば、全世界の株式市場に1本だけで手軽に分散投資ができる全世界株インデックスファンド「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)は、「オルカン」の愛称で投資家に知られる投資信託です。「投信ブロガーが選ぶ fund of the year」でも5年連続1位となるほど人気で、2024年1月9日には1日で1000億円も買われたと話題に。本稿執筆時点(2024年2月19日)の純資産総額は2兆5279億円にもなっています。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は、年0.05775%です。海外資産に投資するインデックス型の場合、信託報酬の条件は年0.75%以下ですから、圧倒的に安いですね。eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は運用会社としてのもうけを度外視した超低コストを実現していることがわかります。

しかし、全世界株インデックスファンドはeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の他にもたくさんあります。そして、商品ごとに信託報酬はバラバラです。たとえば、「全世界株式インデックス・ファンド」(運用会社:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ)というものがありますが、信託報酬は年0.528%です。また、「eMAXIS全世界株式」(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)は運用会社がeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と同じで、限りなく商品名も似ていますが、全く別の商品であり、信託報酬は年0.66%です。つまり、全世界株がいいからと、適当に商品を選んでしまうと、信託報酬の高いものを買って大損してしまうかもしれない、というわけです。

全世界株インデックスファンドは、同じ指数に連動する商品ならどの商品を選んでも運用成績に差はありません。しかし、信託報酬が違うと、手元に残る資産残高が変わります。

たとえば、新NISAで「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS全世界株式」にそれぞれ月5万円ずつ投資したとします。運用利率はどちらも年5%だった場合の30年後の資産額の差は次のようになります。

<信託報酬による資産額の違い>

(株)Money&You作成

どちらも同じ指数に連動しますので、同じような値動きをします。新NISAで投資した場合、30年で生涯投資枠1800万円を使い切りますので、30年までを表示しています。

信託報酬は「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が年0.05775%、「eMAXIS全世界株式」が年0.66%ですので、約0.6%の差があります。0.6%というとわずかな差のように見えますが、運用期間が長くなればなるほど、グラフのとおり大きな差になります。資産額は、20年後は約136万円の差、30年後は約430万円の差となっています。

ですから、新NISAでもまずは信託報酬が安い商品を選ぶようにすることがとにかく重要です。目安としては、信託報酬が年0.3%未満の商品を選びましょう。

新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品2:ターゲットイヤー型

ターゲットイヤー型とは、時間が経つにつれて自動的に資産配分を変化させる投資信託です。一般に、リスク許容度(いくらまで損に耐えられるかの度合い)は、年齢が上がるにつれて低くなります。これを踏まえて、ターゲットイヤー型では投資信託を保有する人が若いうちは株式の比率を高めて高いリターンを狙い、年齢が上がるにつれて徐々に債券の比率を高めてリスクを減らすという運用を運用会社が自動的にやってくれます。
新NISAのつみたて投資枠では20本ラインアップされています。成長投資枠も合わせると31本です。

しかし、ターゲットイヤー型の商品の信託報酬は、バランス型(配分比固定型)よりも高く設定されています。
たとえば、投資家に人気のバランス型(配分比固定型)「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の信託報酬は年0.143%です。
それに対して、つみたて投資枠のターゲットイヤー型「野村資産設計ファンド(DC・つみたてNISA)2060」の信託報酬は年0.462%。さらに、成長投資枠のターゲットイヤー型「アライアンス・バーンスタイン・財産設計2050」の信託報酬は年1.59%です。上でも確認したとおり、長期間運用するほどに資産額の差が大きくなっていきます。

バランス型を買うなら超低コストのものを買っておけばいいでしょう。わざわざ余計な手数料を払ってまで「自動的に資産配分を変化させる」必要はありません。

そもそも「年齢によるリスク許容度の変化」は、必ずしも万人に当てはまるものではありません。人生100年時代といわれて長生きする人が増え、70歳近くまで働く人が圧倒的に増えています。そのなかで、年齢だけを理由にリスクを減らしてしまうと、せっかくのお金を増やす機会を逃すことになってしまいます。

また、ターゲットイヤー型は、株式などのリスクの高い資産に投資しているときに大きな損失を被ってしまうと、債券などのリスクの低い資産に切り替わったあとで損失を挽回することはできなくなる点に注意が必要です。

新NISAではいつでも自由に資産を売却して引き出すことができますし、売却枠も翌年に復活します。もし、年齢によって資産配分を変えたいのであれば、ターゲットイヤー型に頼らずに、自分で資産を売却したり、新たに投資をしたりして調整すればいいだけのことです。ですからターゲットイヤー型の投資信託は、買ってはいけません。

SBI証券[旧イー・トレード証券]

新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品3:テーマ型

テーマ型は、世の中の流行や関心に合わせて、特定の企業や業界に投資する商品です。IT、バイオ、シェールガス、SNS、AI(人工知能)、ESG(環境・社会・企業統治)、SDGs(持続可能な開発目標)、仮想通貨(暗号資産)、ロボット、VR(仮想現実)、メタバースなど、投資対象となるテーマはたくさんあります。新NISAの成長投資枠の商品のうち、約300本がテーマ型です。

テーマ型は一見良さそうに見えるのですが、テーマ型ファンドが作られる時期に問題があります。テーマ型ファンドは、すでにそのテーマがある程度認知されて、株価が上がりきっているところで作られるため、買った瞬間がピークになっていることが多々あります。ピークを過ぎてしまえば、その後の値上がりも期待できません。徐々に資金が流出し、純資産総額も小さくなり、やがて繰り上げ償還されてしまいます。

そのうえ、テーマ型ファンドは手数料が高いのがネックです。購入時手数料がかかる場合もあり、信託報酬は年1.5〜2.5%と高くなっています。私たちの年金保険料を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の収益率が年3〜4%というなかで、テーマ型ファンドは信託報酬でその約半分を持っていってしまうのですから、高いですよね。ですからテーマ型ファンドも、買ってはいけません。

新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品4:隔月分配型

隔月分配型は、分配金を隔月で支払う商品です。多くは奇数月に分配金が出るようになっています。偶数月に年金がもらえる年金受給者が購入することで、毎月お金が受け取れる状態を作れる、というわけです。

新NISAの対象商品からは「長期の資産形成に向かない」という理由から、毎月分配金を支払ってくれる毎月分配型の投資信託は投資対象から除外されています。しかし、隔月分配型の投資信託は除外されていません。しかし隔月分配型は、毎月分配型と同様の理由で、これから資産を増やす資産形成層にはNGの商品です。

毎月分配型も隔月分配型も、運用で利益が出ているときはその利益から分配金を支払います(普通分配金)。しかし、運用で利益が出なかった場合も分配金を出さなければならないしくみの場合、元本を取り崩してでも分配金を支払うのです(元本払戻金・特別分配金)。そうすると、分配金を支払った分だけ元本が減ってしまうので、その後に値上がりしたときの恩恵は少なくなってしまいます。
また、複利効果を生かしてお金を長期的に増やすことを考えるならば、分配金はない方が効率的ですし、あっても再投資するほうが増えやすくなります。

投資家が受け取る分配金に占める普通分配金の割合を示す指標に「分配金健全度」があります。分配金健全度が100%ならすべての分配金が普通分配金ですが、100%を切っている場合は元本を取り崩して出している分配金があることを示します。

たとえば、新NISAの成長投資枠で購入できる「インド株式フォーカス(奇数月分配型)」の場合、1年間の分配金健全度は85.42%となっていました。つまり、分配金の約15%は元本払戻金だとわかります。ちなみに、信託報酬は年1.8%とかなり高いです。

隔月分配型の投資信託は、年金生活をしている資産取り崩し層なら利用価値はありますが、これから資産を増やそうと考えている資産形成層が利用するメリットはありません。

加えて、隔月分配型は購入時手数料がかかる場合もあり、信託報酬も年1〜2%と高く設定されています。
信託報酬が1%を超えてくる商品は、銀行・郵便局・証券会社といった金融機関が自分たちの儲けを出すために売りたいと考えているものです。しかし、資産形成においては意味のないものなので、手を出さないようにしましょう。

【確定拠出年金(iDeCo)専用】SBI証券

新NISAで絶対買ってはいけない地雷商品5:ファンドラップ・ロボアド

ファンドラップは、投資家と金融機関との間で「投資一任契約」を結び、売買や資産管理をすべてお任せするサービス。ロボアドは、金融のプロが開発したアルゴリズムを投資に生かすことのできるサービスです。どちらも、投資を任せられるという点では似ています。ロボアドはロボットなので、人が相対することはないのですが、ファンドラップは相談できるという点が違います。

お任せで投資できるのは一見よさそうに見えるのですが、やはり手数料が割高なのがネックです。
ファンドラップやロボアドを利用した結果購入する商品は、低コストの商品の場合もあります。ロボアドでは低コストのETF(上場投資信託)やインデックスファンドなどを購入しますし、ファンドラップでも一部そうした商品を購入するのですが、信託報酬が高い商品も紛れ込んでいます。

信託報酬に加えて、ファンドラップやロボアドを利用するときの利用手数料も負担します。
ファンドラップを利用すると「口座管理手数料」や「投資一任手数料」といった手数料が年間1〜3%程度かかるうえ、金融機関によっては、得られたリターンから5〜10%の「成功報酬」を徴収するところもあります。
ロボアドも、ポートフォリオを診断して商品を示すだけの「アドバイス型」は無料ですが、資産配分や投資商品の選定まで行う「運用一任型」は年1%前後の手数料がかかります。

そもそも、ファンドラップやロボアドの運用成績が優れているかといえば、そうでもありません。たとえば、ロボアドの投資は分散投資で、バランス型の投資信託とやっていることは大きく変わりません。それなのに年1%前後の手数料がかかるのはおかしいですよね。

上で紹介した「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の信託報酬は年0.143%ですが、ロボアドではこれと同様の分散投資をして年1%の手数料がかかるとなれば、年約0.86%の手数料の差が生じます。この差が30年続くと、資産額に相当の差が生じるでしょう。

ロボットだからすごそうとか、証券会社の人がやっているからすごいとか、そういうことはありません。投資をお任せしても、やっていることは一般消費者と同じです。将来のことは誰にも(ロボットにも)わからないので、合理的に考えて低コストの商品・分散された商品を買った方がいい、というわけです。それであれば、低コストのインデックスファンドのほうがいいでしょう。

もし積極的に投資をしたいのであれば、自分で個別株に投資しましょう。今や1株から投資できますので、たとえばNTT(9432)なら1株180円程度から購入可能(2024年2月20日時点)です。新NISAの成長投資枠で購入すれば利益にも課税されません。スマホで簡単に取引できる時代なのですから、自分で取り組みましょう。

余計なコストを抑えて投資しよう

新NISAでは、今回紹介したような地雷商品には手を出さないようにしましょう。つみたて投資枠では手数料の安いインデックスファンドに投資する、あるいは分散を効かせてバランスファンドに1本だけ投資するようにして、成長投資枠で積極的に投資をしたいならば、個別株に1株〜10株程度投資するという戦略もあります。
余計なコストをできるだけ抑えた、シンプルな投資行動でお金を増やしていきましょう。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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