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23/09/29

家計・ライフ

年収300万円・500万円・700万円の給与所得控除が10分の1になったらどうなるのか

年収300万円・500万円・700万円の給与所得控除が10分の1になったらどうなるのか

「給与所得控除が減るかもしれない」というニュースを耳にしたことはありませんか。給与所得控除が見直されると、わたしたちの生活にいったいどのような影響を与えるのでしょう。今回は、そもそも給与所得控除とは何か解説したうえで、給与所得控除が減ると手取りがどう変わるのか解説していきます。

給与所得控除とは

会社員が働いて給料やボーナスをもらうと、そのうちのいくらかを税金として納める必要があります。ただ、会社員として働くためには、仕事用のスーツ代や勉強用の本代、通信費などを負担しなければなりません。そこで、もらった給料やボーナスをすべて税金の計算対象にするのではなく、いくらか差し引いてから税金を計算する仕組みが作られました。ここで差し引ける費用のことを「給与所得控除」と呼びます。

自営業の場合はかかった経費をそのまま収入から引いて税金を計算しますが、会社員はどこまでを経費とするかが曖昧になりがちですし、一人ひとりが毎年経費の計算をしなければならないのも大変ですよね。そのため、給与所得控除は収入金額に応じて定められた下記の計算式をもとに算出することになっています。

●給与所得控除を求める計算式

国税庁「給与所得控除(令和2年度以降)」より筆者作成

年収300万円の場合の計算式は、300万円×30%+8万円=98万円。つまり、年収300万円のうちの98万円を給与所得控除として差し引くことができます。

同様に、年収500万円の場合の給与所得控除額は、500万円×20%+44万円=144万円。年収700万円の場合の給与所得控除額は、700万円×10%+110万円=180万円となります。

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税制改革で、今後給与所得控除が減ってしまうかも

上記で計算したように、多少の差はありますが、収入のおおよそ3割程度を給与所得控除として差し引くことができます。しかし最近、政府の税制調査会にて「給与所得控除額を引き下げてはどうか」という話題が出るようになりました。

税制調査会が2023年6月に発行した資料「わが国税制の現状と課題-令和時代の構造変化と税制のあり方-」によると、日本は主要国の制度と比較して、給与所得控除額の割合が大きく、かなり手厚いとのこと。また、会社員が必要経費として支出している金額は、実際は収入の3%程度しかないと試算されたそうです。これらの理由から「会社員が税金において優遇されすぎている」と判断した政府は、給与所得控除の見直しについて議論をはじめました。

見直しがなされた場合にどれくらい給与所得控除額が減るのか、まだ具体的には言及されていません。ただ、「会社員が必要経費として支出している実際の金額は収入の3%程度」という試算に基づき、給与所得控除額が収入の3%にまで下げられてしまう可能性もあると考えられます。

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給与所得控除が10分の1になったらどうなる?

現在は収入の3割程度を占める給与所得控除が、税制の見直しによって収入の3%ほどに下げられてしまうかもしれないと解説してきました。実際、給与所得控除が現在の10分の1にまで減額されたら、わたしたちの税負担はどう変わるのでしょうか。

ここからは、年収300万円の会社員を例に、給与所得控除が3%になると、所得税と住民税がどれくらい増えるのか簡単に試算していきます。

●見直し前、現在の給与所得控除の場合

現在の制度における年収300万円の給与所得控除額は、先ほど計算した通り98万円。また、所得が2400万円以下の国民全員が48万円の基礎控除を受けられます。よって、300万円から給与所得控除の98万円と基礎控除の48万円を差し引いた154万円が税金の計算対象(課税所得金額)となります。

国税庁のホームぺージに掲載されている「所得税の速算表」を利用して計算すると、課税所得金額154万円の場合の所得税額は、154万円×5%=7万7000円。

住民税は自治体によって多少異なりますが、ここでは課税所得金額の10%に5000円を加えた額とします。課税所得金額が154万円ですから、住民税は154万円×10%+5000円=15万9000円。

したがって、年収300万円の会社員が支払う所得税と住民税の合計は、現在の制度の場合、7万7000円+15万9000円=23万6000円となります。

●見直し後、給与所得控除が収入の3%まで下げられた場合

給与所得控除が収入の3%になった場合、年収300万円の会社員の給与所得控除額は、300万円×3%=9万円。300万円から給与所得控除の9万円と基礎控除の48万円を差し引いた243万円が、課税所得金額となります。

先ほどと同様に「所得税の速算表」を利用して計算すると、課税所得243万円の場合の所得税額は、243万円×10%-9万7500円=14万5500円。住民税は、243万円×10%+5000円=24万8000円。

給与所得控除が3%になった場合の所得税と住民税の合計は、14万5500円+24万8000円=39万3500円となりました。現行の制度では23万6000円でしたから、年間の税負担が15万7500円増えることになります。

●年収300万円・500万・700万円を比較

筆者作成

年収500万円・700万の場合についても同様に計算し、上記の表にまとめました。年収が増えると、給与所得控除が3%になった場合の税負担もかなり大きくなることが分かります。

まとめ

現状の制度では収入のおよそ3割を差し引くことができる給与所得控除ですが、最近控除額を見直す動きが強まっています。給与所得控除が3%に下げられてしまうと、税負担がかなり増え、生活に大きな影響を及ぼしてしまうでしょう。政府の動向をチェックしつつ、将来に備えておかねばなりません。

木下七夏 Webライター

大学卒業後金融機関に勤め、個人のお客さま向けの営業を担当。退職後にFP2級を取得し、フリーライターに。FPで学んだ知識や金融機関勤めの経験を生かして、生活にまつわるお金の疑問を分かりやすく噛み砕いて解説する記事を作成している。

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