23/08/10
個人年金保険、意外と大きい受取時にかかる税金と社会保険料
公的年金だけでは老後資金が不足すると言われているため、個人年金保険へ加入している方や、加入を検討している方も多いのではないでしょうか?個人年金保険に加入すると、個人年金保険料控除が受けられるので、節税効果もあります。 ただし、個人年金は、受取時に税負担が大きいことを知っておきましょう。本記事では、個人年金保険の受取時にかかる税金や社会保険料について説明します。
個人年金保険に加入するメリット
個人年金保険とは、公的年金に上乗せする私的年金の1つです。60歳や65歳など契約で定めた年齢まで保険料を払い込み、その後年金形式または一括でお金を受け取れます。個人年金保険を利用すれば、貯金が苦手な人でも老後資金を積み立てられます。運用を保険会社に任せられるので、自分で運用する自信がない人にも向いている方法です。
個人年金保険の保険料を納付している場合、条件をみたしていれば個人年金保険料控除が受けられ、所得税・住民税を安くできます。個人年金保険料控除の額は年間の保険料払込額によって変わりますが、上限で4万円(※平成24年1月1日以後に締結した契約の場合)となっています。
個人年金保険の受取時には税金に注意
個人年金保険に加入すると、保険料納付期間中は個人年金保険料控除による節税メリットがあります。ただし、受取時の税金に関するデメリットに注意しておきましょう。受取時の税金は、年金形式で受け取るか一括で受け取るかで変わります。
●(1) 年金形式で受け取る場合
契約者と受取人が同じか異なるかで、次のように分かれます。
【契約者と受取人が同一の場合】
毎年受け取る年金は「雑所得」となり、所得税・住民税が課税されます。雑所得は、必要経費を差し引いた部分が課税対象となります。必要経費とは、次の計算式で算出される金額です。
必要経費=その年の年金受取額×(払込保険料の合計額/年金の総支給見込額)
たとえば、毎年60万円を10年間(合計600万円)受け取れる個人年金保険の場合、払い込んだ保険料の合計額を450万円とすると、
必要経費=60万円×(450万円/600万円)=45万円
となり、60万円から45万円を差し引きした15万円に課税されます。雑所得は総合課税ですので、他の所得と合算した金額によって税率が決まります。
なお、公的年金も雑所得ですが、公的年金等控除が受けられます。また、私的年金の中でも、iDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金などは公的年金等控除の対象となり、税負担が軽くなっています。しかし、個人年金保険では公的年金等控除が受けられず、受取時の税金に関しては不利になっています。
【契約者と受取人が異なる場合】
年金受取開始時に年金を受け取る権利の贈与があったとみなされ、1年目は贈与税の課税対象になります。贈与税は年金受給権の評価額から110万円を控除した部分に課税されます。年金額が同じ場合、所得税より贈与税の方が税額は多くなってしまいます。
仮に年金受給権の評価額が600万円だとすると、贈与税の課税対象は600万円-110万円=490万円となります。贈与税の税率は課税対象の金額によって異なりますが、400万円超600万円以下の場合は30%(控除額65万円)ですので、贈与税は490万円×30%-65万円=82万円となります。
2年目以降は雑所得となり所得税・住民税がかかります。ただし、既に税金を払っている部分については課税対象にならないため、2年目以降の負担はそれほど大きくはなりません。
(2) 一括で受け取る場合
この場合には一時所得となり、「総収入額-保険料払込総額-特別控除額(50万円)」の2分の1が課税対象になります。
個人年金を受け取ると社会保険料にも影響
個人年金を受け取って所得が増えると、社会保険料の負担も大きくなります。60歳以降も国民健康保険など公的医療保険に加入して保険料を払わなければなりません。国民健康保険の保険料は所得を基準に決まるので、保険料が高くなる可能性があります。
まとめ
計画的に老後資金を準備するために、個人年金保険を利用するのも1つの方法です。ただし、個人年金保険は年金を受け取る際に、iDeCoなどと比べて税金面で不利になってしまうことも知っておきましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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