25/10/05
繰り上げ?繰り下げ?年金の受け取り方の正解パターン6選

年金は原則65歳から受け取れますが、60~64歳に繰り上げたり、66~75歳に繰り下げたりすることも可能です。本記事では、繰り上げ・繰り下げの仕組みを解説しながら、代表的な6つの正解パターンを紹介します。
年金の繰り上げ・繰り下げとは?
公的年金は、原則として65歳から受け取り開始となります。しかし、希望すれば受給開始年齢を60歳から75歳までの間で自由に選ぶことができます。これが年金の繰り上げ・繰り下げの制度です。
●繰り上げ受給
65歳より早く年金を受け取り始めることです。受給開始年齢が早まる代わりに、年金額は減額されます。繰り上げした場合、1か月あたり0.4%減額され、最大で24%(60歳から受給開始の場合)の減額となります。減額された年金額は生涯変わりません。
●繰り下げ受給
65歳より遅く年金を受け取り始めることです。受給開始年齢が遅くなる代わりに、年金額は増額されます。1か月あたり0.7%増額され、最大で84%(75歳から受給開始の場合)の増額となります。増額された年金額は生涯変わりません。
年金の受け取り方の正解パターン6選
年金の受け取り方の正解は人それぞれで、健康状態、資産状況、家族構成、ライフスタイル等によって変わります。ここでは、代表的な6つのパターンを紹介します。
【繰り上げを選ぶべきパターン】
●1. 60歳以降働けず、貯蓄も乏しい場合
定年後すぐに収入が途絶え、貯蓄も少ない人は繰り上げが有力です。受給額は減ってしまいますが、生活費の確保を優先すべきでしょう。
●2. 元気なうちに年金を受け取りたい場合
人生は一度きりです。厚生労働省「簡易生命表」によると、2024年の日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.13歳で、今後も延びていくとみられています。しかし、それでもいつ何があるかわかりません。元気なうちに旅行や趣味などにお金を使いたいと考える人もいるでしょう。年金額は減っても今を充実させたい人は、繰り上げ受給が適しています。
【繰り下げを選ぶべきパターン】
●3. 65歳以降も収入がある場合
会社員として働き続けたり、フリーランスとして収入があったり、あるいは不動産所得などの年金以外の収入がある場合は、あえて年金を受け取る必要はありません。年金の受給開始を遅らせて、増額された年金を将来受け取る方が、生涯の受給総額が増える可能性があります。
●4. 十分な貯蓄があり、当面の生活に困らない場合
老後の生活資金として十分な貯蓄がある場合は、年金に頼ることなく生活できます。この場合、年金の受け取りを繰り下げることで、将来受け取る年金額を大きく増やすことができ、長生きリスクに備えられます。人生100年時代と言われる現代では、老後の生活資金が枯渇するリスクに備えることが重要です。
●5. 加給年金を受け取れる場合は繰り下げない方が得かも
65歳に到達したとき、扶養している年下の配偶者がいれば、老齢厚生年金に上乗せして加給年金を受け取れます。しかし、老齢厚生年金を繰り下げした場合には、加給年金も受け取れません。
繰り下げと加給年金の受け取りのどちらが得かは、配偶者との年齢差や何歳まで生きるかによって変わってきます。平均寿命から考えると、配偶者との年の差が5歳以内の場合には、繰り下げ受給の方が得と考えられます。
●6. 老齢基礎年金と老齢厚生年金を分けて繰り下げる方法も
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらか一方だけ繰り下げることも可能です。70歳まで働く予定だけれど65歳から生活費が必要な場合は、基礎年金は65歳から受給し厚生年金のみ繰り下げる方法があります。また、夫婦の老後対策として妻の老齢基礎年金を繰り下げることで、夫の死後に遺族厚生年金と増額された基礎年金を合わせて収入を底上げできます。
ただし、妻が老齢厚生年金を受給できる場合は注意が必要です。夫の死後は遺族厚生年金か自分の老齢厚生年金のどちらかを選ぶ必要があり、以降の繰り下げはできません。この場合は老齢基礎年金のみの繰り下げが効果的でしょう。
年金は自分に合った受け取り方を選択しよう
年金の繰り上げ・繰り下げは、それぞれにメリットとデメリットがあります。今の生活資金を優先したいなら繰り上げ、将来の安心を優先したいなら繰り下げが基本的な考え方です。
ただし、加給年金の有無や夫婦の年齢差、遺族年金との組み合わせなど、状況により有利不利が変わります。老後の資金計画を立てる際には、複数のパターンをシミュレーションし、自分に合った選択をしていきましょう。
【関連記事もチェック】
・年金がプラス83万円上乗せ「長期加入者の特例」、対象となる人は意外と少ない
・60歳以降の厚生年金保険料は払い損?国民年金保険料を含むはずが基礎年金は増えない現実
・パチンコで100万円儲かったら、税金は一体いくらかかるのか
・年金収入のみの場合、所得税・住民税がかからないのはいくらまでか?
・9割が知らない隠れ年金「加給年金」年40万円もらえる人はどんな人?

森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう