22/11/26
人気の高いS&P500ETFのVOO、IVV、SPLG、SPYを徹底比較!プロが選ぶ正解はコレだ
世界経済を牽引する米国株を1本でバランスよく買える米国ETF(上場投資信託)。ただ、米国ETFとひとくちにいっても、いろいろなETFがあります。
今回は、そのなかから低コストで人気の高いS&P500連動ETF「VOO」「IVV」「SPLG」「SPY」の4本を徹底比較。結局、どれを選ぶのがいいのかまで解説します。
S&P500に投資する米国ETFは?
米国の株価の値動きを示すインデックス(指数)には、たとえば
・CRSP US Total Market Index
・S&P500
・NYダウ
・ナスダック100
といったものがあります。
このうち、今回比較するのは「S&P500」と連動を目指す米国ETFです。
S&P500は、ニューヨーク証券取引所・ナスダック証券取引所の両取引所から500銘柄を選抜して算出されている株価指数。米国の株式市場の約80%をカバーしています。
S&P500と連動を目指す米国ETFの中で、低コストで純資産総額の大きい人気ETFには、
・バンガード・S&P500ETF(VOO)
・iシェアーズ・コアS&P500ETF(IVV)
・SPDRポートフォリオ S&P500ETF(SPLG)
・SPDR S&P500ETF(SPY)
の4本があります。
もしも、S&P500にリーマンショック明けから積立投資していたら、投資結果は次のようになっています。
●リーマンショック明けからS&P500に月1万円投資したら?
(株)Money&You作成
2008年9月から2022年9月までの積立元本は169万円。それが328万円増え、資産総額は497万円になっている計算です。実に3倍近くに増えています。
リーマンショック後順調に右肩上がりとなっているS&P500は、直近では下落しています。にもかかわらず、資産総額が横ばいとなっている理由は、円安の影響です。米ドル/円の為替レートがこのところ急激に円安になり、一時1ドル=150円を突破しました。この円安が株安を打ち消している、というわけです。
今後の株・為替の値動きがどうなるかはわかりません。しかし長期的には、S&P500は米国経済の成長とともに右肩上がりになることが期待できます。ですから、値動きにとらわれずに、淡々と積立投資を続けるのがいいと考えます。
S&P500に連動を目指す米国ETFを徹底比較
では、S&P500に連動を目指す米国ETF、どれに投資するのがいいのでしょうか。
●VOO・IVV・SPLGの比較表
(株)Money&You作成
表はVOO・IVV・SPLGのデータを詳細に比較したものです。これら3つの米国ETFは、運用会社がそれぞれ異なります。
・VOO:バンガード
・IVV:ブラックロック
・SPLG:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ
表内、赤字にしたところが他の米国ETFと比較して有利と考えられるポイントです。
保有中の経費率は、いずれも0.03%ととても安く抑えられています。低コストで米国企業の成長の恩恵を受けることができます。
終値を見ると、SPLGが43ドルと、VOO・IVVよりもずいぶん安くなっていることがわかります。米国ETFは1口単位で購入できますので、いちばん手軽に購入できるのはSPLGということになります。
資産総額がもっとも多いのはIVVで、SPLGの資産総額はIVVの約20分の1だというと、SPLGの資産総額が少なく感じられるかもしれません。しかし、134億ドルは、日本円にすると約2兆円です。資産総額の規模だけで投資する米国ETFを決める必要はないでしょう。
トータルリターンは、同じS&P500に連動を目指す米国ETFにもかかわらず、SPLGが高めです。そのわけは後述します。
直近分配金利回りはIVVが2%超えと、VOO・SPLGよりも高くなっています。したがって、分配金を重視するのであればIVVを選ぼう、となります。
乖離率とは、ETFの基準価額の変化率(騰落率)とベンチマークの変化率(騰落率)との差のこと。乖離率が少ないほど、ベンチマークときちんと連動していることを表します。乖離率はVOO・IVVが0.01%ですので、SPLGよりもS&P500と連動していることがわかります。
SPYとSPLGならどちらがいい?
冒頭で、SPYというETFも紹介するとお話ししました。SPYは、SPLGと同じ運用会社、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのETFです。SPYをSPLGと比較してみましょう。
●SPYとSPLGの比較表
(株)Money&You作成
SPYは、純資産残高が3422億ドルと、全米最大のS&P500ETF。高い流動性が特徴で、機関投資家の売買に利用されています。設定日も1993年と古く、昔からある米国ETFです。ただし、経費率が0.09%と、ここまで紹介してきた他の米国ETFと比べると高めになっています。
SPLGは、VOO・IVVに対抗するべく、2020年1月24日にベンチマークを「SSGA大型株式指数」から「S&P500」へ変更しています。SPLGは、最近になってベンチマークが変更されているため、トータルリターンが少し高くなっていた、というわけです。
SPYとSPLG、同じS&P500に連動するならば、安い方がいいでしょう。SPYとSPLGで悩むならば、SPLGでいいと考えます。
結局、VOO・IVV・SPLGどれを選ぶ?
VOO・IVV・SPLGの3つの米国ETFは、いずれもコストに差がなく、乖離率も低く、値動きにもほとんど差がありません。ですから、気軽に選んでも問題はありません。
選ぶ指針としては、直近分配金を重視するならIVV、1口あたりの投資金額を抑えたい・口数を多く買い付けたいならばSPLGがいいでしょう。1ドル=150円として、VOOは1口約5万円しますが、SPLGであれば7口は購入できる計算です。
VOO・IVV・SPLGは、いずれも楽天証券・SBI証券・マネックス証券などで購入できます。S&P500ETFを選ぶ際の指針にしていただければ幸いです。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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