23/08/19
保険金等を受け取ったときに、意外と大きい税金の話
日本人の多くの方が保険に入っています。保険には、種類がとてもたくさんありますが、どの保険かによって保険金を受け取ったときにかかる税金が異なります。いったいどう違うのか、保険金等を受け取ったときの税金について、紹介します。
今回は、登録者数8万超のYouTubeチャンネル「FPナナコ【働く女性のお金の教養教室】」を運営されているFPナナコ先生ことファイナンシャルプランナー塚越菜々子さんをゲストに招いて収録したMoney&YouTVの動画「知らないと損する、保険金等を受け取ったときの税金の話」の様子をお届けします。
FPナナコ先生は、税理士事務所に15年間勤務し、500件を超える企業や個人の財務経理に従事。2017年に独立後、2600人の家計や資産運用のサポートを行っています。平均的な家計に合わせるのではなく、わが家が大事にしている部分にお金を使う家計作りが好評。SNSやYouTubeで身近なお金について、専門的なことを噛み砕いて発信されています。
死亡保険の保険金はどうなる?
保険というと代表的なのが、家族に万が一のことがあった時に残された家族に遺すためのお金、死亡保険です。死亡保険は、誰がお金を払って、誰に保険をかけて、誰が保険金を受け取るかによって税金のかかり方がそもそも違う、ちょっとややこしい存在です。
●死亡保険の保険金にかかる税金は?
FPナナコ先生(塚越菜々子さん)の資料より
一般的なのは、「夫が自分に保険をかけて、自分に万が一のことがあった時に、残された妻や子などの家族に保険金が出る」という死亡保険です。この場合は、受け取ったお金が相続税の対象になるという決まりになっています。
また、「夫が妻に保険をかけて、妻が亡くなった時に、夫に保険金が入る」という死亡保険の場合は、保険金が自分(夫)の所得になるので、所得税がかかります。
さらに、「夫が妻に保険をかけて、妻に万が一のことがあった時に、子どもが保険金を受け取る」という場合は、贈与税の対象になります。
●相続税の計算はどうなる?
FPナナコ先生(塚越菜々子さん)の資料より
相続税がかかる場合の計算は、上のとおりです。万が一のことがあって残された遺族が死亡保険の保険金を受け取ったとします。しかし、この保険金すべてに税金がかかるわけではなく、一部非課税になる部分があります。
たとえば、一家のお父さんが亡くなると、妻や子どもなどが主に法定相続人になります。非課税になる金額は「500万円×法定相続人」の数まで。上の場合は500万円×2人=1000万円までは非課税になります。この金額を超えた保険金を受け取った場合、その部分が相続税の対象になります。
この非課税の金額は、相続税の基礎控除とは別のもの。相続税には「3000万円+600万円×法定相続人」という基礎控除があります。保険の部分の計算をしてから、2段階目に相続税の計算がありますので、注意が必要です。
高度障害保険金・リビングニーズの保険金はどうなる?
大きな障害を負ってしまった場合には高度障害保険金がもらえる場合があります。また「余命何ヶ月」と診断がついた場合には「リビングニーズ」で保険金を先に受け取ることができます。こうした形で受け取る保険金は、すべて非課税です。したがって、受け取ったその時 に税金がかかるということはありません。
しかし、その受け取ったお金を使い切らないまま亡くなってしまうと、このお金も他に貯めてきた貯金などと同じように相続税の対象になってしまいます。死亡保険金は一定の非課税があると先ほど紹介しましたが、この場合はそうした非課税がないので注意しなければなりません。税金の面で考えれば、できる限り使い切った方がいいでしょう。
満期保険金はどうなる?
学資保険に加入している人は結構多いでしょう。学資保険は、たとえば18歳の時に満期を迎えてお金を受け取る保険です。満期保険金として受け取った保険金も、金額全部に対して税金がかかるわけではありません。
●満期保険金にかかる税金は?
FPナナコ先生(塚越菜々子さん)の資料より
満期保険金の税金を計算するときには、まず必要経費(払ってきた保険料)を引きます。次にそこから 50万円の特別控除を引きます。さらに、残りを半分にしたところが税金の対象になります。満期保険金は「一時所得」といって、所得税や住民税の対象になります。
学資保険は近年あまり増えないため、税金はあまり発生しなくなっています。特別控除が50万円あるので、50万円以上増えなければ、学資保険の満期保険金にかかる税金はゼロです。
ただ、最近はあまりないのですが、「養老保険」と呼ばれる昔の保険を長くかけている場合、保険金が多額になり、税金がかかる可能性が。いろいろな保険に加入しているのであれば、気をつけておきたいポイントです。
このように、親が亡くなった後では「寄与分」の制度に頼る他ありませんが、寄与分も確実に、かつ十分にもらえるわけではありません。介護した分の遺産を確実に受け取るためには、介護を始める前から対策を行うことが重要です。
入院・治療・手術の給付金はどうなる?
病気やケガで入院・治療・手術を行った時に日額いくらでもらえる給付金もあります。
・入院・手術・通院給付金
・がん診断一時金
・介護給付金
・三大疾病給付金
・先進医療給付金
などが該当します。
これらの病気やケガの給付金は、基本的には全部非課税です。非課税ですので、確定申告・年末調整をする必要もありません。
解約返戻金はどうなる?
解約返戻金は、終身保険や変額保険に関わるお金です。どちらも、期限が決まってないため、基本的にずっとそのまま保険に加入したままになります。そのため、死亡しない限りお金が手元に戻ってきません。これらの保険を貯蓄のつもりで使っている方もたくさんいます。保険を解約したときに受け取れるお金が解約返戻金です。
●解約返戻金にかかる税金は?
FPナナコ先生(塚越菜々子さん)の資料より
解約返戻金は、払い込んだ保険料の「必要経費」は非課税。特別控除の50万円を引いて、残りの半分の部分が一時所得となります。
最近の終身保険は利率が良くないのでほとんど増えませんが、変額保険や昔の保険だと必要経費と特別控除を引いても最終的に600万円〜800万円といった規模になる可能性があります。この場合、半分に分けたとしても意外と税金がかかる可能性があります。
保険金をたくさん受け取れると思ったら、振り込まれた時にかなり引かれてしまった…ということも。とくに「お宝保険」と呼ばれる、1999年3月までに契約した貯蓄型保険は、予定利率(金利)が3%から6%と昨今の保険よりもずっと高いため、お金が大きく増えていることも。保険に加入している方は気をつけておいた方がいいでしょう(なお、お宝保険は保険会社にとっては不利なので、乗り換えの案内が来ることもありますが、安易に解約せず、お金が必要になったら解約すればよいでしょう)。
個人年金保険はどうなる?
個人年金保険に加入している人がたくさんいます。ですが、個人年金保険の保険金は、割と勘違いしている人がたくさんいます。
●個人年金保険にかかる税金は?
FPナナコ先生(塚越菜々子さん)の資料より
個人年金保険は、受け取った年金額から必要経費はもちろん引くことができます。しかし、引ける金額はそれだけ。先ほどまでのように「特別控除を50万円引いてさらに半分していい」というものはありません。増えた分は雑所得という形で税金がかかってしまいます。
国から受け取る公的年金には「公的年金等控除」があり、割と大きな金額が引いてもらえます。しかし、民間の個人年金保険は引いてもらえる部分が必要経費だけなので、税制メリットがあまりありません。
こちらも、お宝保険と呼ばれるような、結構前から入っている保険だと、思わぬ税金がかかる可能性があります。
まとめ
保険に加入している人はたくさんいますが、意外と自分の保険の内容を把握していないものです。契約している保険がいつ、どのように終わるのかを考えたうえで、どんな風に保険を使っていけばいいのかを考えてみましょう。
今回の内容の動画もぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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