22/10/17
つみたてNISA、年後半スタートに「毎日積立」がいい理由
投資で得られた利益が非課税になるNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)。なかでもつみたてNISAは、コツコツと投資信託に積立投資することで、お金をじっくり増やしていくおすすめの制度です。しかし、つみたてNISAでは、毎年の非課税で投資できる上限額(非課税投資枠)を翌年に持ち越すことができません。
「年の後半スタートでも非課税投資枠を使い切りたい」そんな方におすすめなのが、「毎日積立」でつみたてNISAをスタートすることです。どういうことか、紹介します。
投資の利益を非課税で受け取れるつみたてNISA
NISAは投資の利益を非課税にできる制度。現状、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があります。このうちつみたてNISAは、年間40万円までの投資で得られた利益を非課税にできる制度です。
●つみたてNISAの概要
(株)Money&You作成
本来、投資の利益には20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAを利用して得た投資の利益は、税金をゼロにできます。
つみたてNISAで投資できる商品は、金融庁の定めた基準を満たす投資信託・ETF(上場投資信託)。いずれも手数料が安く、「長期・積立・分散投資」で安定的にお金を増やせると考えられる商品が揃っています。多くの金融機関では1000円、ネット証券などでは100円からつみたてNISAを使った非課税の投資ができます。
つみたてNISAは、日本に住む20歳以上の方であればどなたでも利用できます。成人年齢(成年年齢)引き下げの影響で、2023年からは「18歳以上」の方が利用できるようになります。しかも、つみたてNISAの資産は引き出しに制限がなく、いつでも引き出すことができるため、使い勝手がいいのもメリットです。
現状、つみたてNISAで新規に投資できる期間は2042年まで、非課税期間は投資した年から最長20年間となっています。しかし、2022年8月31日に金融庁が発表した「2023年度税制改正要望について」にNISAの制度改正が盛り込まれているため、今後制度が改正される可能性が高いでしょう。
本稿執筆時点(2022年10月11日)ではまだ決まっていないのですが、NISAの新規投資期間の恒久化や非課税期間の無期限化、毎年非課税で投資できる非課税投資枠の拡充などが行われるとみられています。いずれも、これまでよりもつみたてNISAが使いやすくなる改正だと考えます。つみたてNISAの改正については、続報を期待して待ちましょう。
非課税投資枠は翌年に持ち越せない!
つみたてNISAにある毎年40万円の非課税投資枠は、翌年に持ち越すことができません。たとえば、今年20万円しか非課税投資枠を使わなかったからといって、「翌年に60万円非課税で投資する」ことはできません。
現状のつみたてNISAの制度だと、2022年につみたてNISAを始めれば2042年までの合計840万円まで非課税で投資できますが、2023年に始めたら800万円、2024年なら760万円…と徐々に非課税投資枠が減ってしまいます。つまり、つみたてNISAをスタートする年が遅くなればなるほど、非課税で投資できる金額の合計額が少なくなってしまうのです。
いいかえれば、なるべくたくさん非課税で投資したいのであれば、2022年のうちにつみたてNISAの口座開設を行い、投資をスタートさせた方がいい、ということになります。
非課税投資枠を使い切るなら「毎日積立」で
つみたてNISAの毎月の積立の上限額は、40万円÷12か月=3万3333円ですが、多くの金融機関では、年の途中でつみたてNISAをスタートしても非課税投資枠を使い切るために「ボーナス月設定」(ボーナス設定)を用意しています。
ボーナス月設定を利用すると、年に2回までつみたてNISAの投資額を増やすことができます。ですから、仮に11月からつみたてNISAをスタートしたとしても、
・11月:3万円+ボーナス月設定17万円
・12月:3万円+ボーナス月設定17万円
と設定すれば、非課税投資枠の40万円を使い切ることができます。
しかし、2022年は市場の値動きが不安定です。物価上昇、円安、さらにはロシアのウクライナ侵攻など、その要因は複雑に絡み合っていて、上下の方向感のない展開が続いています。つみたてNISAでも、ボーナス月設定で短期的にとはいえ20万円を一度に投資して、投資した直後に大きく市場が値下がりしてしまうと、損失が大きくなってしまう可能性があります。その後も長期・積立・分散投資を続けることによって、その損失をカバーできる可能性ももちろんありますが、積立投資のスタートから波乱の展開になるのは怖い、という方も多いでしょう。
市場の値下がりによる大きな損失を避けつつ、非課税投資枠を使い切りたい…という方におすすめなのが、「毎日積立」のサービスを利用することです。毎日積立は、文字どおり毎日(毎営業日)少しずつ投資していくサービスです。
たとえば、毎月3万円積立投資する場合、毎月積立だと月1回、金融機関指定の日に3万円が投資に回されて、商品が買い付けられます。それに対して毎日積立では、営業日は毎日投資を行いますので、営業日が月20日ならば3万円÷20日=1500円ずつ投資することができるのです。
つみたてNISAの毎日積立の積立金額の上限は、「40万円÷年間の残り営業日数」となっているケースがほとんどです。したがって、たとえば11月からつみたてNISAを利用して40万円を使い切りたい場合は、「40万円÷営業日40日」となるようにスタートすれば、毎日1万円ずつ投資ができ、12月末には2022年分の非課税投資枠40万円を使い切れるというわけです。
もちろん、非課税投資枠の40万円を使い切らず、より少額でつみたてNISAをスタートする場合にも毎日積立を利用すれば、投資のタイミングを分散することにつながります。投資のタイミングを分散することで、短期的な値下がりがあっても損失を抑えることにつながりますし、値下がりしたあとも商品を安く買い付けるため、その後の値上がりによって利益を出しやすくなります(ドルコスト平均法)。
毎日積立と毎月積立の運用成果は大差ない
実は、毎月積立と毎日積立では、運用成果にそれほど差が出ません。
たとえば、S&P500(米国の株価指数)に5年間・10年間・20年間にわたって毎日積立・毎月積立した場合の累積の収益率は、次のようになります。
●毎月積立・毎日積立の累積収益率
【毎月積立】
・5年…42.73%
・10年…97.67%
・20年…221.29%
【毎日積立】
・5年…43.06%
・10年…98.91%
・20年…222.17%
(毎日積立−毎月積立の差)
・5年…0.33%
・10年…1.24%
・20年…0.89%
※マーケットデータ期間:2002/10/1〜2022/9/30
※データ元:S&P500は「Yahoo!ファイナンス」、為替は「東京インターバンク[東京市場]ドル・円スポット17時時点」
こうしてみると、どちらかというと毎日積立の方が有利ですが、毎日積立と毎月積立の差は1%前後と、ほとんどないことがわかります。しかし、つみたてNISAを始めるにあたって、年後半に一度に多額の投資をするのは怖いという場合には、毎日積立を選んでおいたほうがいいでしょう。
つみたてNISAの毎日積立ができる証券会社は?
つみたてNISAの毎日積立ができる証券会社には、SBI証券・楽天証券・マネックス証券といった大手のネット証券があります。
●SBI証券:毎月積立・毎週積立・毎日積立が可能
SBI証券では、毎月積立に加えて、毎週積立と毎日積立を選ぶことができます。「クレカ積立」では、三井住友カードを利用してつみたてNISAの支払いが可能。購入額の0.5%のVポイントをもらうことができます。
SBI証券はネット証券最大手の証券会社。国内の株はもちろん、外国株式、投資信託、債券、FX(外国為替証拠金取引)、先物、金などまで、さまざまな投資ができます。
SBI証券の株式手数料は、25歳以下であれば無料となっています。また、年齢関係なく、1日定額「アクティブプラン」を利用すれば、1日の約定金額100万円までの株の取引にかかる売買手数料が0円になります。そのうえ、投資信託や国内株式などの取引に応じて、Tポイント・Pontaポイント・dポイントの中から好きなポイントを選んで貯めることもできます。TポイントやPontaポイントはSBI証券内で投資信託の買付代金に当てることができます。
SBI証券と住信SBI銀行の口座を連携する「SBIハイブリッド預金」を設定すると、住信SBI銀行の口座に入金したお金が直接SBI証券での投資に利用できるので、手間がかからず便利です。また、普通預金の金利も0.001%から0.01%に優遇されます(2022年10月12日時点)。
●楽天証券:毎月積立・毎日積立が可能
楽天証券では、毎月積立と毎日積立を選ぶことができます。「楽天キャッシュ」を利用してつみたてNISAの支払いをすると、2022年中は購入額の1%、2023年以降も0.5%の楽天ポイントをもらうことができます。
楽天証券は楽天経済圏でさまざまなサービスを提供する楽天が運営している楽天証券です。楽天証券でもSBI証券と同様、株式投資・債券・投資信託など、主だった投資はできます。もちろん、iDeCoやつみたてNISAにも対応しています。
株式投資の売買手数料は「いちにち定額コース」を選ぶと1日100万円まで無料。そのうえ、投資の状況に応じて楽天ポイントを手に入れることもできます。ポイントは「楽天市場」をはじめとする楽天経済圏で使ってもいいですし、投資に回すこともできます。さらに、楽天証券では2023年10月1日より国内株式手数料が0円になります(適用には手数料コース「ゼロコース」の選択が必要)。
楽天証券と楽天銀行の口座を連携する「マネーブリッジ」を設定すると、楽天銀行の口座に入金したお金が直接楽天証券での投資に利用可能。普通預金の金利が0.02%から最大0.1%(残高300万円超は0.04%)に優遇されるうえ、「ハッピープログラム」にエントリーすることで、楽天証券での取引に応じて楽天ポイントを貯めることもできます(2022年10月12日時点)。
●マネックス証券:毎月積立・毎日積立が可能
マネックス証券でも、毎月積立と毎日積立を選ぶことができます。「マネックスカード」を利用して積立投資を行うと、購入額の1.1%のマネックスポイントがもらえます。
マネックス証券も大手ネット証券会社のひとつ。国内株・外国株・投資信託・債券・金・FX(外国為替証拠金取引)・暗号資産(仮想通貨)にいたるまで、さまざまな商品を取り扱っています。
とくに米国株・米国ETFに定評があり、米国株の為替手数料のうち買付手数料が無料。コストを抑えた米国株投資ができます。また、「米国株定期買付サービス」では、マネックス証券で取扱いのある米国株・米国ETFを毎月の指定日に自動で買い付けることができます。そのうえ、「配当金再投資サービス」を利用すれば、保有銘柄からの配当金で同じ銘柄を買い付け、自動で再投資できます。
まとめ
年の途中でつみたてNISAをスタートしても、年40万円の非課税投資枠を使い切ることは可能です。しかし、11月、12月など、年の瀬が迫ってくると、一括で投資する金額も増えてしまうため、短期的な値下がりのリスクが高まってしまいます。それを防ぐには、毎日積立を利用してリスクを分散する方法がおすすめです。SBI証券・楽天証券・マネックス証券といった証券会社では、毎日積立を利用することができますので、これからつみたてNISAを利用したいのであれば急ぎ口座開設して、毎日積立を利用してみてくださいね。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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