22/09/30
年金を受け取る前に亡くなったら、納めた年金保険料はどうなるのか
老後の生活の土台となる老齢年金は原則65歳から支給となります。最近では、元気なシニアが、65歳から年金を受け取らず繰り下げ申請することを検討することもあるでしょう。しかし、年金を受け取る前に万が一亡くなったら、受け取るはずの年金はどうなってしまうのでしょうか。詳しく説明します。
年金受給前に亡くなった人は約12万人
国民年金は20歳から60歳までの間加入して、原則65歳から老齢年金を受け取ります。厚生労働省の「2021年(令和3年)人口動態統計月報年計」によると、2021年(令和3年)に亡くなった20~64歳までの人数は12万1276人という結果でした。死因は男性20歳〜44歳、女性20歳〜34歳までは自殺が多く、以後64歳までは悪性新生物(腫瘍)が多くなっています。
もし、老齢年金を受給する前に本人が亡くなった場合、遺族が受給できる可能性がある年金にはどんなものがあるのか以下に紹介します。
●死亡一時金
死亡一時金は、国民年金保険料を36か月以上納付していた人が、老齢基礎年金・障害基礎年金などの年金を受給する前に亡くなったときに支給されます。死亡一時金の金額は亡くなった本人が年金を納めていた月数に応じて決まり、12万~32万円になります。死亡一時金を受け取れるのは、亡くなった人によって生計を同じくしていた遺族(1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹)の中で優先順位の高い人です。
【申請先】市区町村または年金事務所
【金額の目安】12万円~32万円。国民年金保険料を納付していた月数により決まります。もし、付加保険料を36か月以上納めていた場合は8,500円が追加されます。
●埋葬費・埋葬料
被保険者が亡くなったときは、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。
【申請先】市区町村または健康保険組合など
【金額の目安】5万円
亡くなった人が加入していた健康保険制度ごとに異なる場合があります。
遺族年金には2種類ある
遺族年金は、亡くなった人の年金の加入状況などによって、遺族基礎年金と遺族厚生年金のいずれか、または両方の年金を受け取ることができます。
●遺族基礎年金が支払われる人と年金額
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人(個人事業主など)が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた「子どもを持つ配偶者」または「子ども」に対して支払われる年金です。子どもは結婚していないことが前提になり、以下の2つの条件があります。
①18歳になった年度の3月31日までであること
②障害等級1級または2級の子の場合、20歳未満であること
【申請先】市区町村または健康保険組合など
【金額の目安】
・遺族基礎年金 年額77万7800円(2022年度)+子の加算額
・子の人数に応じた加算額
1人目・2人目の子の加算額 各22万3800円
3人目以降の子の加算額 各 7万4600円
●遺族厚生年金が支払われる人と年金額
遺族厚生年金は、会社員や公務員のように厚生年金に加入していた人が亡くなったとき、その人によって生計を維持されていたもっとも優先順位の高い遺族に支払われます。遺族基礎年金の「子どもを持つ配偶者、または子ども」に比べると、支払われる範囲が広いのが特徴です。具体的には、
・第一順位:配偶者と子(子の有無に関係なし)
・第二順位:父母
・第三順位:孫
・第四順位:祖父母
となっています。
ただし、配偶者が夫の場合、55歳以上という条件があり、支給が開始となるのは60歳からです。遺族基礎年金と合わせて受給できる場合に限って55~60歳の間でも受給可能です。
また、30歳未満の子のない妻の場合、5年間の有期給付になります。また、子ども・孫の場合、上述した遺族基礎年金と同じ条件があります。父母・祖父母は55歳以上という条件があり、支給されるのは60歳になってからです。
【遺族の優先順位】
日本年金機構の資料より
【申請先】市区町村または年金事務所
【金額の目安】
遺族厚生年金の金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。亡くなった人の厚生年金の加入期間や給与・賞与といった報酬の金額をもとに計算されます。亡くなった人の死亡時、条件を満たす子がいる配偶者は、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方が受給できます。
●寡婦年金
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間と国民年金の保険料免除期間が10年以上ある夫が亡くなったとき、その夫と10年以上の婚姻関係のある妻に対して60歳から65歳になるまで支給されます。なお、妻は事実婚の場合も含みます。もし、妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けているときは支給されません。また、死亡一時金と寡婦年金は同時に受け取ることはできません。
【申請先】市区町村または年金事務所
【金額の目安】夫が受け取ることができる老齢基礎年金の額の4分の3
もし、年金を繰り下げている途中の人が亡くなってしまったら
老齢年金は、原則65歳に支給が始まりますが、年金の繰り下げ申請をすれば、支給開始を遅らせることができます。老齢年金を繰り下げることで、「0.7%×繰下げた月数」分が増額となります。例えば、70歳まで繰り下げをすれば0.7%×60か月=42%、最長で75歳まで繰り下げをすれば0.7%×120か月=84%増額になります。
では、65歳から受け取るはずの年金を70歳まで繰り下げしている待機中に、急病や不慮の事故などで死亡してしまったら、年金はどうなるのでしょうか。もちろん、本人はお亡くなりになり受け取ることはできません。しかし、その人に遺族がいれば、65歳からお亡くなりになった日が含まれた月までの未払いとなっている年金を請求し、受け取ることは可能です。これを未支給年金といいます。
未支給年金の対象となるのは、3親等内の親族です。例えば、老齢年金を受け取るはずの人が、69歳で急に亡くなったとすれば、65~69歳までの未支給年金、約4年分がまとめて支給されます。
また、遺族が、上述の遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取る条件に該当するのであれば、遺族年金も受け取れます。
ただし、繰下げ支給の増額分(ここでは、0.7%×48か月=33.6%)については、未支給年金、遺族年金どちらにも上乗せされません。未支給年金や遺族年金は65歳時点の年金額をもとに計算されますので、注意が必要です。
まとめ
年金を受け取る前に万が一亡くなった場合も、遺族は死亡一時金や遺族年金、寡婦年金などの形でお金を受け取れる場合があります。ただ、どのお金がいくら受け取れるかは人により異なりますので、条件を確認しておきましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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