22/08/14
「郵便貯金」は休眠預金の例外で毎年消滅していくのは本当か
長いこと預けたままになっている郵便貯金、ありませんか。もしあったらなるべく早く引き出す手続きをしましょう。というのも、郵便貯金に預けたお金は、満期から約20年後に引き出す権利が消滅し、引き出すことができなくなってしまうからです。引き出せなくなったお金は、国庫に納付されることに…。今回は、郵便貯金の失効の仕組みと、失効を防ぐ方法を解説します。
郵便貯金の「権利消滅」2021年度は457億円も!
郵便貯金とは、2007年(平成19年)10月1日に行われた郵政民営化の前に郵便局に預けられた貯金のこと。かつての郵便貯金には、「通常郵便貯金」「定期郵便貯金」「積立郵便貯金」といった種類がありました。
このうち、権利消滅の対象となるのは、定期性のある郵便貯金です。具体的には、定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金・住宅積立郵便貯金・教育積立郵便貯金といった郵便貯金が該当します。
2007年(平成19年)9月30日までに郵便局に預けられたこれらの郵便貯金は、法律によって満期後20年2か月経つと、払い戻しができなくなってしまうのです。
郵政民営化前の貯金を管理する郵政管理・支援機構の資料によると、毎年の権利消滅額は次のようになっています。
●郵便貯金の権利消滅額
郵政管理・支援機構「睡眠貯金残高・権利消滅額の推移」より(株)Money&You作成
郵便貯金の権利消滅額は、2020年度(令和2年度)は369億円、さらに2021年度(令和3年度)は457億円と急増している様子がわかります。郵政管理・支援機構によると、2020年度・2021年度に権利が消滅した1990年度(平成2年度)・1991年度(平成3年度)は郵便貯金の金利が高かったため、他の年度よりも郵便貯金への預入額が多かったことがその要因ではないか、とのことです。
実際、日本銀行「郵便貯金金利」によると、1990年〜1991年の郵便貯金の金利は1年満期の定期貯金で最大6.08%もあります。単純計算で、預けたお金が約12年で倍になる高金利。今では考えられませんね。
郵政管理・支援機構によると、「令和4年度以降当分の間の権利消滅額は、令和2年度、3年度の水準を下回ると見込んでいます」とのことですが、それでも毎年数十億円、場合によっては100億円以上の郵便貯金が失効し、国庫に納められてしまう可能性があるのです。
定期性のある郵便貯金は「休眠預金」の例外
一般の銀行では、10年以上取引のない預金は「休眠預金」になります。休眠預金となった預金のお金は、民間の公益活動のために用いられることになっています。休眠預金となると、銀行のATMでの引き出しができなくなる場合があります。ただ、たとえ休眠預金になったとしても、窓口等で手続きをすれば、お金を引き出したり、再びATMを利用できるようにしたりできます。
郵便貯金でも、定期性のない「通常郵便貯金」や「通常貯蓄貯金」はゆうちょ銀行に引き継がれており、休眠預金の対象です(ただし、2007年(平成19年)9月30日時点で最後の取引から20年2か月を経過している場合はすでに権利消滅)。したがって、10年以上取引がないとATMなどの利用ができなくなる場合があります。とはいえ、こちらも手続きをすれば払い戻しをしたり、引き続きATMなどの利用ができるようにしたりできます。2007年(平成19年)10月1日以降に預けた貯金(ゆうちょ銀行の通常貯金・定期貯金・定額貯金など)も同様です。
しかし、郵政民営化以前に預けた定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金といった定期性のある貯金は例外です。旧郵便貯金法第29条によって、休眠預金になることなく、満期後20年2か月が経つと払い戻しができなくなるのです。
郵便貯金の権利が消滅するまで
郵便貯金の権利は、次のような流れで消滅します。
●郵便貯金の権利が消滅するまで
総務省「満期を経過した郵便貯金の払戻しに関するお知らせ」より
まず、預けている郵便貯金が満期を迎えたときに「満期のご案内」が届きます。ただし、現状預けられている定期性のある郵便貯金はすべて満期を迎えているので、該当する方には満期のご案内が郵送されていることになります。
郵便貯金が満期を迎えたあと、10年間払い戻しの請求がない場合には「満期日経過のご案内」が届きます。さらに10年間払い戻しの請求がない場合には「権利消滅のご案内(催告書)」が届きます。そして、その後2か月経っても払い戻しがない場合に、郵便貯金の権利が消滅するのです。つまり、満期日から20年2か月経過した郵便貯金から順に失効していくのです。この失効は、2037年まで続く見通しです。
なおこの間に引っ越した、名前が変わったなどの理由で、郵便貯金に関する案内が届かない場合もあるでしょう。そうした場合でも、満期から20年2か月が経過すれば、郵便貯金の権利は消滅します。昔の郵便貯金のことを覚えていればまだ望みもあるかもしれませんが、郵便貯金をしていたことを忘れてしまって失効…という方も多いのではないかと思います。
郵便貯金の失効を防ぐには 払い戻し手続きはどうする?
繰り返しになりますが、定額郵便貯金、定期郵便貯金、積立郵便貯金といった定期性のある貯金は、いずれ引き出せなくなります。そうなる前に手続きしましょう。
手元に満期を過ぎた郵便貯金の証書や通帳がある場合は、その証書や通帳、届け印、本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、住所・名前・生年月日の入ったもの)を持って郵便局またはゆうちょ銀行の店舗に行き、払い戻しの手続きをしましょう。
また、郵便貯金の証書や通帳がない場合でも、郵便貯金があることが確認できれば払い戻しの手続きができます。よく覚えていない場合でも調査してくれるので、一度郵便局またはゆうちょ銀行の窓口で相談してみましょう。手続きには印鑑(届け印でなくても可)と本人確認書類が必要です。
郵便貯金の払い戻しの手続きは、代理人が行うことも可能です。口座の名義人の証明書類に加えて、代理人の証明書類と名義人からの委任状を用意して、郵便局・ゆうちょ銀行の店舗で手続きしましょう。名義人が認知症などで委任状を書くことができない場合も、名義人の通常貯金口座に払い戻すことはできるそうなので、まずは問い合わせてみましょう。
すでに口座の名義人が亡くなっており、相続人が手続きする場合は、相続手続きによる払い戻しになります。郵便局・ゆうちょ銀行で「相続確認表」を手に入れて提出し、名義人と相続人の関係を確認後、相続手続きを行います。詳しくは、郵便局の貯金窓口またはゆうちょ銀行にご確認ください。
まとめ
定期性のある郵便貯金は、満期から20年2か月が経過すると引き出せなくなってしまいます。もしも「昔預けてそのままになっている」「そういえばそんな郵便貯金があったな」など、心当たりがあるならば、権利消滅・失効となる前に手続きしましょう。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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