22/08/14
海外転勤・赴任になった場合、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAは継続できるのか
突然、会社から海外転勤・赴任を命じられる方もいるでしょう。NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は投資の運用益の税金がゼロにできる制度ですが、利用条件は「日本に住んでいる方」。もし海外転勤・赴任があったら、これまで投資してきた一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの資産はどうなるのでしょうか。
今回は、海外転勤・赴任があった場合の一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの扱いを紹介します。
5年以内の海外転勤・赴任なら一般NISAとつみたてNISAは保有継続できる
一般NISAとつみたてNISAを利用できる方の条件は、「日本にお住まいで、口座を開設する年の1月1日時点で20歳以上の方」(※2023年からは「18歳以上」)です。
また、ジュニアNISAを利用できる方の条件は、「日本にお住まいで、口座を開設する年の1月1日時点で未成年の方」(※2022年までは19歳以下、2023年は17歳以下)です。つまり、NISAを利用するには、いずれも日本に住んでいることが条件です。
では、海外転勤・赴任になる場合、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの資産はどうなるのでしょうか。海外転勤・赴任の際の扱いは、「一般NISA・つみたてNISA」と「ジュニアNISA」で異なります。
●海外転勤・赴任でNISAの資産はどうなる?
(株)Money&You作成
海外転勤・赴任があった場合、一般NISA・つみたてNISAは、新規に投資はできないものの、最長5年間であればNISA口座で資産の保有継続が可能です。
一方、ジュニアNISAの口座は閉鎖となります。ジュニアNISA口座の資産はジュニアNISA口座内の「払出制限付き課税口座」に払い出され、子が18歳になるまで引き出しができなくなります。ただし、2024年以降は子が18歳未満でも引き出せるようになります。
海外転勤・赴任する際、2019年の制度改正前までは、NISA口座の資産をすべて課税口座に払い出す必要があり、帰国後も以前利用していたNISA口座に資産を戻すことはできませんでした。つまり、海外転勤・赴任をする場合は、非課税の運用が続けられなかったのです。しかし、制度改正後は条件付きながら海外転勤・赴任があってもNISA口座での資産の保有が続けられるよう。海外転勤・赴任の可能性がある方でも、NISA口座を活用しやすくなったのです。
海外転勤・赴任のNISA 5つの注意点
海外転勤・赴任している間も一般NISA・つみたてNISA口座の資産を持ち続ける際には、次の5つの注意点を押さえておきましょう。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点1:NISA口座で資産を持ち続けるには手続きが必要
海外転勤・赴任してからも一般NISA・つみたてNISA口座で資産を持ち続けるには、出国日前日までに、一般NISA・つみたてNISA口座を開設している金融機関に「継続適用届出書」を提出し、帰国後には「帰国届出書」を提出することが必要です。
海外転勤・赴任の際に、「海外に行ってもバレないだろう」などと、手続きをしないでいることを金融機関が見つけたら、一般NISA・つみたてNISA口座が廃止され、資産が強制的に売却されてしまいますので、必ず手続きしましょう。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点2:帰国後の手続きを忘れずに
海外転勤・赴任から帰国した後も一般NISA・つみたてNISA口座を継続するには、「帰国届出書」を提出する必要があります。海外転勤・赴任から戻ってきたあとも帰国届出書を提出しないでいると、継続適用届出書を提出した日から5年後の12月31日をもって一般NISA・つみたてNISA口座が自動的に廃止され、課税口座に払い出されてしまいます。帰国届出書を提出すれば、帰国後も引き続き一般NISA・つみたてNISA口座を利用できます。海外転勤・赴任から帰ってきたら、忘れずに手続きしましょう。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点3:新規の投資はできない
海外転勤・赴任にあたって、それまで投資してきた一般NISA・つみたてNISAの資産を保有し続けることはできます。しかし、海外転勤・赴任の最中は、新たに株や投資信託などに投資することはできません。海外転勤・赴任中は、一般NISAでタイミングをはかって注文することもできませんし、つみたてNISAの積立投資も新規の積立はストップとなります。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点4:ロールオーバーはできない
一般NISAでは、非課税期間の5年が終了したあと、保有している金融商品を翌年の新たな非課税投資枠に引き継ぐ「ロールオーバー」をすることで、再び5年間非課税で運用を続けることができます。しかし、海外転勤・不妊で国外に住んでいるときに非課税期間の5年が終了した場合にはロールオーバーはできず、課税口座に資産が自動的に移されます。
●海外転勤・赴任のNISAの注意点5:海外転勤・赴任でNISA口座が持てない金融機関が多い
海外転勤・赴任のときに、最長5年間は一般NISA口座・つみたてNISA口座の資産を保有し続けられる制度になってはいるのですが、対応していない金融機関が多いのが実情です。
●主な証券会社・銀行の出国後のNISA対応(2022年8月8日時点)
(株)Money&You作成
今回調査した9社のなかでは、楽天証券と野村證券のみ海外転勤・赴任時の一般NISA・つみたてNISAでの資産保有に対応しています。海外転勤・赴任の可能性があるならば、一般NISA・つみたてNISAで保有を続けられる金融機関で口座開設・利用をしたほうがいいでしょう。
まとめ
5年以内の海外転勤・赴任ならば、一般NISA・つみたてNISAの資産をNISA口座で保有し続けることが可能(新規の投資やロールオーバーは不可)。なお、ジュニアNISAは対象外なので、海外転勤・赴任の際には払出制限付き課税口座に資産を払い出す必要があります。
海外転勤・赴任の際に一般NISA・つみたてNISA口座で資産を持ち続けるには、出国日前日までに金融機関に継続適用届出書の提出が必要です。また、海外転勤・赴任から帰国後も、帰国届出書を提出する必要があります。手続きを怠ると一般NISA・つみたてNISA口座が廃止され、課税口座に資産が払い出されることもあるので、海外転勤・赴任の予定がある方は十分に注意しましょう。
海外転勤・赴任のときに一般NISA・つみたてNISA口座を保有できる金融機関は少ないので、海外転勤・赴任の予定があるなら、金融機関選びはとても大切です。これから一般NISA・つみたてNISAを始めるならば、海外転勤・赴任時にも一般NISA・つみたてNISA口座が保有できる金融機関を利用したほうがいいでしょう。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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