20/10/16
年末調整で絶対損をしないための3つのポイント
10月になると早いところでは生命保険料控除の証明書が届き始めます。それをみると、今年もまた年末調整がやってくると感じる人も多いはずです。毎年なにげなく書類を提出してしまっている人もいるかもしれませんが、知らないうちに損しているかもしれません。今回は、年末調整で損しないための3つのポイントをお伝えします。
年末調整は「正しい税金の金額を計算する」処理
年末調整は、毎月の給与から天引きしていた所得税を、正しい金額に計算し直すことです。所得税は、1年間の収入によって金額が決まりますが、その途中ではいくらになるかわかりません。そのため、毎月の給与から暫定で天引きされています。
年末調整ではまず、1年間の「給与収入」の合計から給与所得控除を差し引き、「給与所得」を計算します。次に、給与所得から基礎控除や配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除などさまざまな「所得控除」を差し引き、「課税所得」を計算します。この課税所得に、所得に応じた所得税率をかけて、正しい所得税の金額を算出するのです(なお、さらに所得税額から直接差し引く「税額控除」もあります)。
控除とは、差し引くことです。控除が多ければ多いほど、支払う税金が少なくなります。ですから、自分が控除できるものはしっかりと把握して使わないと税金を多く払ってしまうことにもなりますので、確認しておきましょう。
2020年度から控除金額が変わる
2020年度から給与所得控除や基礎控除の金額が変わります。
給与所得控除は162万5000円以下の人は65万円から55万円へと引き下げられます。また、それ以上の人も10万円ずつ引き下げられます。さらに、850万円を超える人は一律195万円。1000万円を超える人の給与所得控除は25万円も引き下げられることになります。
●給与所得控除の金額
※国税庁:令和2年年末調整のしかたより
反対に、昨年までは一律38万円だった基礎控除は合計所得2400万円以下であれば48万円にアップします。しかし、2400万円を超えると段階的に引き下げされ、2500万円を超えると基礎控除は無くなります。
●基礎控除の金額
※国税庁:令和2年年末調整のしかたより
850万未満の人は、給与所得控除が引き下げられますが、基礎控除が増えるため差し引きゼロになりますが、850万円超の人は控除金額が減ってしまうことになります。
しかし、その年の給与の収入金額が850万円を超える人には、所得金額調整控除が新設されました。
所得金額調整控除とは、
・特別障害者に該当する人
・23歳未満の扶養親族
・特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族
の総所得金額を計算する場合には、給与の収入金額から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得から差し引く(上限金額1000万円)ことができる控除です。
たとえば、1年間の所得が1000万円の人に20歳の大学生の子どもがいたとすると、
所得金額調整控除金額=(1000万円-850万円)×10%=15万円
となります。
これに該当していれば、控除額が減る影響をいくらか減らすことができます。
年末調整で損しないためにやるべき3つのポイント
年末調整で支払ったお金を取り戻す方法は使える所得控除を忘れず申請することです。
特に、しっかりと確認しておくべき3つの控除のポイントについてお伝えします。
●ポイント1:支払った保険料などは必ず申告する
こ生命保険料控除は、生命保険、医療・介護保険、個人年金保険に加入している人が、1年間に支払った保険料のうち一定金額を控除できます。会社には、保険会社から送られてくる控除証明書を添えて提出します。なお、上限金額を超えているときは、加入している全部を申請する必要はなく、金額を超える分だけで十分です。
・新契約(平成24年1月1日以後の保険契約)の控除額
・旧契約(平成23年12月31日以前の保険契約)の控除額
※国税庁:令和2年年末調整のしかたより
●ポイント2:iDeCoの控除も忘れずに
iDeCoに加入している人は小規模企業共済等掛金控除が受けられます。iDeCoの掛け金は全額控除の対象になりますので、忘れず手続きしましょう。
特に今年からiDeCoを始めた人の場合、掛金払込証明書は11月下旬ごろ送られてきますのでなくさないようにしましょう。もしなくしてしまったときは、小規模企業共済等掛金払込証明書再発行申請書を郵送すれば再発行してもらえますが、3週間程度かかるので会社への提出期限に注意しましょう。
また、今年iDeCoを始めた人で9月までに1回目の引き落としがない場合は、年末調整の書類提出日までに掛金払込証明書が届かないことがあります。その場合は、年が明けてから確定申告することで還付を受けることができます。
●ポイント3:配偶者控除は使えなくても配偶者特別控除は使えることもある
配偶者控除は年間所得が48万円以下の配偶者がいる場合に利用できる控除です。給与所得だけの場合は年間収入103万円以下の場合となります。控除金額は一律で38万円です。
もし、配偶者の給与が103万円を超えてしまっても、配偶者特別控除が使えます。
配偶者特別控除の金額は控除を受ける本人の所得金額と配偶者の所得金額により段階的に減少していきますが、所得金額133万円、収入約201万5000円までであれば受けられます。該当する場合は必ず申請しましょう。
・配偶者特別控除
※国税庁:令和2年年末調整のしかたより
まとめ
年末調整の最大のメリットは所得控除です。対象になるものがあれば必ず申請しましょう。 そのためにも送られてくる控除証明などの書類は必ず保管しておくようにしましょう。一度提出した書類は戻ってはきませんので、写真に取るなどして記録に残しておくと源泉徴収票が届いたときに確認できるでしょう。
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黒須 かおり ファイナンシャルプランナー(CFP)
女性を中心に、一生涯を見守るFPとしてmoney&キャリアのコンサルティングを行う。幸せになるためのお金の知識など幅広い資金計画とライフプランのアドバイスを手がけている。金融機関にて資産形成のアドバイザーとしても活動中。FP Cafe登録パートナー
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