22/07/12
定年後に月20万円・30万円・40万円で働いて年金額はいくら増やせるのか
超高齢社会の日本にあって、60歳以降も働きやすい環境が整いつつあります。「定年後も働いて将来もらえる年金額を増やしたい!」と考えている人は少なくないはずです。では、定年後どの程度働けばいくら年金を増やせるのでしょうか。
今回は定年後に働くことでいくら年金額が増えるか、月収20万円・30万円・40万円のケースを一覧表でご紹介します。定年後にどの程度働けばよいかわからない人は、ぜひ参考にしてみてください。
厚生年金は定年後も働くことで年金額を増やせる
日本の公的年金制度は2階建て構造です。1階部分には原則65歳以降に誰もがもらえる国民年金(老齢基礎年金)があり、2階部分には国民年金に上乗せして会社員や公務員がもらえる厚生年金(老齢厚生年金)があります。
●公的年金の仕組みと年金額の計算方法
筆者作成
国民年金には決められた年金額(満額)があり、加入可能期間(20~60歳の40年間)に対する保険料納付済期間等の割合に応じて支給されます。そのため、定年後に働いても満額より増えることはありません。
一方で厚生年金は原則70歳まで加入でき、収入と加入期間に応じて年金額が増える仕組みです。つまり60歳以降も働くことで年金額を増やせるのです。
【月収別】定年後に働いて増える年金額はいくら?
下表は定年後に月収20万円・30万円・40万円で働いた場合、増やせる年金額(老齢厚生年金)を一覧にまとめたものです。
●60歳以降働くと増える老齢厚生年金の金額
筆者作成
例えば60歳から65歳までの5年間、月収30万円で働いた場合、増やせる年金額は約9.8万円(月額8200円程度)です。60歳から70歳までの10年間なら、約19.7万円(月額1.6万円程度)増やせます。
このように厚生年金では、同じ月収でも働く期間が長いほど年金額が増えていきます。また60歳から65歳までの5年間働く場合でも、月収20万円と40万円では増やせる年金額に6万円以上の差が出ます。収入と働く期間によって増やせる年金額が大きく異なることがわかりますね。
なかには「思ったより増える金額が少ないな…」と思う方もいるかもしれません。しかし、厚生年金は65歳以降生涯もらえる年金です。この増額が亡くなるまで続くと考えると大きなメリットといえるのではないでしょうか。
日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳(厚生労働省「簡易生命表」(令和2年)。しかも、今後も平均寿命が延びることが予想されています。仮に90歳まで生きた場合、増えた年金額を25年間もらえることになります。65歳からの年金額を10万円増やせれば、60歳定年後に働かない場合と比べて総額250万円多く年金をもらえるのです。
年金をもらいながら働く場合、年金額の一部が支給停止になることも
60歳以降に年金をもらいながら働く場合、老齢厚生年金額と収入額によっては年金額の一部が支給されなくなる可能性があるので注意が必要です。
具体的には老齢厚生年金の基本月額(≒老齢厚生年金額)と総報酬月額相当額(≒ボーナスを含めた平均月収)の合計が47万円を超えた場合、超えた分の2分の1の金額が支給停止になります。この仕組みを「在職老齢年金」といいます。
例えば基本月額が10万円、総報酬月額相当額が40万円なら、1.5万円が支給停止となり、もらえる老齢厚生年金の月額は8.5万円に減ってしまいます。(老齢基礎年金はどれだけ働いても支給停止にはなりません)
●在職老齢年金による調整後の老齢厚生年金額(月額)
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
=10万円-(10万円+40-47万円)÷2
=10万円-1.5万円
=8.5万円
逆に言えば、基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下であれば、年金を減らされることなく働けます。この金額が定年後にどれだけ働くかのひとつの目安になるでしょう。
年金を減らさずに働ける正確な収入額が知りたい場合は、社労士や街角の年金相談センターに相談してみることをおすすめします。
まとめ
60歳定年後も働くことで将来もらえる老齢厚生年金が増やせます。年金は生涯もらえるお金なので、老齢厚生年金を増やすことは、長生きリスクに備える手段としても有効です。今回ご紹介した、増やせる年金額の一覧表を参考に、定年後にどの程度働くか検討してみてはいかがでしょうか。年金をもらいながら働く場合は、在職老齢年金の仕組みもふまえて考えるとよいでしょう。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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