22/03/02
JTが優待廃止に! 改悪となった優待銘柄は売却すべき?見極める3つのポイント
株主優待は企業が株主に贈るプレゼント。約1500社が株主優待の制度を設けています。各社の商品や割引券などがもらえてうれしいのですが、最近株主優待を廃止したり、もらうために「一定期間以上株を継続保有すること」などと条件がついたりするなど、株主にとっての「改悪」が増えています。
株主優待を楽しみに銘柄を選んだ場合、改悪になると売却しようか迷ってしまうものです。今回は、売却すべきか保有したままにすべきか、どのように判断すればいいか見極めるポイントを3つ紹介します。
なぜ株主優待の改悪が多いの?
株主優待の改悪が増えている背景には、東京証券取引所(東証)の市場再編があるといわれています。
現在、東証には、東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQの4つの区分があります。とはいえこの区分は、2013年に東証と大阪証券取引所(大証)を統合した際に、それぞれの市場構造を維持するために設けられた区分。そのため、「市場区分のコンセプトが曖昧で投資家の利便性が低い」「企業価値向上に役立っていない」といった課題が指摘されていました。
そこで、2022年4月4日に現在の市場区分が次の3つの市場区分に見直されます。
①プライム市場
②スタンダード市場
③グロース市場
この再編によって、国内外からより多くの投資を呼び込もうとしているのです。
しかしこのタイミングで、多くの企業が株主優待の廃止・変更に動いているようです。その理由はさまざま考えられます。
株主優待を廃止する企業のお知らせに多くみられるのが、「株主への公平な利益還元」。外国人投資家や機関投資家に株主優待のメリットはほぼありません。そこで、株主優待を廃止し、その分配当を上げることで公平な利益還元をする、と説明しています。市場再編に合わせて大口の外国人投資家や機関投資家に投資してもらおうというわけです。
また、東証1部上場に必要な株主数は2200人以上でしたが、新市場の最上位、プライム市場に必要な株主数は800人以上と少なくなります。企業にとって、株主優待には個人投資家を集めて株主数を増やす意味合いもありましたが、市場再編によってその必要が薄れてしまうため、株主優待が減ると考えられるのです。
さらには、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化していることも、株主優待の廃止・変更に拍車をかけています。株主優待の新設や廃止は景気に左右される傾向があります。報道によると、2020年度には株主優待の実施企業が11年ぶりに減少したとのこと。2021年度も依然減少しているといわれています。
株主優待廃止になった銘柄はどうする?
楽しみにしていた株主優待が廃止になってしまうと、その株自体の魅力が下がり売却したくなるでしょう。実際、株主優待の廃止・改悪の発表後は株価が大きく下がる傾向があります。しかし、そこで慌てて売却しては、かえって損をする可能性もあります。そこで、売却したほうがよいのか、それとも保有したままかを見極めるポイントを3つ紹介します。
●①配当が満足できるならそのまま株式を保有
株主優待が廃止になったとしても、配当金が自分が満足のいく率で推移するようであれば、そのまま保有しておきます。
例えば、高配当で有名な日本たばこ産業[JT](2914)は、1年以上株を継続保有した株主に2500円相当の商品(カップ麺やレンジで温めるご飯など)が贈られていましたが、2022年2月に「2023年の株主優待の発送をもって廃止」と発表しました。
しかし、同社の株価は100株あたり21万9150円で予想配当は1万5000円。予想配当利回りは6.84%とかなり高配当となっています。この配当で満足できると思えるのであればそのまま保有しておくといいでしょう。
●②配当が増える場合はタイミングをみて判断
株主優待の廃止とともに配当を増やす企業もあります。
わらべや日洋ホールディングス(2918)は2022年1月、これまで行ってきたクオカードの株主優待廃止を発表すると同時に、期末予想配当を40円から50円に10円増配することを発表しました。同社の株価は100株で17万7800円、予想配当利回りは2.81%になりました。この配当で満足できるならば保有していてもいいでしょう。しかし満足できない場合はひとまず現在の株価の変動などを見極め、然るべきタイミングで株を手放すのもありでしょう。
●③今後差益を見込めない場合は売却
株主優待がなくなっても株価自体が上昇傾向で、今後差益を見込めるなら保有しておきます。しかし、株価が20%以上下がっていて配当もない、回復する兆しもないという場合は経営自体が不安かもしれません。損切り、売却を検討してもよいでしょう。
※以上株価・利回りはすべて2022年2月24日時点の終値をもとに作成
まとめ
今後も株主優待の廃止・改悪はあると考えられます。しかし、株主優待の変更だけを理由にすぐに売却してしまうと、かえって損をしかねません。今回ご紹介した3つのポイントを踏まえて、対処を検討してみてください。
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稲村 優貴子 ファイナンシャルプランナー(CFP︎︎®︎)、心理カウンセラー、ジュニア野菜ソムリエ
大手損害保険会社に事務職で入社後、お客様に直接会って人生にかかわるお金のサポートをする仕事がしたいとの想いから2002年にFP資格を取得し、独立。現在FP For You代表として相談・講演・執筆活動を行っている。日経ウーマン、北海道新聞などへの記事提供、テレビへの取材協力など各メディアでも活躍中。著書『年収の2割が勝手に貯まる家計整え術』河出書房新社。趣味は、旅行・ホットヨガ・食べ歩き・お得情報収集。FP Cafe登録パートナー
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