24/05/25
定額減税で所得税が引ききれない場合は「調整給付」がもらえるって本当?
2024年6月からの定額減税で税金が減れば、その分手取りが増えます。しかし、そもそも納める税金以上には減税されません。ですから、税額が少ないと、場合によっては定額減税の分が引ききれないこともありえます。こうなると、手取りもあまり増えそうにないですし、あまり得した気分になれないかもしれません。
しかし、実は「定額減税で引ききれない人」は「調整給付」という給付金がもらえて、「定額減税で引き切れる人」よりもお得だといったらどうでしょうか。今回は、定額減税で引ききれない人がもらえる調整給付を紹介します。
定額減税の概要をおさらい
定額減税は、税額を一定額減額する減税の方法です。2024年6月から実施される定額減税では、1人あたり所得税3万円、住民税1万円の4万円が減税されます。
定額減税の対象は納税者本人とその扶養家族(いずれも居住者のみ)です。たとえば、夫が妻と子ども2人を扶養する4人家族の世帯では所得税12万円、住民税4万円の合計16万円の減税が受けられます。ただし、年収2000万円超(厳密には「合計所得金額1805 万円超(給与収入のみの場合、給与収入2000万円)」の富裕層は対象外です。
<定額減税のイメージ>
首相官邸ホームページ「所得税・個⼈住⺠税の定額減税」より
冒頭でお話しした「定額減税で引き切れる人」は、この図の右側にある「定額減税 1人4万円×(本人+扶養親族)」に該当する方です。
それに対し、「定額減税で引ききれない人」は、図の中ほどにある「定額減税の恩恵を十分受けられないと見込まれる所得水準の方々」に該当する方です。
具体的な年収の目安は、次のとおりです。
<給付金・定額減税の目安の年収>
地方創生サイト「低所得者支援及び定額減税を補足する給付について」より
お住まいの地域や家族構成などにより異なるのであくまで目安ですが、表の一番右の列にある「定額減税満額控除」以上の収入があれば定額減税で所得税・住民税をすべて引くことができます。
それに対して、右から2番目の列「定額減税+調整給付」までの収入の場合は、定額減税では所得税・住民税を引ききれません。表からは、年収500万円以上であっても定額減税で引ききれない場合があることがわかります。
定額減税で引ききれない分は給付金としてもらえる!
定額減税で引ききれないということは、手取りが定額減税の金額分増えないということですから、損だと思われるかもしれません。しかし、定額減税で引ききれなかった分は、「調整給付」といって、給付金としてもらえます。
定額減税では、
・所得税…2024年6月から12月の7か月間にわたって減税
・住民税…2024年6月分は徴収せず、7月分から2025年5月分までの11か月間にわたって減税分を割り振って減税
が行われます。
この減税を行なっても差し引けなかった分が、調整給付としてもらえるのです。
調整給付では、差し引けなかった分のうち、1万円未満の金額は「切り上げ」になり1万円単位で給付されます。
たとえば、
・所得税年約10万円(月8,000円)
・住民税年約20万円(月16,000円)
の4人家族世帯があったとします。
この場合の定額減税のイメージは、次のとおりです。
<4人家族世帯の定額減税例>
(株)Money&You作成
注目していただきたいのは所得税です。この例の場合、定額減税で差し引ける所得税は12万円ですが、2024年12月分までで差し引ける所得税の合計は5万6000円です。したがって、12万円−5万6000円=6万4000円分が残ってしまいます。
しかし、この6万4000円の1万円未満を切り上げた7万円が調整給付として支給されるのです。
同じ家族構成で収入が多く(=所得税や住民税が多く)、定額減税で引き切れる人の場合、定額減税のメリットは
・所得税12万円+住民税4万円=16万円
です。
その点、定額減税で引き切れない人なら、定額減税のメリットは
・所得税5万6000円+住民税4万円+調整給付7万円=16万6000円
となるのです。
したがって、定額減税で引き切れる人より、引ききれない人のほうが実はお得になります。
なお、調整給付は「1万円未満切り上げ」ですから、極端にいえば引ききれなかった金額が「6万100円」でも「6万9900円」でも「7万円」です。6万100円の人なら実に1万円近く(9900円)お得になる計算です。
調整給付はいつごろもらえる?
調整給付には、2024年夏に行われる「当初給付」と、2025年以降に行われる「不足額給付」があります。
当初給付は対象の世帯に早めに給付を届ける観点で行われる給付です。2023年の所得や控除の状況に基づき、定額減税で引ききれない金額があると見込まれる場合に、先に支給される仕組みです。自治体によっても違いますが、早ければ2024年6月から順次実施される予定です。
一方の不足額給付は、2024年の所得税額が確定したあとに、当初給付の金額に不足があった場合に追加で給付金が支給される仕組みです。不足額給付は2025年(令和7年)以降に行われる予定ですが、具体的にいつかはまだ公表されていないようなので、お住まいの自治体の情報を確認しておきましょう。
当初給付は2023年の所得をもとに行われるので、2024年の所得とずれが生じる可能性があります。たとえば、2024年中に収入が減った方や扶養家族が増えた方は、2024年の所得税額が減るため、「当初給付の給付金が本来もらえる金額よりも多かった」となる可能性があります。しかし、この場合でも返金する必要はありません。
反対に、収入が増えた方などの場合、所得税額が増えることで当初給付が足りなかった、ということもあるかもしれません。この場合は、不足額給付の際に追加で給付金がもらえます。
引ききれない人こそお得でも、無駄遣いには要注意
定額減税で所得税や住民税が引ききれない場合、調整給付として給付金がもらえることを紹介しました。しかも、給付金がもらえるほうがお得になりますので、定額減税で引ききれないからといって悲観する必要はありません。もっとも、せっかくの給付金も無駄遣いしてしまえば意味がありません。賢く活用して、何かとお金のかかる時代を乗り越えていきましょう。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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