22/01/05
2022年の税金を安くするために、今すぐ取り組むべき13のこと
税金を安くしたい!源泉徴収票を見ながらそう感じたことはありませんか?年末調整で対象になる所得控除は限定的です。ですが、確定申告をすればいろんな所得控除を計算に含めることができます。その結果、大幅な節税が実現できるもしれません。今回は、みなさんの税金を安くするための13の節税策を紹介します。今からできることを準備していきましょう。
節税策1:医療費控除を活用する
医療費控除とは、毎年1月1日~12月31日までに支払った自分や同一生計の家族の医療費の合計が10万円以上の場合に税金を安くできる仕組みです。
医療費の対象となるものには、病気の治療費だけでなく、通院にかかる交通費、薬を購入した費用、あん摩マッサージ、はり、きゅうなど整体による施術費用などがあります。
医療費控除で安くなる税金の金額は、「実際に支払った医療費の合計額-保険から支給された給付金-10万円」で計算できます(医療費控除の上限は200万円まで)。
しかし、会社員やパートなどの給与所得のみの収入で、年収が297万2000円未満であれば、総所得金額等が200万円以下となり、医療費の合計が10万円に届かなくても医療費控除を受けることができます。もし、年間の医療費が10万円よりも少なかったとしてもあきらめず、年収などチェックし、対象になるか再確認するようにしましょう。
なお、公的な健康保険や個人の医療保険などから受け取った給付金の分は、差引かれますのでお忘れなく。
医療費控除は年末調整に含まれないため、確定申告で申告をします。その際、1年間の医療費をまとめた「医療費控除の明細書」を添付する必要があります。今のうちから、病院にかかった場合の領収書は、別に保管するなど整理しておくようにしましょう。
節税策2:セルフメディケーション税制を活用する
セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例として、特定の医薬品を購入した際、所得控除となる制度です。薬の購入費用は年間10万円が限度となります。しかし所得控除としては、10万円から1万2000円を控除した8万8000円までが上限となります。対象となるのは、スイッチOTC医薬品といい、医師、薬剤師などから指導を受けたもの、一般用の医薬品であっても医療用から転用された医薬品です。
実際にセルフメディケーション税制が適用となるには、健康保持、病気の予防への取り組みが5つ必要になります。詳細は以下のとおりです。
① 医療保険者が行う、人間ドッグなどの健康診査
② インフルエンザなどの予防接種
③ 事業主による定期健康診断
④ メタボ健診などの特定健康診査
⑤ がん検診
セルフメディケーション税制は確定申告で申告をします。その際、健康保持、病気予防への取り組みに関する書類は添付不要ですが、手元で保管が必要です。なお、税制対象となる医薬品で購入したものはリストを作成し、申告書に添付します。
ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、どちらか一方のみ選択となります。
節税策3:社会保険料控除を活用する
会社員であれば、1年分の厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料は、社会保険料控除として年末調整で計算されます。しかし、場合によっては、転職などで一時的に国民年金保険を支払う期間があったり、過去の国民年金保険料の未納分を追加で納付したりすることがあります。そのような費用は、社会保険料控除の対象になります。
また、生計が同一の配偶者や20歳以上の子などの国民年金保険料を支払うこともあるでしょう。もし、本人に代わって保険料を負担するようであれば社会保険料控除の対象になります。どちらの場合も、確定申告で社会保険料控除に追加して申告できます。支払ったことをうっかり忘れないよう気をつけましょう。
節税策4:国民年金基金に加入し社会保険料控除を活用する
国民年金基金は、自営業やフリーランスで働く場合など、国民年金だけに加入している人が加入対象になる公的な年金です。フリーランスの人が国民年金基金に加入すると、厚生年金に加入している会社員と同じく、2階建ての公的年金を受け取ることができます。
加入できるのは以下のような方々です。
① 20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者
② 60歳以上65歳未満の人や海外居住者で国民年金に任意加入している人
国民年金基金の掛金の上限は、6万8000円です。掛金は全額社会保険料控除の対象になり、確定申告で申告することで所得税などが安くなります。
節税策5:小規模企業共済等掛金控除を活用する
小規模企業共済も、国民年金基金と同じく、フリーランスで働く人や小規模企業の経営者などが老後の資金を準備するための制度です。小規模企業共済の掛金は、月1,000円~7万円の間で自由に設定でき、掛金はすべて小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
自分で老後資金を自分で準備するための制度にはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)もあります。20歳以上60歳未満の方ならほぼ誰でも加入できます。掛金の上限は働き方などによって異なりますが、会社員の場合は月2万3,000円です。iDeCoでの掛金もすべて小規模企業共済控除の対象になります。
老後の資金が必要なのはみな同じです。節税しながら、効率的に準備できます。
節税策6:生命保険料控除を活用する
生命保険料控除は、1年間に支払った保険料に応じて税金が安くできる仕組みです。対象となる生命保険の契約は以下の3つのグループに分かれます。
① 一般の生命保険
保険金等の受取人が本人または配偶者、父母、子供となる生命保険契約。定期保険や終身保険などが対象となります。生命保険と貯蓄が一体となっている養老保険や学資保険なども含まれます。
② 個人年金保険
年金の受取人が本人またはその配偶者である個人年金保険が対象になります。
③ 介護医療保険
保険金等の受取人が本人またはその配偶者、父母、子供となる医療保険、介護保険、所得保障保険などが対象になります。
また、生命保険の契約時期で新契約、旧契約に分かれます。新契約は2012年1月1日以降の契約が対象になり、旧契約は2011年12月31日以前の契約が対象になります。
旧契約ばかりの生命保険であれば、控除額の上限は10万円です。そして、新契約、旧契約が混在していたり、新契約だけだったりする場合は、控除額の上限は12万円です。
節税策7:地震保険料控除を活用する
損害保険の種類の中で、居住用の住宅・家財の火災保険の中に含まれ、地震に対する補償を行うのが地震保険です。地震保険は、全額が地震保険控除の対象。上限は5万円です。地震保険に加入している方は、生命保険と合わせて控除を利用しましょう。
節税策8:ふるさと納税を活用する
ふるさと納税とは、生まれ故郷や応援したい自治体に寄付をする制度です。寄付金の内、2,000円を超える部分については所得税などの還付などを受けられます。また、寄付をした自治体からは、地域の名産品をお礼として受け取ることができます。
所得税などの還付を受けるには、ふるさと納税を行った翌年に確定申告を行います。ただし、年末調整で納税を済ませてしまう会社員の場合、ふるさと納税を行う先の自治体が5団体以内であれば、確定申告は必要ありません(ワンストップ特例制度)。
寄付する自治体を選ぶ際、地域の名産品がどれも魅力的で目移りしてしまいます。年末近くで慌てて選ぶのは非常にもったいないです。時間のあるときに、じっくり吟味すると良いでしょう。
なお、控除限度額は、自身の収入や家族構成をもとに決まります。控除限度額を超えて寄付することもできますが、超えた分の税金は安くならないので注意しましょう。
節税策9:寡婦控除、ひとり親控除を活用する
配偶者と離婚・死別した際には寡婦控除、納税者がひとり親である場合にはひとり親控除が受けられます。それぞれ違いを説明します。
① 寡婦控除(27万円控除)の対象となる人
・夫と離婚したあと、新たに結婚をせず扶養親族がいる人で、納税者本人の年収678万円以下(合計所得金額が500万円以下)であること。
・夫と死別したあと、新たに結婚をしていない人または、夫の生死が分からない一定の人で、納税者本人の年収678万円以下(合計所得金額が500万円以下)であること。なお、この場合、扶養家族は要件に含まれません。
② ひとり親控除(35万円控除)の対象となる人
・事実上婚姻関係と同じと認められる一定の人がいないこと。
・生計が同じの子どもいて、その子どもの給与収入が103万円以下(総所得金額48万円以下)であること。
・納税者本人の年収678万円以下(合計所得金額が500万円以下)であること。
もし、これらの控除が年末調整で漏れてしまったのであれば、確定申告で修正しましょう。
節税策10:扶養控除を活用する
扶養控除には、同居、別居どちらの場合の親も含めることができます。同居、別居ともに、親が65歳以上で公的年金の収入だけであれば、年収が158万円以下であることが条件です。さらに、別居している親に対しては、生活費などを送金している事実が確認できることもポイントになります。
親が65~70歳であれば扶養控除は38万円、70歳以上であれば同居の場合が58万円、別居の場合が48万円の扶養控除を受けることができます。
扶養控除は年末調整に含めることができますが、会社に申告漏れなどがあれば確定申告で修正しましょう。その際は、親のマイナンバーの記載が必要になります。
節税策11:住宅ローン控除を活用する
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、個人が住宅ローンを利用し、マイホームの新築、取得などを行った場合に受けられる控除です。2022年から適用になる条件が変更となる予定です。その点を踏まえながら項目ごとに紹介します。
① 控除期間
控除を受けることのできる期間は、これまで原則として入居し生活を始めた年以降10年間でしたが、消費税が10%に移行した影響を緩和するために、10年間+3年間の特例が適用されていました。しかし、今後の控除期間は原則13年となる予定です。
ただし、控除期間が13年間となるのは、新築住宅および不動産業者が再販する消費税が課税された住宅のみです。個人が売却する消費税がかからない中古住宅の控除期間は、これまでどおりの10年間です。
② 控除率
これまでは、住宅ローンの年末残高の1%にあたる金額が控除されていましたが、実際の住宅ローン金利が0.4%台のものもあるため、住宅ローンで支払う利息よりも多く還付する「逆ザヤ」が起こっていました。そのため、控除率は1%から0.7%へと見直される予定です。
③ 借入限度額
借入限度額は、住宅の省エネ性能や実際に住居した時期などによって、5000万円~2000万円まで段階的に変更となる予定です。
住居を新しく検討されている方は、住宅ローン控除の変更について注視しておくと良いでしょう。
また、住宅ローンなどを利用せずに居住している住宅に一定要件を満たす住宅耐震改修をしたとき、バリアフリー改修工事や省エネ改修工事をしたとき、多世帯で同居するための改修工事などをしたときに、それぞれ所得税から控除する「住宅耐震改修特別控除」「住宅特定改修特別税額控除」などの適用を受けることもできます。
住宅ローン控除やふるさと納税は、生命保険控除や扶養控除のように、所得税を計算する基になる所得を減らすものではなく、納める所得税から直接差し引く税額控除です。そのため、最も効果が高い節税といえます。その分、しっかり下調べをして、必要な書類など漏れのないよう準備を進めましょう。手続きは、初年度だけ確定申告、次年度からは年末調整で行うことができます。
節税策12:特定支出控除の特例を活用する
会社員であったとしても、個人事業主などのように仕事に関する費用が一定額を超えた場合、特定支出控除という特例を受けられます。この特例を受けるには、必要経費が「給与所得控除の1/2」を超える必要があります。
特定支出と認められるものは、通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費などがあります。ただし、特定支出として会社が証明しているものに限ります。この特定支出控除を受けるためには、確定申告を行います。その際、特定支出の明細、会社の証明書を添付します。
節税策13:税金の支払いはクレジットカードを使う
確定申告で税金を納めることになった場合、支払方法にはいくつか選択肢がありますが、クレジットカード払いはポイントが付与される点でお得です。
実際に利用できるカードは、JCB、VISA、Mastercardなどの主要ブランドが揃っています。自分の持っているカードの中で、ポイント付与率の良いものを選ぶと良いでしょう。手続きは、「国税クレジットお支払いサイト」で、いつでも手軽に行うことができます。ただ、クレジットカード納付を利用する際、納付する税額1万円から83円(消費税別)の決済手数料がかかり、納税額が1万円加算されるごとに手数料も増えます。
まとめ
所得税を計算するときの基になる所得から控除する節税もあれば、算出された所得税からダイレクトに控除する節税もあります。スグに出来るもの、時間のかかるものを見極めながら、計画的に節税の準備をしましょう。納める税金が減ると、手取り額が増え、そのお金を老後資金の準備などに充てることができます。お金の好循環サイクルをつくりましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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