21/12/30
幸せになるためにほんのちょっと勇気を出そう~『幸せになる勇気』
今回ご紹介する本は『幸せになる勇気』。哲人と青年がアドラー心理学について語った前作『嫌われる勇気』は世界累計500万部を超えるベストセラーとなりました。その後、哲人と青年がさらに深く人生の生き方について語り合ったのが本作です。
第2弾となるこの本では、やさしそうで実は理解しづらいアドラー心理学についてよりわかりやすく解説されており、前作を読んでいなくてもこの本だけで十分理解できます。採り上げられるトピックの中で、ここでは3点に絞ってご紹介します。
ピンチだ、さあどうしよう?
なにか問題や困難にぶつかった時、人はつい「こうなったのはあの人が悪いんだ」と原因を責めたり、「わたしってかわいそう」と現状を嘆いたりしがちですね。飲みの席でそうした光景をよく見かけます。でも、ピンチの時に必要なのは「悪いあの人」でも「かわいそうなわたし」でもありません。起こってしまった原因や今の困った事態についてグチグチ不満を言っても、状況が変わることはないのです。
それよりも気持ちを切り替えて「これからどうするか」と先のことに意識を置いて考えると、済んでしまった結果から未来の話へと目線が移ります。そうすると不平だけで発展性のなかったコミュニケーションの質ががらりと変わるのです。
アドラー心理学の魅力は建設的なところ。さぁ、ピンチの時には顔を上げて未来の話をしましょう!
ほめない、叱らない、でもそっと支える
前作を読んで、アドラー心理学を子どもの教育に取り入れてみた人もいるでしょう。しかし「ほめない、叱らない」教育はなかなか難しいものです。親が何も言わないと、子どもは自分勝手な行動をとるばかり。(私には無理だわ)と挫折した人も多いのではないでしょうか。
叱りすぎはよくないにせよ、ほめられる事で子どもは伸びそうですが、実際には、ほめられたい気持ちが高じて人と競うようになるのだそう。ほめられないと頑張れない人間になってしまうのだといいます。ほめられたいのは、他人に依存しているから。自分の価値は人からの評価ではなく自分で決める事が大切です。そのためには、依存状態を抜けて自立していなくてはなりません。
アドラーは、「ほめない、叱らない」ことで子どもに無関心でいろと言っているわけではありません。親や教育者に求められるのは、子どもの自立を促す手助け役です。
例えば子どもに「遊んでいい?」と聞かれた時に「いい」「ダメ」と許可を与えたり「宿題を済ませてからね」と条件を出すと、その子は親に依存したままで自分で判断しません。「宿題が残ってるけど、どうしようか?」と本人に決めさせることで、責任感と自立心が育ちます。
人としての知識や経験を子どもに伝えながら、自分の人生は自分で決めるように後押しするのが、親や教育者の目指す姿です。自立心を持つことで、人は他者の判断ではなく自分自身で選んだ人生が送れるようになるのです。
人を愛する勇気を持とう
幸せになるための心理学を語ってきたアドラー。最終的に人生に大切なのは愛だと言います。彼が言う愛とは互いに愛し合う恋愛ではなく、なんの見返りも求めずに相手のすべてを無条件に受け入れる愛情のこと。たとえ一方通行でも傷つくことを恐れずに惜しみない愛を注ぎ続けるのは、なかなか大変で勇気がいりますね。子育てにつながるものがあります。そうした無償の愛を持つことで、人は自己中心的な世界から自立できるといいます。幸せになる勇気とは愛する勇気のことなのです。
この本で語られるのは、幸せな人生を送るためには「自立」と「愛」が大切だということ。なにかトラブルが起こった時にもうグチを言うのはやめて、「これからどうするか?」と先のことを考え、自立した考えを持って愛に満ちた未来に向けて行動していきましょう!
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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