21/12/21
2022年からの年金制度改正、パートは「106万円の壁」を超えるべきなのか
パートで働く既婚者の多くは、厚生年金加入義務が生じる「106万円の壁」や「130万円の壁」を意識しているのではないでしょうか?2022年には「106万円の壁」ルールの適用対象が拡大します。保険料を負担しても厚生年金に加入した方がよいのかを改めて考えてみましょう。
パートで厚生年金加入が必要な年収は?
会社などに雇用されている人は、厚生年金に加入する必要があります。ただし、配偶者の被扶養者(第3号被保険者)であれば、自分で厚生年金に入らなくてもかまいません。被扶養者となれる年収は130万円未満です。パートでも年収130万円を超えると厚生年金加入義務が生じることになるため、「130万円の壁」と呼ばれています。
さらに、2016年(平成28年)には厚生年金に関するもう1つの壁、いわゆる「106万円の壁」ができました。次の(1)~(5)の要件をすべてみたす場合に、厚生年金加入が必要になったのです。
(1) 従業員501人以上の会社に勤務
(2) 所定労働時間が週20時間以上
(3) 雇用期間1年以上の見込み
(4) 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
(5) 学生でない
要約すると、パートで厚生年金加入が必要な年収は、106万円または130万円です。年収106万円を超えて厚生年金加入義務が生じるのは一部の人ですが、年収130万円を超えると全員厚生年金に加入しなければなりません。
なお、年収に関係なく、労働時間が正社員の4分の3以上(概ね週30時間以上)の人は、厚生年金に入る必要があります。
2022年から「106万円の壁」の適用対象が拡大
2022年(令和4年)10月より、年収106万円以上で厚生年金加入となる人が増えます。「106万円の壁」ルールで、従業員数の要件が「501人以上」から「101人以上」に、雇用期間の要件が「1年以上」から「2か月以上」に変更されるからです。
さらに、2024年(令和6年)10月には従業員数の要件が「51人以上」となり、適用対象がますます拡大する予定です。これまで扶養内で働けていた人も、扶養を外れて厚生年金に入らなければならないケースが出てきます。
厚生年金を含む社会保険に加入すると、社会保険料の負担が発生し、手取りが減ってしまいます。手取りを維持するには、勤務時間を増やして年収を上げることを考えなければなりません。
手取りを減らさず厚生年金を増やすには?
年収106万円で社会保険なしの場合、所得税、住民税、雇用保険料を差し引きした手取りは約104万円です。一方、同じ年収106万円で社会保険加入となった場合、社会保険料の負担が約15万円となり、手取りは90万円程度まで減ります。年収106万円以上で社会保険に加入した場合の年収と手取りの変化をみてみましょう。
●年収と税金・社会保険料、手取りの変化
筆者試算(東京都協会けんぽ加入40歳未満、雇用保険料率は一般の事業で計算)
現在年収106万円の人が社会保険加入後も同程度の手取りを維持するには、年収を130万円近くまでアップさせなければならないことがわかります。
「106万円の壁」ルールの適用がなくても、年収130万円を超えると社会保険に入らなければなりません。年収129万円で社会保険なしの場合、所得税、住民税、雇用保険料を差し引きした手取りは約124万円です。それに対し、130万円を超えて社会保険に加入すると手取り年収は15万円以上減りますが、160万円近くまで年収を上げると手取りが130万円に回復します。
年収を増やせば、将来受け取る年金も増えます。たとえば、年収150万円で10年間働くと、厚生年金を年8万円以上の上乗せが可能です(※「平均標準報酬額×5.481/1000×月数」で計算)。厚生年金は一生涯もらえる年金なので、長生きするほど得することになります。
まとめ
今後社会保険の加入義務が生じそうな人は、勤務時間を減らして年収を調整するよりも、勤務時間を増やして年収を上げるのがおすすめです。手取りを維持しながら、厚生年金を増やせます。老後の安心を得るためにも、この機会に今後の働き方を考えてみましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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