20/09/02
まとまった資金があっても積立投資すべきなのか
たとえば手元に100万円などの大きなお金がある場合、一括で投資に回すのがいいのか迷っちゃいますよね。
今回は一括か積立で迷った時の考え方についてお話しします。
その100万円、10年以上使わないお金ですか?
お金の運用を考え出すと、どうしても、どの方法がいいのか?どの商品がいいのか?に意識が向かってしまうかと思います。積立投資か一括投資かで迷うこともそうですね。
しかし、具体的な運用方法や購入商品を決める前に、投資に回したいと思っているお金が10年以上の「長期投資」が可能なお金かどうかを確認しておきましょう。
今後10年以内に住宅や車の購入、あるいは結婚するなど、まとまったお金が必要な予定があっても、積立、一括に関わらず投資資金に手を付けなくても大丈夫そうですか?
今、投資に回そうとしている100万円が今後の大きなライフイベントに必要ないお金であることがしっかり確認できたら、長期の投資資金として積立、一括のどちらで投資を始めるのか検討を始めましょう。
10年以上の運用期間があれば、一括でも、積立でもある程度の運用成果が期待できると同時に、元本を割るほどの損失も避けられる可能性が高くなります。
積立投資と一括投資の運用実績の違いを確認
金融商品の運用実績は、商品や運用期間などにより様々です。今回は日本株式に投資する投資信託を例に、同じ投資元本でも積立か一括かの違いで運用実績にどのような違いがあるのかを見ていきたいと思います。
以下のグラフは日興アセットマネジメントが運用する日本株式を投資対象として、日経平均株価の動きに連動する投資成果を目指す「インデックスファンド225」の2020年7月31日時点の過去10年間と20年間の運用実績です。
1つ目のグラフは、過去10年間、投資元本120万円を積立(緑色)と一括(水色)で投資した場合、2つ目は同じ条件で20年前から始めていた場合の実績です。
●10年間毎月1万円を積立投資した場合と120万円を一括投資した場合の比較
投資元本120万円に対し
・積立投資…192.38万円
・一括投資…313.1万円
●20年間毎月5000円を積立投資した場合と120万円を一括投資した場合の比較
投資元本120万円に対し
・積立投資…229.74万円
・一括投資…201.57万円
出所:モーニングスター「積立購入シミューション」
今回の日興「インデックスファンド225」の例では、10年前に120万円を一括投資していれば、約2.6倍の313万円に増える結果となっています。一方で、10年間で投資元本120万円を毎月1万円ずつ分割して投資する積立投資の場合は約1.6倍の192万円でした。
このような結果を見ると一括がいいのではと思われるかもしれませんが、20年前に始めていたとすると結果は違い、積立投資が一括投資に勝つ結果となっています。
20年前に120万円を一括投資した場合は、120万円の投資元本が2倍に届かず201万円となりました。一方で、毎月5000円ずつ分割して投資する積立投資は約1.9倍の229万円でした。
10年間、20年間、一括、積立いずれも結果の多寡を考えなければ、全てプラスとなっていますが、成果の出方に違いがでています。
どうして、このような結果となったのでしょうか?
グラフの形でどちらが有利になるかが異なる
10年間のグラフを見てみると、短期的には上下動は見られますが、全体的に見ると右肩上がりのグラフといえるかと思います。このグラフのように、投資開始から短期的な下落があっても全体的な動きとしては順調に値上がりをする場合、一括投資が積立投資より有利であるといえます。
一方、20年間のグラフを見てみましょう。こちらは、投資の開始当初から10年を経過する頃まで大きな下落局面が見られます。水色の一括投資に注目してみると2003年、2009年には120万円の投資元本が60万円近辺まで下がっている時期があります。
このような大きな下落局面は、コツコツ購入を続けている積立投資は安い価格で投資商品を購入する機会となります。このように、投資開始から値下がりし、その後値上がりするなら、積立投資が一括投資より有利になる可能性があるといえます。
大きな値動きは辛い人は積立投資がおススメ
2つのグラフとも一括投資と積立投資を比較すると、一括投資は値動きが大きく、積立投資は一括よりも上下に動く幅が抑えられています。
積立は価格が上がっている時も下がっている時も買い続けながら投資をしますので、下がっている時の購入が多くなるほど商品の平均購入単価を下げることができます。投資の世界で下がるというと、いやなイメージがあるかもしれませんが、安く買えるということはお得な買い物ができたということです。
投資は長期投資により積み上がっていく経済成長の果実が期待できることに魅力があります。先ほどの一括投資のグラフをご覧いただくと分かる通り、時には投資額が半値になってしまうなどということは、普通にあると思っておいていいかと思います。
今回のグラフもあくまでも過去の実績ですが、一括投資で一時的に大きく下がっても待っていればプラスの結果になってはいます。しかし、この大きな下げに気持ちが耐えられるかどうかが大きな問題になります。
多くの方が半値以上も下がってしまうと怖くて売ってしまいますよね。そうすると長期投資を続けることはできません。将来のために値動きも押さえながら、手元のまとまったお金を増やしたい場合は長期投資を無理なく継続できる積立投資をおススメします。
また、まとまったお金を10年、20年と分割するのは長いかもしれませんので、1年や2年くらいに分割して投資商品を購入していくというもの1つの手です。
まとめ
一括投資か積立投資かの選択は、投資初心者にとっては難しいかと思います。しかし、まずは投資に回したいお金が長期投資できるお金であるかどうかを見極めることが大切です。そのうえで、一括投資か積立投資かの選択をしましょう。
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小林 裕子 ひろファイナンシャルプランニング代表 CFP ・1級FP技能士
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料を一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
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