20/03/16
iDeCoやつみたてNISAなど、今の相場でこのまま積立続けて大丈夫?
投資の格言に「上げ100日、下げ3日」というものがあります。相場は、時間をかけてゆっくりと上昇していくものの、下落するときは一気に下落することをたとえたものです。
ここしばらく、市場はまさに「下げ3日」を体現しています。新型コロナウイルスの影響で世界同時株安が発生し、市場には悲観的なムードしかただよっていません。そんな中気になるのは、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(積立NISA)といった、積立投資の資産です。果たして、今の相場のまま積立投資を続けていてもいいのでしょうか。
現在進行形の「コロナショック」はまだ底が見えない
くしくも本稿執筆日は13日の金曜日。何となく不吉ではありますが、ここしばらくの市場の動きを見直してみましょう。
まずはここ1年間の日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の動きを確認します。
●日経平均株価(2019年3月14日〜2020年3月13日)
(ヤフーファイナンスより)
日本を代表する225銘柄の株価をもとに計算される日経平均株価。グラフの青の線を左からたどっていくと、前半はおおよそ20000円から22000円程度、後半は22000円〜24000円程度で推移していることがわかります。
それが一変したのは2020年2月下旬。新型コロナウイルスのリスクが表面化してくると、株価は一気に下落しました。24000円近かった日経平均株価が、2月末には21142円と22000円を割り込み、3月13日の終値は17431円05銭と、1か月足らずで実に6000円以上も下落したのです。3月13日の下落幅1128.58円は、歴代13位の下落記録です(執筆時点)。
TOPIX(東証株価指数)も、おおよそ日経平均株価と同様の動きを見せています。
●TOPIX(東証株価指数)2019年3月14日〜2020年3月13日
(ヤフーファイナンスより)
TOPIXは東証1部に上場しているすべての銘柄の時価総額をもとに計算される株価指数です。時価総額は「株価×発行済み株式数」で計算しますので、株価が上がればTOPIXも上がります。しかし、2020年3月13日の東証1部の値上がり銘柄はわずかに64。残りの2100銘柄は値下がりしました。市場全体がいかに値下がりしているかがわかります。
もうひとつ、アメリカのダウ平均株価もチェックしてみましょう。
●ダウ平均株価(2019年3月13日〜2020年3月12日
GoogleやAmazon、Facebookなど、世界的企業を擁するダウ平均株価(ダウ工業株30種)も2月下旬から急落。あまりに急激な下落だったため、取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が発動したほどでした。
このように、「コロナショック」はわずか1か月足らずで、市場の雰囲気を一変させてしまったのです。しかも、まだ下落がとどまる気配が見えません。
各国の財務相や、アメリカのトランプ大統領など、景気刺激策を考案していますが、消費に反映されるのは時間がかかるかもしれません。
今回「パンデミック」と認定され、各国もこれまで以上に対策を実施し、患者数の伸びはそのうち鈍化はすると思いますが、経済への影響は長引くとの見方が大勢です。
来週以降も厳しい相場が続く見通しです。
急落は長いスパンでとらえるべき
このような状態ですから、iDeCoやつみたてNISAの投資信託も、一時的に大きく値下がりしていることは間違いありません。ですから、以前からiDeCoやつみたてNISAに取り組んでいる方の中には「資産がなくなりそうで心配」と思われている方もいるかもしれません。
ようやく重い腰を上げて、2020年から始めた人はこの急落で一層不安になっていることでしょう。
しかし、iDeCoやつみたてNISAは、長期・積立・分散という、投資の王道を踏まえた投資です。確かに、ここ1か月だけを見れば大暴落でしょうが、それよりずっと前から長く積立投資を続けている方ならば、まだ十分利益が確保できていると考えられます。
先の日経平均株価を10年のスパンでみると、その理由がわかります。
●日経平均株価(2010年3月〜2020年3月)
(ヤフーファイナンスより)
コロナウイルスによる下落はグラフの右端。確かに、短期的な下落幅としては大きい、といえそうです。しかし、10年の長期間で考えると、日経平均株価は今よりもずっと低い時代があったことも、少しずつ時間をかけて値上がりしてきたこともわかります。
さらに昔には、バブル崩壊やリーマンショックのような大きな下げもありました。しかし、それらがあったからといって、市場が完全に崩壊したわけではありません。
過去の相場から永遠に下がり続ける相場はありません。
今後も上がったり下がったりを繰り返しながら、経済成長に合わせて株価は推移していくことでしょう。
冒頭に紹介した「上げ100日、下げ3日」を思い出してください。「下げ3日」のインパクトは強烈ですが、「上げ100日」もきちんとあるのです。
ためしに、投資信託協会のウェブサイトで、つみたてNISAの対象になっている投資信託の「10年騰落率」を調べてみました。10年騰落率とは、10年間でどのくらい値上がり(値下がり)したかを割合で表したものです。
その結果は、次のとおりです。
1位 ひふみ投信 279.69%
2位 セゾン資産形成の達人ファンド 230.36%
3位 フィデリティ・米国優良株・ファンド 210.88%
実に200%超え(3倍超)なのです。
もちろん、この10年間がよかったからといって、次の10年間がいいという保証はまったくありません。しかし、対象の投資信託のなかで、直近10年騰落率がマイナスになっているものは、ひとつもありません。ということは、少なくとも、長期・積立・分散は市場の変動に対抗する有効な手段のひとつだと言ってもいいのではないかと思います。
ドルコスト平均法でコロナショックに対抗
したがって、筆者はこのような相場のなかでも、iDeCoやつみたてNISAを活用し、淡々と積立投資を続けることをおすすめします。
積立投資をすると、ドルコスト平均法の効果が期待できます。
ドルコスト平均法は、定期的に一定額の金融商品(ここでは、投資信託)を購入しつづける投資法です。こうすることで、投資信託の価格(基準価額)が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わないことになるため、平均購入単価を下げることができるのです。
●ドルコスト平均法のイメージ
この例で注目していただきたいのは「1口あたりいくらで買えたか」、つまり平均購入単価です。一定額ずつ積み立てると、基準価額が安いときにたくさん買えるので、一定量ずつ積み立てた場合に比べて平均購入単価が抑えられるのです。
今のコロナウイルスによる下落も、積立投資ならば乗り切れる可能性があります。安いときに買っておくことで、将来、コロナウイルスが落ち着いて、市場が再び値上がりしてきたときに、利益が出しやすくなる、というわけです。こうするからにもちろん、今まで買っていて値下がりしたものも、売らずにとっておくべきでしょう。
iDeCoやつみたてNISAならば、利益にかかる税金をゼロにしながら投資できるのもメリット。iDeCoならさらに、60歳になるまで(法改正で65歳になるまでできる見通し)所得税や住民税なども安くできますし、つみたてNISAも投資可能期間が5年延長され、2042年まで投資ができるようになります。せっかく投資するのですから、こうした優遇制度は優先的に活用した方がいいでしょう。
まとめ
連日のコロナウイルスの報道で、感染者数・地域がどんどん増えているのが気かがりではあります。しかし、人間も相場も、いずれは回復するものです。一刻も早い収束を願いつつ、淡々と積立投資を続けることをおすすめします。
最強の積立投資は、ほったらかすことです。よく「ほったらかし投資」と言われますが、ほったらかし投資の極意は、投資していることを忘れることです。
一緒にこの相場を乗り切っていきましょう。
iDeCoやつみたてNISA(積立NISA)おすすめ金融機関4選
つみたてNISA(積立NISA)スタートにぴったりの金融機関をご紹介します。
● SBI証券
・ほとんどの投資信託を網羅。有力商品を選びやすい
・毎日・毎週・毎月・複数日・隔月の5つの購入タイミングを選べる
・SBIハイブリッド預金を使うと入金・出金がスムーズ
● マネックス証券
・取扱商品が100本以上。100円から購入可能
・チャットによる質問対応、パソコン出張サービスなどサポートが充実
・アプリ・パソコンツールが豊富で使いやすさに定評
● イオン銀行
・イオン内に店舗があるため、買い物ついでに立ち寄れる
・年中無休で夜21時まで営業(一部例外あり)のため、相談しやすい
・「イオン銀行Myステージ」のポイントが貯まり、普通預金金利がアップ
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・iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)のオススメ金融機関はこの3社
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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