20/08/16
2020年の退職金はいくら? 大企業と中小企業で退職金は1500万円近く違う
お勤め先から将来、退職金がいくらくらいもらえそうかご存知ですか?
ご自身の退職金額について知らない方は多いのですが、そもそも退職金はないと思い込んでいる方もよく見かけます。
今回は、最新の退職金事情を確認することで、みなさんご自身の退職金を考える機会にしていただきたいと思います。
退職金制度のある会社の割合は8割
厚生労働省「就労条件総合調査」では、5年ごとに会社規模別(従業員の人数別)の退職金制度の状況を調査・公表しています。
退職金制度のある会社はどのくらいあるのでしょうか。2013年調査と2018年調査の結果を並べて見てみましょう。
●退職金制度のある会社の割合(会社規模別)
厚生労働省「就労条件総合調査」より作成
全体で見ると、2018年調査は2013年調査より5%上昇。約8割の会社が退職金制度を導入していることがわかります。また、企業規模が大きいほど退職金制度の導入率が高くなっています。従業員1000人以上の規模の会社の導入率は少しだけ減っていますが、それ未満の規模の会社の導入率は増加しています。
なお、このデータには30人未満の会社が入っていません。そこで参考までに、10人~299人の都内中小企業を対象とした「2018年版中小企業の賃金・退職金事情」をみると、退職金制度の導入率は71.3%となっています。ですから、会社規模が小さくなるほど導入率は低いとみてよさそうです。
中小企業が退職金の導入率が低いといっても、7割超の会社が退職金制度を導入しています。
しかし、なぜか自分が勤めている会社には退職金制度がないと思い込んでいる人は多いです。
退職金は毎月受取る給与の後払い的な性格があるといわれ、会社がみなさんの将来ために生活資金を確保してくれているといってもいいお金です。
ないと思い込んでいた退職金が実は会社の担当者に聞いてみるとあったという方も実は多いです。一度、この機会に調べてみるといいと思います。
大企業と中小企業の退職金額の違い
次に、企業規模別の退職金額を確認してみましょう。
大企業の退職金額は2年に一度、中央労働委員会が資本金5億円以上かつ労働者 1,000 人以上の会社を対象に調査する「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」から、中小企業の退職金額は東京都産業労働局による従業員10~299人の会社を調査対象とした「2018年版中小企業の賃金・退職金事情」から見ていきます。
退職金は退職の仕方や辞めるタイミングによっても金額が違ってきます。自己都合、会社都合による退職金の違い、勤続期間による違いもまとめました。
●大企業
※大学卒、事務・技術労働者が各勤続年数で退職した場合の退職金額
中央労働委員会「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」より作成
●中小企業
※大学卒、全産業の平均退職金額
東京都産業労働局「2018年版中小企業の賃金・退職金事情」より作成
大企業(総合職)と中小企業の退職金額を同じ勤続年数で比較すると、2倍以上の退職金額の開きがあることがわかります。一般職でも1.5倍程度は違います。勤続年数38年になると、大企業(総合職)と中小企業では1500万円近い差ができます。
自己都合と会社都合で支給額が違う
退職には大きく「会社都合退職」と「自己都合退職」の2種類あります。
会社都合退職とは経営不振などを理由に会社側からの働きかけによる退職をいいます。労働者が希望退職制度に応募して退職した場合も会社都合退職となります。定年退職も会社都合に分類されます。
一方、自己都合退職とは転職や結婚、引っ越し、家庭の事情などの労働者側の都合で労働者の判断による退職をいいます。
前項のデータで企業規模、職種に関わらず退職金額は会社都合退職が自己都合退職よりも高くなっていました。会社都合か自己都合かによる退職金額の差も気になりますが、退職後の雇用保険からの失業給付金の給付開始時期や給付期間にも違いがでてきます。失業給付金を考えた退職の場合には会社都合退職が有利になります。
最近、コロナの影響もあり希望退職や早期退職を募集する会社が増えています。早期退職は割増退職金などの優遇が期待できるかもしれませんが、雇用保険では自己都合退職扱いになりますので注意ください。しかし会社によっては会社都合退職として処理してくれる場合もありますので事前に確認しておくことは大切です。
自分の退職金はいくら?少なかったらどうする?
みなさんの会社の退職金がどうなっているか気になってきましたか?
今回、ご紹介したデータはあくまでも平均額ですので、大企業、中小企業に関わらず会社によって退職金額は違います。「まあ、いくらかは貰えるだろう」と軽く構えていると、退職時に思った以上にもらえず、大慌てしてしまう…なんてことにもなりかねません。
きちんと、ご自身の将来のために退職金はしっかり確認しておきましょう。
ご自身の退職金額を知るには、会社の総務や人事といった担当者に聞くのが一番簡単です…というと、たいてい「そんなこと会社に聞きづらい」という反応が返ってきます。
でも、退職金は退職後の生活資金となる大切なみなさんの資産です。知って当たり前の気持ちで会社の担当者に聞いてみてください。
筆者の経験上、最初は退職金について聞くことを躊躇していた方も、少しの勇気を出して聞いてみたら、「ちゃんと教えてくれました!」といわれる方がほぼ100%です。
では、退職金を確認して「思いのほか少なかった」あるいは「ない」なんてことになったらどうしましょう?
少ない、ないなりの将来の生活資金作りに、早急に取りかかる必要が出てくるでしょう。貯蓄もあまりできていない状態でしたらなおさらですね。
2019年に金融庁が「老後資金は2000万円不足する」と発表し、話題になりました。
当然、個人差はありますが、2000万円不足というのはそれほど的外れな金額ではありません。将来の生活費を公的年金では足りない分をカバーするのに必要な平均的な金額ともいえるのです。
もし、退職金だけでは退職時に貯蓄が2000万円にも届きそうになく将来が不安と感じられるなら、少しでも早く家計の見直しをして、将来のためにお金を残せるようにしていきましょう。
その際活用いただきたいのが、税制優遇を受けながらコツコツ、少額から積立投資ができる「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」です。
どちらも、積立投資で得られた利益(運用益)に税金がかからないため、お金を効率よく増やすことが目指せます。また、iDeCoは投資した金額(掛金)が全額所得控除になるため、所得税・住民税を節約できます。
まとめ
退職金は会社の規模などにより金額は大きく異なることがご確認いただけたかと思います。退職金の有無や金額で老後の資金計画は大きく変わってきます。少ないならば自ら用意することも必要になってくるでしょう。
会社の方は意外とやさしく教えてくれるはずです。退職金は大切な将来の生活資金なのですから、しっかりと問い合わせて確認しておきましょう。
【関連記事もチェック】
・60歳貯蓄ゼロ・退職金の残金ゼロの人が取るべき生存戦略はコレだ
・会社員と公務員で退職金はどれくらい違うのか 退職金の平均は?
・「退職貧乏夫婦」の4つの罠。退職金持ち夫婦になるには?
・退職金の使い方次第で「定年ビンボー」に!3つの失敗例と対策
・みんなが気になる退職金の金額。いくらもらっている?
小林 裕子 ひろファイナンシャルプランニング代表 CFP ・1級FP技能士
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料を一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう