20/06/15
自宅療養するなら絶対使いたい「セルフメディケーション税制」 いくら節税できるのか
確定申告で医療費控除をすると、税金を安くすることができます。しかし、医療費控除は1年間に支払った医療費が10万円を超えないと申告できないため、少々ハードルが高いといえます。
そんなときに利用したいのが「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」。市販薬の費用が1万2000円を超えた場合、所得控除が適用でき、税金を安くできます。どんな制度か、いくら節税できるか、確認してみましょう。
セルフメディケーション税制ってどんな制度?
セルフメディケーション税制は、別名を「スイッチOTC薬の所得控除」といいます。OTCとはOver The Counterの略で、「店頭」という意味です。
「スイッチOTC」とは、従来は医師の処方箋が必要だった医療用医薬品のなかから、薬局で購入できるよう、一般用医薬品に転用されたものです。最近では、病気になっても病院には通わず、市販の薬で治すことも多いですよね。セルフメディケーション税制では、その薬を買うことで税金を安くできるのですから、ぜひ利用したい制度ですね。
利用できる人は、
・所得税や住民税を納めている人
・対象となるOTC医薬品の年間購入金額が、自分と扶養家族の分を合わせて1 万2000 円を超えた人
・特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診など、ふだんから検診や予防接種のいずれかを行なっており、病気の予防や健康増進に取り組んでいる人
です。
つまり、日頃から病気にならないよう気をつけている人が利用できる、というわけです。
なお、セルフメディケーション税制は、2017年1月1日から2021年12月31日までの5年間のみの制度です。
スイッチOTCに含まれる市販薬は?
制度の対象となる市販薬は、「薬局やドラッグストアで購入できる医療用成分が配合された市販薬で『スイッチOTC』と呼ばれているもの」です。
薬局に行ったら、薬のパッケージを見てみてください。
このようなマークが記載されている市販薬はスイッチOTC、つまり、セルフメディケーション税制の対象となる薬です(なお、このマークのない市販薬の中にも、セルフメディケーション税制の対象になる市販薬があります)。
厚生労働省によると、対象の市販薬は2020年3月末現在で1800種類。テレビコマーシャルでおなじみの胃腸薬「ガスター10」、鎮痛剤の「ロキソニンS」、花粉症治療薬の「アレグラ」などが該当します。いずれも副作用が少なく、使用実績があるものです。
1万2000円を超えた金額で、最高8万8000円までが控除できる
気になる控除額は、1年間に自分や家族(生計を一にするもの)が購入したスイッチOTC医薬品の合計金額が1万2000円を超えた金額で、最高8万8000円までです。
たとえば、1年間に購入したスイッチOTC医薬品の金額が7万円だった場合、7万円-1万2000円=5万 8000円を、その年の課税所得から控除できます。
なお、スイッチOTC薬は、従来の医療費控除の対象にもなりますが、医療費控除とセルフメディケーション税制の両方を適用することはできません。そのため、どちらかの控除を選択することになります。
1年間の医療費の総額が10万円未満の場合は、医療費控除はできませんから、セルフメディケーション税制一択になります。
一方、1年間の医療費の総額が10万円以上の場合は、医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらがお得かを考えて、利用する制度を選べばいいでしょう。
たとえば、1年間のスイッチOTC医薬品を除く医療費が8万円、スイッチOTC医薬品の費用が4万円の場合、
・通常の医療費控除
(1年間の医療費の総額10万円を超える分が控除できる・上限200万円)
=8万円+4万円-10万円
=2万円(控除額)
・セルメディケーション税制
(スイッチOTC医薬品の費用1万2000円を超える分が控除できる・上限8万8000円)
=4万円-1万2000円
=2万8000円(控除額)
となるため、セルフメディケーション税制を利用した方がお得だといえます。
税金はいくら安くなる?
上の計算で求めた控除額は、所得税の計算のもととなる課税所得から差し引くことができます。所得税は、課税所得に決められた税率をかけて算出するので、課税所得が少なくなると安くなります。また、住民税(一律10%)も同様に、課税所得が少なくなることで安くなります。
上の例で仮に、所得税率が10%の人がセルフメディケーション税制を利用した場合、
・所得税 2万8000円×10%=2800円
・住民税 2万8000円×10%=2800円
合計 5600円
つまり、税金が5600円安くできることになるのです。
まとめ
セルフメディケーション税制を利用して確定申告をするには、市販薬を買ったときのレシートや領収書が必要です。確定申告の時期になったら医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらが得かチェックしましょう。そして、お得なほうで確定申告をするといいでしょう。
【関連記事もチェック】
・【セルフメディケーション税制】市販薬で対象になるもの・ならないものまとめ
・会社員も節税できる「医療費控除」「セルフメディケーション税制」|マネラジ。#14
・新型コロナ関連の補助金・融資・支援・税金控除・支払い猶予まとめ【7/1更新】
・年金が節税に。確定申告前に確認したい年金に関する「控除」
・医療費控除の必要書類、提出方法、期限、注意点 まとめ
頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
この記事が気に入ったら
いいね!しよう