20/04/06
なぜ世界の資産が倍増する中で、日本人の資産は2割しか伸びないのか
この20年間で世界全体の保有資産は倍に増えたのに対して、日本の保有資産は2割程度しか増えていないそうです。資産の伸びは、世界より鈍いようです。なぜ、お金の増え方に差が出ているのでしょうか?
その理由はお金を働かせるという意識の差にあるように思います。
今回は世界と日本のお金の増え方に違いが出てきている実態を確認しながら、お金に働いてもらうという考え方とその方法について紹介したいと思います。
20年間で世界の資産は倍増、日本は2割アップ止まり!その理由は?
スイスに本拠を置く世界有数の金融機関クレディ・スイスが「2019年グローバル・ウェルス・レポート」で世界の資産の推移についての報告書を公表しました。
このレポートでは、2000年末から2019年半ばにかけての資産の推移を紹介しています。たとえばアメリカの成人1人当たりの資産額は、2000年には21万1000ドルでしたが、2019年には43万2365ドルとなったといいます。また、中国の資産総額は今世紀、3.7兆ドルから63.8兆ドルへと、17倍以上も増えたそうです。その他の国々を見ても、金額の大小こそありますが、おおむねどの国も約20年間の資産増加率が2倍以上になっていることが見て取れます。
一方、日本の成人1人当たりの資産額は、2000年19万1990ドル、2019年23万8104ドル。資産増加率はわずか24%増にとどまっているのです。
同レポートでは日本の増加率が低い理由に、不動産の不安定な動きや低金利などを挙げています。それに加えて筆者は、日本のお金の預け先が元本割れリスクの少ない低金利の預貯金に偏っていることも押さえておくべき実態だと思います。
日本銀行調査統計局の「資金循環の日米欧比較(2019年8月)」では、日本、米国、ユーロエリアの家計の金融資産構成を公表しています。
日本銀行調査統計局「資金循環の日米比較(2019年8月)」
日本の個人金融資産は1835兆円。そのうち現金・預金が53.3%を占めているそうです。それに対して、米国の個人金融資産は88.9兆ドルで、現金・預金は12.9%です。また、投資信託や株式等(投資商品)の割合は日本13.9%、米国は46.3%となっています。
例えば1000万円の金融資産を持っているとすると、日本人は預貯金530万円、投資商品140万円、アメリカ人は預貯金130万円、投資商品460万円のような配分でお金を預けているイメージですね。
日本の資産伸び悩みの理由に低金利が挙げられていました。そんな、金利がゼロ%に近い預貯金をメインに預けている状態が、資産の増加率の差に出ているのでしょう。日本はお金を減らさないことを優先して手堅く、預貯金メインでの資産管理をしているつもりが、実は、経済成長による利益を放棄してしまっているのです。
日本は投資を活用してもっとお金に働いてもらう考え方を取り入れてもいいのではないかと思います。
これから増やすなら投資信託を使った国際分散投資がおススメ
日本では長らく低金利が続いていますし、筆者もこの状況はしばらく続くと思っています。ゼロ%に近い預貯金に半分以上預けていては、世界とのお金の増え方に差がでてしまうのは仕方ない結果なのかもしれません。しかし、投資初心者の方は特に、投資にはコワいイメージがあるかと思います。
そこでご紹介したいのが、リスクを抑えながら安定した資産成長が期待できる国際分散投資です。
国際分散投資とは、投資する国や投資する資産を分けて投資することをいいます。例えば、投資する国は国内・先進国・新興国などとわけます。投資する資産は株式・債券・不動産などわけます。投資する国や資産は、それぞれ値動きが違います。異なる値動きをするものを組み合わせると、そのうちのどれかが値下がりしても、他のどれかの値上がりがカバーしてくれる可能性があります。つまり、国際分散投資は、リスクを抑える効果が期待できるのです。
国際分散投資におすすめなのが、投資信託です。
投資信託は、ファンドマネージャーと言われる「運用のプロ」が投資家から集めたお金で投資をして、その投資で得た利益を投資家に還元する投資商品です。これをいくつか買って組み合わせるだけで国際分散投資が実現できます。しかも、1000円程度の少額から購入可能ですので、いきなり大金を出すのはコワいという方でも大丈夫です。
とはいえ現在、約6000本の投資信託が販売されています。選び方がわからない、という場合は、バランス型に注目してみましょう。
バランス型の投資信託は、1本であらかじめ国内外の株式や債券など、複数の資産に分散投資をしてくれる投資信託の「幕の内弁当」のような商品。自分で国際分散投資するための組み合わせを考える手間を省くことができます。
iDeCo・つみたてNISAで非課税のメリットも!
さらに、投資信託で投資を始めるなら税金面でお得なiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)やつみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)のチェックも必ずしておきましょう。
投資信託を購入するためには買った投資信託を預けておく口座が必要です。その口座をiDeCoやつみたてNISAにしておくと、投資で得た利益にはまったく税金がかからない税制優遇を受けることができます。ふつうは20.315%かかる税金がゼロですから、その差は大きいですね。
さらにiDeCoは積立金が全額所得控除の対象に。毎年の所得税・住民税負担を減らし、節税をしながら将来のためにコツコツと積立投資ができます。その上、受け取るときにも税制優遇を受けることができます。なお、iDeCoは60歳まで積立金を引き出せない点はご注意ください。
つみたてNISAで買うことができる投資信託は、金融庁の基準を満たした、安定して資産形成できると考えられるものだけになっています。手数料も安く、初心者でも簡単に商品選びができるでしょう。iDeCoほどの税制優遇はありませんが、引き出しはいつでも可能です。
まとめ
日本にもiDeCoやつみたてNISAのような、お金を増やすために活用できる制度が整ってきています。これは日本政府も、税金を優遇してでも自分で資産を増やしてほしいという思いの表れなのでしょう。
預貯金だけではお金を増やすことは難しい時代です。世界とのお金の増え方にこれだけの差が出ているということは、安心感で選んでしまう「とりあえず預貯金」という考え方の癖を見直すべきということでしょう。
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つみたてNISA(積立NISA)スタートにぴったりの金融機関をご紹介します。
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・ほとんどの投資信託を網羅。有力商品を選びやすい
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小林 裕子 ひろファイナンシャルプランニング代表 CFP ・1級FP技能士
2008年FP相談業務開始。2014年事務所運営スタイルを金融機関等からの紹介手数料を一切得ず、報酬は顧客からの相談料のみとするフィーオンリーへ移行。「ファイナンシャルプランニングは100人100様」をモットーにライフプランの実行支援を行っている。
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