19/04/18
【書評】投資のプロが子供たちにやさしく教える『いま君に伝えたいお金の話』
お金は、私たちにとってとても大切なもの。上手に使うと自分が幸せになるだけでなく、社会をより良いものに変えることもできます。
今回ご紹介する一冊は「村上ファンド」の代表として知られる投資家、村上世彰(むらかみ・よしあき)さんの本。お金に詳しいプロ中のプロが、10代の中・高生に向けて書いたものです。
お金は生きる上の「道具」です
まずは「そもそもお金ってなんだろう?」ということから説明が始まります。
お金には、欲の象徴や争いの原因といった、悪いイメージがありますが、お金は「何かと交換できる」「ものの価値をはかる」「貯める」という3つの機能を持つ便利な「道具」で、悪いものではありません。問題があるのはお金を扱う人の方なのです。
ただ、道具は使い方を間違えると機能しません。お金の取り扱いを間違えると、自分や周りの人を傷つける凶器になってしまうと、村上さんは指摘します。
たとえばそれは、お金を借りた時。うまく利用しないと大変なことになるため、借金をする前にきちんと内容を理解しておくことが大事です。進学ローンなどのたとえを交えながら、その本質が語られます。
お金は社会をめぐる「血液」です
日本人はお金を貯め込む傾向にあるため、日本ではあまりお金が動いていませんが、お金は社会の「血液」なので、流動的に活用するものだというのが村上さんの考え方。
血液が循環しないと、人間の身体全体に十分な酸素や栄養が行き渡らず、具合が悪くなります。お金も同じで、うまく流れないと社会は潤いません。社会に流れることでその価値を発揮するお金。貯めこむと社会が不景気になって人々の生活は苦しくなる一方です。それが今の貯蓄大国日本の深刻な経済状況なのです。
道具であるお金を、人生の目的や基準にしてはいけません。お金を何にどう使えば上手に利用できるかを考えることが大切。モノの価値は値段ではなく、その人にとって必要なものかどうかで決まります。本質を見極めることが、お金を効率的に使うために必要な投資家の視点なのだそうです。
幸せはお金の量ではなく、お金の使い方で決まるという考え方は、とてもためになります。
親が子に伝えたい「お金に困らない幸せな人生」の送り方
お金に困らない幸せな人生を送るためには、どうすればいいか。これは親が子供にぜひとも伝えたいことですね。おそらく村上さんの父親もそう考えたのでしょう。
子供の頃から投資家の父親にお金について学び、慣れ親しんできた村上さんは。プロになってからも貯蓄、投資、ボランティア活動などのさまざまな形で、お金とのいい関係が作れているといいます。
日本では、子供にお金の授業は行いません。みんな、よくわからないまま大人になるため、無駄遣いしたり、いきなり株や投資に手を出して失敗したり、ただ貯め込む一方だったりと、お金をうまく活用できない人が多いのでしょう。
そうしたお金に振り回される人生は、決して幸せなものではありません。そのため村上さんは日本の各所で子供たちに「お金の授業」を行っています。
大人になってからも、モノの価値を理解し、お金の動かし方について考えることは大切。お金がきちんと循環してこそ、暮らしやすい豊かな社会になるのです。
投資のプロが描いた本なので、シビアな内容かと思いましたが、自分の子どもに語りかけるようにわかりやすくまとめられており、大人でも十分読みごたえがある、充実したお金の入門書。私もこの本を子供の頃に読んでいたら、もっとうまくお金と向き合えていただろうなと思うことしきりです。親子で読んで、お金について話し合う、いいきっかけにもなるでしょう。
『いま君に伝えたいお金の話』
(幻冬舎)
【読書ブロガー小野寺理香のブックレビュー】記事
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・出口の見えない悩みを哲学で解決!『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』
・ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか? 不便益という発想
・思いやりにあふれた日々のいとおしさ~『大家さんと僕』
・投資のプロが子供たちにやさしく教える『いま君に伝えたいお金の話』
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小野寺 理香 おのでら りか
読書ブロガー。好きなジャンルは文学、歴史、アート。ふとしたきっかけで出会い、好きになったら長くつきあう……本との巡り合いは人と同じ。時に味わう〝がっかり〟も、読書のおもしろさのひとつです。ここでは、よりすぐりのすてきな本をお届けします。
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