24/12/06
昭和生まれの親のお金の常識は「令和の非常識」
この2~3年で生活様式も変わり、物価も値下がりから値上がりへと転じています。環境や暮らしぶりが変われば、今の時代にあった常識にリセットすべきです。少子高齢化はさらに進み、2050年には75歳以上の単独世帯は2020年の1.7倍に増えるという推計が発表されています。しかし、私たちの意識を変えるには時間がかかります。特にお金の常識は、育った環境に左右されることが多く、親の価値観を引きずっていることに気づかない人もいます。
今回は、「昭和の常識は、令和の非常識」になってしまったお金の常識について見ていくことにします。
昭和の常識1:子どもの学費のために学資保険に入る
かつて学資保険は、教育費を準備する王道ともいわれていました。特に予定利率の高かった時期には貯蓄性が高く、保険料以上の満期返戻金を受け取ることができました。しかし現在では、標準利率(金融庁が保険会社に対して設定している運用利率)が0.25%と低く、保険会社の予定利率も低いため、保険料の払い込み金額が満期返戻金を下回るケースが多くなっています。
日本で最初の郵便局の学資保険は、1971年に誕生以来、多くの方が利用してきました。ところが、かんぽ生命の場合でも貯蓄性に優れているとは言い切れません。
契約者が30歳男性で、被保険者年齢が0歳、基準保険金額200万円の場合を見てみましょう。
「はじめのかんぽ「大学入学時」の学資金準備コース」では、月額1万450円、全期間(18年間)では225万7200円を払い込みます。しかし、満期時には200万円しか返ってきません(戻り率98.5%)。10歳払込済の場合でも197万5200円払い込み、返ってくるのは200万円なので、戻り率は101.2%です(2024年11月時点)。支払い期間を短くする、特約をつけないなどの方法で返戻金を増やすことはできますが、貯蓄性を活かすなら別の商品を検討した方がいいでしょう。
たとえば、税制で優遇された制度を使い学資を増やしてはいかがでしょうか。さらに2024年からは新NISA制度が始まり、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円の範囲で投資でき、総枠1800万円までの投資で得られた利益は無期限で非課税になるしくみに変わりました。元本割れがあるので投資は怖いと思っている人でも、コツコツ長期間積立しながら運用していくことで収益が安定し、手間をかけず資産を増やすことができるのです。
安全性を求めるのなら、個人向け国債を毎月定額で購入したり、積立式定期を利用したりする選択肢もあります。新しい制度も視野に入れ、選択肢を増やしておきましょう。
昭和の常識2:住宅ローンは繰り上げ返済をする
住宅購入といえば、一生に一度の大イベントで、大きな金額が必要です。住宅ローンは、早く返済すれば総返済額が減るため、借入金利が高い場合には繰り上げ返済をするのが有効です。しかし、繰り上げで返済額を減らすことが必ずしも有利になるとは限りません。
住宅ローンを繰り下げ返済することで手持ち資金がごっそり減ってしまうと、急な支出に対応できません。無理して返済しなくても、借入金利が超低金利のものならこのまま借りても利息の負担は大きくありません。返済しようと思う金額を運用して増やすこともできます。また、借りている金利が高い場合には、金利の低いローンへの借り換えをするのもおすすめです。
昭和の常識3:投資は博打だからしない
投資は、値動きがあって値段が下がることが心配だと思う方もいらっしゃいます。過去に大損を経験した親は、「投資をするな、博打だ」というかもしれません。預金金利が高いときならば、あえて冒険はせず、預金で資産を増やすことは賢明でしょう。昭和の時代には、預貯金の金利が7~8%という時期もあり、10年黙って金融機関に預けているだけで元本が倍になるというときもありました。しかし、超低金利が続く中にあっては、預金で資産を増やしていくことは難しくなっています。節約してお金を貯めるだけでは限界があり、貯蓄から運用する時代に変わってきているのです。投資は博打だ、難しいといって避けていては、お金はいつまでも増やせません。
投資といっても、コツコツ少しずつの長期投資なら、時間や金額を分散できるので、リスクが低く抑えられます。時代背景が変わってきたので、「資産形成の一つとして投資がある」と、お金の常識を広げてみましょう。働くことで得られる収入の他に、資産からの不労収入があると、体力的に厳しくなった高齢期には「ありがたい」と感じられるでしょう。税制優遇のある商品や制度を利用することを検討してはいかがでしょうか。
昭和の常識4:支払いは現金のみ、キャッシュレス決済は使わない
お金の上手な使い方にはそれなりの訓練が必要です。クレジットカードは後払いの借金なので、管理がきちんとできないと使い過ぎてしまい、支払いに困るという場合もあります。ですから借金はダメだと考え、支払いは現金のみに固執する人がいます。
しかし、現在では支払い方もクレジットカードをはじめいろいろな方法があり、ポイントを貯めることで現金と同じように商品やサービスを購入することができるようになりました。家計の固定費をキャッシュレス決済に変えるだけでもかなりのポイントが貯まります。クレジットカードでは使い過ぎてしまう心配がある人は、銀行残高から即時決済するデビットカードを利用する方法もあります。
クレジットカード以外にもQRコード決済、○○PAYなどのキャッシュレス決済など、スマホ一つで支払いができるものが増えてきました。交通機関では、ICカードに現金チャージせずにクレジットカードのタッチ決済で乗車できる区間もあります。その他、買い物の支払いをポイントで支払ったり、貯まったポイントを移行して利用したりもできます。現金払いでは得られない特典が、キャッシュレス決済を使うことで得られて、節約できるのです。
上手にポイントを貯める「ポイ活」も進化しています。ポイントも買い物の金額割引に使うだけなく、ポイント運用で増やすこともできます。
ポイント運用は、疑似的に投資を体験するサービスです。金融機関によっても異なりますが、「アクティブコース」や「バランスコース」などのコースを選ぶだけで、あとはポイントが金融商品などと連動します。ポイント運用は証券口座を開設せずに行うことができるので手軽です。
また、ポイント運用より本格的に投資ができるのがポイント投資です。ポイント投資では、ポイントを国内株式や投資信託などの商品購入代金として充当でき、元手0円からでも投資デビューすることが可能。値上がりした商品を売れば、ポイントではなくお金が増えます。なお、ポイント運用は証券口座の開設が必要です。
金融機関ではATMの引出し手数料の特典を縮小するところも増え、現金を時間外に引き出すと料金がかかり、使いにくくなっています。キャッシュレス決済を上手に利用すれば、引出し手数料と時間の節約にもつながります。
昭和の常識5:買い物はたくさんの店をはしごする
「広告の品」を目当てに、何軒もの店をはしごして買い物をすることが節約の正解だと思っている人がいます。特に物価高なので、1円でも安く買いたい気持ちはよくわかります。確かにお目当ての商品の金額は安く購入できるでしょうが、ついでに買った商品はないでしょうか。買った商品や費やした時間をトータルにとらえて、本当にお得だったかを振り返ってみることが大切です。
たとえば、必要なかったのに思わず買ったもの、安いからと気が大きくなり、まとめ買いをしたものはないでしょうか。また、金額面で数十円のお得のためにガソリン代と時間をかけて購入したということはないでしょうか。戦利品をゲットできたと悦に浸って、購入代金全体が増えてはいないでしょうか。特売品を目当てに買い物に行くときは、いつも以上に気を引き締めておかないと家計の節約にはつながりません。
最近では業務スーパーや大容量の商品を大店舗で売る方式の店も多くなってきました。安く買える店やよく行く店の特徴をつかみ、買い物を減らす努力をする方が、たくさんの店をはしごするより支出を減らすことができます。
月々の予算を決め、お金使わない「ノー買い物デー」を作りましょう。モチベーションを高めるには、買い物に行かなかった日にカレンダーにシールを貼るなど、視覚的に成果がわかる方法も楽しいですよ。
昭和の常識6:中古品を買うのは恥ずかしい
持続可能な開発のためにSDGsが国連総会で採択されたのは2015年。すっかりサスティナブルという言葉も定着しています。経済発展の側面が重視されていた頃は、壊れていなくても新しいものを追い求める風潮がありました。
しかし、不況だけではなく環境への配慮も手伝って、中古品を売り買いできる場所やプラットホームが増えてきました。売る本人は要らない物でも、必要とする人がどこかにいます。売られている商品は新品同様のものもあり、気にならなければ中古を買うという選択肢を選ぶことができるのです。何が何でも新品、家なら新築という固定概念をはずすと、思わぬ節約ができるでしょう。
昭和の常識7:お金の話をするのはみっともない
右肩上がりの経済成長や終身雇用制度が崩れた今日では、年金すら国に頼ることができなくなっています。しかし、日本では今なお、お金の話をすることがタブー視される風潮があります。親はお金のことで子どもを困らせたくない、迷惑をかけたくないと思っているにも関わらず、です。
親も子どもも金融リテラシーを高めることが必須の時代です。お金の話は、上手にお金を道具として使っていくための教育の一環だと考えたほうがよい時代だと認識を改めるべきです。
学校教育では、家庭科の時間に金融教育の内容を取り入れるようになってきました。
老後2000万円問題の「高齢社会における資産形成・管理」の報告書の発表以降、若い人たちの間でも投資に関心を示す人が多くなっています。物価は上がっても、給料は思ったように上がらない。それなら、自分で行動を起こして、いい方向に改善いこうと取り組んでいる人もいます。
お金というと、「節約」や「投資」をイメージすることが多いと思いますが、少子高齢化が進む日本では、制度の改正とともに知識もアップデートしていかなければなりません。
自身がいつまで働くのか、年金はいつからもらうのかなど、「働き方」「年金」「定年前後の給付金」「公的保険制度」「介護制度」など知っておくべきことはたくさんあるのです。
令和のお金の常識に修正しよう
時代背景が変われば、生活様式や行動パターンも変わっていくのが自然な流れです。昭和のように年齢が高くなれば給料が上がっていく年功序列は崩れ、ますます長寿となり老後を過ごす時間が長くなっています。当たり前ですが、超富裕層以外は使えるお金に限りがあり、何かを選ぶには何かを捨てなくてはなりません。
時代の移り変わりが早い今日では、「過去の常識は、今日の非常識」になっているものが多くなっています。もし昭和生まれの親が「親の常識」を押し付けてくるようであれば、アドバイスとして聞き流して、自分の納得がいくやり方に変えていくことが必要でしょう。節約や家計の見直しが叫ばれていますが、親のアドバイスがお金の貯まらない原因になっていたら、軌道修正する必要があるでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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