24/11/02
国民年金の平均月額「5万円」をもらえていない人は結構多い
令和6年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額6万8000円です。これだけでも決して多い額ではありませんが、国民年金がもっと少ない人もいます。今回は、国民年金を月5万円もらえていない人がどれくらいいるのかを説明します。
国民年金は4人に1人が5万円未満
厚生労働省年金局の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金受給権者の平均年金月額は5万6316円です。令和4年度の満額は月額6万4816円であったため、満額よりも8500円少なくなっています。
男女別の平均月額は次のとおりで、女性の方が約4372円少なくなっています。
<国民年金の平均年金月額>
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
年金額の分布をみると、次のようになっています。
<国民年金の年金月額の分布>
厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
国民年金は6万円以上7万円未満の人が約1490万人と最多です。なお、年金は繰り下げによって増えるため、満額よりも多い年金額の人もいます。
一方で、国民年金の月額が5万円未満の人も、約854万人います。割合でいうと全体の25.6%で、4人に1人が国民年金5万円未満です。
女性は3人に1人が国民年金5万円未満
国民年金5万円未満の人数を男女別にみると、男性は約230万人(15.9%)、女性は約624万人(32.9%)となっています。男女別の平均額ではそれほど差がないように見えますが、5万円未満の人は男性が6人に1人であるのに対し、女性は3人に1人です。
女性で国民年金5万円未満の人が多いのは、昭和61年3月まで、専業主婦が任意加入とされていたことが理由と思われます。任意加入だった期間は、受給資格を得るための期間(受給資格期間)としてはカウントされますが、年金額には反映されません。年金をもらえても、少ない額となってしまうのです。
国民年金が少ない人が年金を増やす方法は?
厚生年金に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)は、国民年金に上乗せする厚生年金があります。「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金加入の会社員の平均年金月額(老齢基礎年金含む)は14万3973円です。
しかし、自営業者やフリーランス(第1号被保険者)、専業主婦(第3号被保険者)は国民年金しかありません。年金が月5万円にも届かないようなら、老後の不安が大きくなってしまいます。
年金が少ない国民年金加入者は、以下のような方法で年金を増やすことを考えましょう。
●(1)未納の国民年金保険料を追納
未納になっている国民年金保険料がある場合、2年以内なら納付可能です。過去に免除を受けている場合でも、10年以内なら追納できます。未納の保険料を納めれば、国民年金を満額に近づけられます。
●(2) 60歳以降の任意加入
国民年金の受給資格期間が480ヶ月に満たない場合には、60歳から65歳までの期間も国民年金に任意加入して満額に近づけることができます。
●(3)付加年金に加入
毎月の国民年金保険料に400円を追加して納めることにより、「200円×付加保険料納付月数」を老齢基礎年金に上乗せできます。仮に付加年金に10年加入した場合、月2000円年金額が増えます。
●(4)年金繰り下げ
65歳になっても年金を受け取らずに繰り下げすれば、1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%アップします。75歳まで繰り下げ可能なので、増額率は最大84%となります。本来の年金額が月5万円の場合、繰り下げによって月9.2万円まで増やせます。
●(5)国民年金基金やiDeCoに加入
国民年金基金やiDeCoは、毎月掛金を積み立てることにより、国民年金に上乗せする年金を準備できる制度です。掛金額に上限はありますが、両者を併用することも可能です。
国民年金が少ないなら早めに老後資金対策を
年金が国民年金だけの場合、満額をもらえても生活費として不十分です。国民年金が少ない場合には、まず年金自体を増やせないかを考えてみましょう。さらに、iDeCoなどの制度を活用し、年金に上乗せする老後資金を準備しておくのがおすすめです。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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