22/03/20
2022年改正で大きく変わるiDeCo! 知らなきゃ損する3つの改正ポイント
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、節税しながら老後資金を用意できるお得な制度。利用者も年々増え続けており、注目されています。
2022年、iDeCoの制度が大きく改正され、ますます使いやすくなります。
今回は、iDeCoの3つの改正ポイントを解説します。
そもそも「iDeCo」とは?
日本の年金制度には、公的年金と私的年金の2つがあります。公的年金には、20歳以上60歳未満の方が加入する国民年金と、会社員や公務員が加入する厚生年金があります。
対する私的年金は、公的年金の上乗せ部分を作る制度。iDeCoは、税制優遇を受けながら「自分年金」が作れる、お得な私的年金の1つです。
iDeCoでは、自分で出したお金(掛金)を自分で運用して、その成果を原則60歳以降に一時金または年金の形式で受け取ります(一時金と年金の併用もできます)。
メリットはなんといっても積立時・運用時・受取時の3つのタイミングで税制優遇が受けられることにあります。出したお金は全額所得控除できるので、所得税や住民税が安くなります。運用で生まれた利益には税金がかからないので、効率よくお金が増やせます。そして受け取るときにも控除があるので、税金の負担を減らせます。
2022年、iDeCoの制度が相次いで改正されます。その改正点は大きく3つあります。
iDeCoの改正点1:老齢給付金の受給開始年齢が5年延長(2022年4月から)
iDeCoで運用してきた資産(老齢給付金)は、これまで60歳から70歳までの間に受給を開始する仕組みになっていました。2022年4月からはこれが「60歳から75歳まで」と、5年延長されます。同じく2022年4月から、公的年金の受給開始年齢も75歳まで繰り下げることができるようになります。iDeCoもそれに合わせるというわけです。
iDeCoの資産は、受け取りを開始するまで非課税で運用を続けることができます。今回の5年間の延長によって、非課税で運用できる期間も5年増えるため、よりお金を増やせる可能性があるのがメリットです。
iDeCoの改正点2:iDeCoの加入年齢が5年延長(2022年5月から)
iDeCoに加入して掛金を出せるのは、これまで60歳未満の方となっていました。しかし2022年5月からは、iDeCoの加入年齢が5年延長され、65歳まで掛金を出すことが可能になります(なお、企業型確定拠出年金(企業型DC)も5年延長され、70歳までとなります)。
加入期間が5年間長くなることで、所得控除の節税効果も5年長く受けられます。長期・積立・分散投資の効果も大きくできます。
筆者の元には「50代後半ですが、今から入ってもいいものでしょうか」といったご質問をよくいただきます。今回の改正により加入期間が5年長くできるのですから、気にせず加入していただくのがいいと考えます。
ただし、誰もが60歳以降もiDeCoに加入できるわけではありません。iDeCoに60歳以降も加入できるのは、次のどちらかの人です。
①会社員・公務員として厚生年金に加入して働く人
②任意加入被保険者として国民年金に加入している人
iDeCoは、あくまで「公的年金の上乗せ」の制度です。そのため、国民年金や厚生年金といった公的年金に加入していないと加入できないのです。
会社員・公務員の方(第2号被保険者)は、厚生年金に加入するため、iDeCoにも加入できます。また、任意加入被保険者とは、国民年金保険料の納付期間が40年に満たない場合に、60歳から65歳までの間に自ら国民年金に加入している人のこと。こちらも、国民年金に加入しているので、iDeCoにも加入できます。
しかし、自営業やフリーランスといった第1号被保険者や、専業主婦(夫)の第3号被保険者で、国民年金保険料を40年支払っている場合は、60歳になると国民年金の被保険者ではなくなり、任意加入もできないので、iDeCoに加入できません。
なお、2022年5月までに60歳になる人は、いったん加入者ではなくなりますが、iDeCoの制度が変わる2022年5月以降に再加入の手続きをすれば、再びiDeCoに加入し、65歳になるまで掛金を出して運用を続けることができます。
iDeCoの改正点3:企業型DC加入者もiDeCoに加入しやすくなる(2022年10月から)
現時点でも企業型DCとiDeCoは併用できます。しかし実際に併用するには規約に「企業型DCとiDeCoが併用できる」といった規約が必要です。そうした規約がないために、事実上加入できない人がいました。
しかし、2022年10月からは、規約がなくてもiDeCoに加入できるようになります。
対象者は約750万人いるといわれています。ですから、2022年10月以降、iDeCoの加入者がさらに多くなると見られています。
ただし、企業型DCで「マッチング拠出」を利用している方は注意が必要です。マッチング拠出とiDeCoは併用できないからです。
マッチング拠出とは、会社が出してくれる企業型DCの掛金に加入者が上乗せして掛金を出すことができるしくみです。iDeCoと同じく、上乗せした掛金は全額が所得控除できるので、所得税や住民税が安くできます。
マッチング拠出の掛金は、会社の掛金より多くすることができません。また、会社の掛金とマッチング拠出の掛金の合計は、企業型DCの限度額以内となります。
また、企業型DCとiDeCoを併用する場合、企業型DCとiDeCoの掛金の合計は、企業型DCの限度額以内となります。
●同時加入する際のiDeCoの拠出限度額(企業型DCの上限が5.5万円の場合)
(株)Money&You作成
●同時加入する際のiDeCoの拠出限度額(企業型DCの上限が2.75万円の場合)
(株)Money&You作成
企業型DCの上限額は月5.5万円の人と月2.75万円の人がいます。いずれの場合も、会社の掛金が少ない場合、マッチング拠出で出せる掛金の額も少なくなります。一方、iDeCoであれば、会社の掛金が少なくても上限2万円(または1.2万円)の掛金を出すことができます。
ですから、会社の掛金が少ないうちはマッチング拠出できる金額も少ないので、iDeCoを利用した方が、より多くお金を積み立てることができるのでおすすめです。
また、企業型DCでは、会社が指定した金融機関・商品で運用しますが、iDeCoならば自分の好きな金融機関・商品を選んで運用できるのもメリットです。
一方で、会社の掛金が増えてきたらマッチング拠出に切り替えて、そこまでiDeCoで運用してきた資産を企業型DCに移管して運用することもできます。老後資金を効率よく貯めるためにも、上手な活用方法をぜひ検討してみてください。
まとめ
iDeCoは税制優遇のメリットを生かして老後の自分年金を作れる制度です。2022年の制度改正によって、その税制優遇がより長く受けられるようになりますし、これまで利用しづらかった人も利用できるようになります。
iDeCoの改正ポイントを理解し、効率よく老後資金を貯めていきましょう。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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