24/07/02
1人暮らしで国民年金のみ…年金から天引きされる金額は?
年金受給の手続きを済ませ実際年金を受け取ってみると、思ったより少ない…と感じるのではないでしょうか。実は受け取る年金からさまざまなお金が差し引かれています。年金の額面だけではなく、差し引かれる金額を把握しておくと、将来設計に具体性が増します。 今回は、年金から天引きされるお金について確認していきましょう。
年金から自動的に引かれるお金とは?
老齢年金を受け取る年齢であっても、年金の額面の金額全部をもらえるわけではありません。多くの方は、年金からは社会保険料を納めなければなりません。年に18万円以上の年金を受け取っている人の国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料の3つの社会保険料は、自動的に年金から引かれるしくみになっています。自動的に年金から社会保険料が引かれるときには、市区町村から通知があります。
・国民健康保険料…65歳から75歳になるまで
・後期高齢者医療保険料…75歳から
・介護保険料…65歳から
年金から税金も引かれる
老後の年金も所得の一つとされ、一定額の控除を差し引いて所得税がかかります。所得税も年金から差し引かれ、2037年12月31日までは、2.1%の復興特別所得税も合わせて引かれます。年金額から、公的年金等控除と本人の基礎控除(48万円)を差し引いた部分が所得税の計算の対象です。年金の控除があるため、65歳未満で年金額が年108万円未満、65歳以上で年金額が年158万円未満の人は、所得税がかかりません。なお、同じ年金でも遺族年金と障害年金には所得税がかかりません。
所得税=(年金額-社会保険料控除・各種控除)×税率
また、65歳以上で、遺族年金と障害年金を除いた年金額が年18万円以上あり、特別徴収になっている人は住民税も天引きされます。
一人暮らし国民年金65歳受給開始の場合引かれる税金・社会保険料は?
2024年度の国民年金満額の受給額は、月額6万8000円、年額では81万6000円です。
●所得税
年金以外に所得がない場合で、65歳以上では公的年金等控除(110万円)と基礎控除(48万円)の控除があります。年金から各種控除を差し引くと所得はゼロになります。
81万6000円-110万円-48万円=▲76万4000円 (0円)
●住民税
扶養親族がおらず、前年の合計所得金額が45万円以下の場合、住民税の所得割も均等割りもかからず、非課税になります。このケースでは年金において所得が発生しないので、住民税はかかりません。
●国民健康保険料(東京都世田谷区の場合)
国民健康保険料は、お住まいの自治体で異なります。自治体のHPを見ると、計算方法が掲載されています。
国民健康保険料(年額)=所得割+均等割+平等割+資産割
今回は、東京都世田谷区でシミュレーションしました。均等割額の医療分4万9100円、支援分1万6500円がかかります。合計で年額6万5600円の保険料ですが、前年中の総所得金額が一定の基準以下の場合には、均等割額の軽減措置があります。この場合には7割軽減になるため、年額1万9680円になります。月額では1640円になります。
1万9680円(年額)÷12月=1640円(月額)
●介護保険料(東京都世田谷区の場合)
介護保険料もお住まいの自治体で異なります。世田谷区では、18段階に保険料が分かれています。このケースでは、本人および世帯全員が住民税非課税で、年金プラス合計所得金額が80万円を超え120万円以下なので第2段階となり、年額3万6550円になります。
3万6550円(年額)÷12月=約3050円(月額)
●国民年金(65歳受給開始)の天引き額
1640円(国民健康保険料)+3050円(介護保険料)=4690円
もし国民年金を70歳まで繰り下げたらどうなる?
年金は受け取る時期によって、年金額が変わります。66歳以後に請求すれば割増があり、国民年金を70歳まで繰り下げると42%増になります。
●繰下げ時給をした場合の計算式
0.7%×65歳になった月から請求した月の前月までの月数=年金の増額率
1人暮らしで国民年金のみで年金を5年繰り下げた場合には、年金額は月額9万6560円、年額115万8720円になります。
●所得税・住民税
1年間の年金額から70歳の場合の公的年金等控除(110万円)と基礎控除(48万円)を差し引くと所得はゼロになります。
115万8720円-110万円-48万円=▲42万1280円(0円)
住民税は合計所得金額がゼロなので、非課税です。
●国民健康保険料(東京都世田谷区の場合)
先ほどの年金年額81万6000円の場合の計算と同様に、年額6万5600円の保険料が7割軽減されて、年額1万9680円になります。月額では1640円です。
●介護保険料(東京都世田谷区の場合)
住民税非課税世帯で、年金と合計所得金額の合計が80万円を超え120万円以下なので第2段階になり、年額3万6550円です。月額ではおよそ3050円になります。
●国民年金(70歳受給開始)の天引き額
1640円(国民健康保険料)+3050円(介護保険料)=4690円
国民年金だけを受給する場合には、70歳まで繰り下げても国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料は、65歳受給開始と変わらないという結果になりました。
手取り額では、65歳受給開始では月額6万3310円となり、70歳受給開始では9万1870円になります。
65歳 6万8000円-1640円-3050円=6万3310円
70歳 9万6560円-1640円-3050円=9万1870円
なお、71歳まで繰り下げると年金の割増率が50.4%になり、年額122万7264円の年金がもらえます。この場合、年金額が控除額より少ないので、所得税も住民税もかかりません。国民健康保険料は、65歳受給の場合と同じ保険料になります。しかし、介護保険料は第3段階となり、年額4万8984円で月額およそ4080円になります。
手取りベースでは、年金月額10万2272円から1640円と4080円を合わせた社会保険料が差し引かれるので、手取り9万6552円になります。
71歳 10万2272円-1640円-4080円=9万6552円
このように年金を繰り下げする場合には、社会保険料の負担が増えることもありますし、場合によっては所得税や住民税を納める場合も出てきます。今回は国民年金のみという前提でしたが、厚生年金もある場合には、その金額も大きくなるでしょう。 社会保険料は、全国一律ではありません。年金から何がどれくらい引かれて、手取りがいくらになるのか、お住まいの自治体に当てはめて計算しておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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