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17/05/08

相続・税金・年金

給与明細の見方を解説 控除項目に注目しよう

会社員であれば毎月勤務先から受け取る給与明細。でも、差引支給額の欄だけ見て、「今月は多いな、少ないな」と感じてそれで終わり、という人が多いのではないでしょうか。
給与明細には、家計管理や貯蓄、そして万が一のときや、将来受け取る年金の額にも影響を与える、重要な情報がたくさん載っています。
今回は、給与明細の見方と意識してほしい点をお話しします。

画像:筆者作成

月によって変動する「変動給」は全額貯金を心がける

給料明細は大きく「勤怠」「支給」「控除」の3つのブロックに分かれています。その中の支給の欄を見てみましょう。
毎月必ず一定額でもらえる項目(固定給)と、月によって変動する項目(変動給)に分け、支給額合計に対する変動給の割合を把握します。「変動給÷支給額合計」で計算できます。毎月の変動給の変動幅が多いと、月によって収入が大きく変わってきます。変動給が多く収入が多いときには、気持ちが大きくなってお金を使ってしまいがちです。しかしそれでは、収入が少ない月が続いた場合、家計が成り立たなくなってしまいます。変動給分はすべて貯蓄にまわせるような家計管理を心掛けたいものです。

また固定給や変動給、その他の手当の額について、前月との変化を見逃さないようにします。なぜ増えたのか減ったのか、それを意識するだけで働く意欲が違ってくるからです。

「控除」の項目に注目 会社の制度をフル活用する

貯蓄をする上でも給与明細は役立ちます。給与明細の中の「控除」ブロックに注目しましょう。
控除の項目には勤務先が行っている制度が載っています。団体保険料、持株制度、財形貯蓄、確定拠出年金本人負担分など、会社の制度を優先的に活用してください。
なぜなら、給与天引きなので、自動的に、先取りで貯蓄されるため、知らない間にお金が貯まっていくからです。
多くの人は差引支給額、実際に口座に振り込まれる金額を基準にして、毎月の生活を考えます。少なかったら節約に努めたり、収入を増やそうと努力したりします。天引きで貯まったお金には意識が働いていないので、知らず知らずにお金が貯まっていくのです。



社会保険料は保険と将来への備え

「控除」欄にある「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」はまとめて「社会保険料」と言われ、保険ということば通り、万一のときの補てんしてくれるものです。国の制度内容は民間の保険よりも保障が手厚くなっています。

健康保険

健康保険料を納めることによって、病気やけがによる治療費の7割補てんだけでなく、全く労働できずに給料の支払いがなかったときには「傷病手当金」といってお給料の3分の2が最長1年6カ月にわたって支給されます。
また、出産しても継続して働きたいという女性には「出産手当金」の制度があり、出産日以前42日から出産日後56日までの期間、傷病手当金と同じく最高お給料の3分の2の補てんがあります。

介護保険

介護保険料は基本的には、65歳以降介護を受ける必要がある状態になったときに、市町村の認定を受ければ1割の自己負担で、介護サービスを受けることができます。40歳以上の人に加入義務があるので、40歳になった月に突然保険料が発生する、という印象になるかもしれません。

厚生年金

厚生年金保険料を納めることによって、自分が障害状態になってしまったときには、生活費として障害年金が支給され、亡くなったときには、遺族の生活費の補てんとして遺族厚生年金が支給されます。
そして、何よりも重要なのは、老後資金としての年金です。国民年金の上乗せとして厚生年金があるので、厚生年金に加入していた場合は、老後の年金の額は国民年金のみよりも確実に多くなります。
国民年金に40年間全期間保険料納付すると、月額約6万5000円ですが、厚生年金に同じく40年間(平均月収300万円)すれば、上乗せとしての厚生年金が月額6万6000円で合計13万円と倍になります。
このように、厚生年金に長期間加入している方とそうでない方では、年金額には大きな差があり、老後資金の安心感にも差が出るのです。

雇用保険

雇用保険料を納めることによって、失業したときの当面の生活費や、再就職のための教育に対して費用の一部補助を受けることができます。

社会保険はいざというときに大変役立つ制度です。補償の内容がわかれば、無駄な民間保険への加入を避けることができます。そして、これらの保険料については、勤務先も一定の金額を負担してくれています。
転職などで勤務先を選ぶときに、社会保険制度が整備されていることを選択肢のひとつとするのも良いでしょう。
社会保険料が高いと不満をいいながら、民間保険に多額の保険料を払っている方もあるようですが、もう少し社会保険制度について理解を深めてほしいと思います。

このように、給与明細は振込額を知るためだけのものではありません。情報を読み解き理解して、現在の家計に、そして将来に自分に役立てていきましょう!

小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター

社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。

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