23/10/25
平均給与は2年連続増加も…給与が減っている人はどんな職業?
国税庁が毎年調査を行っている「民間給与実態統計調査」(2022年分)によると、民間企業の平均給与額は2年連続で上昇していることがわかりました。しかし一部の業種では平均給与額が減少しており、職業によって明暗が分かれたようです。今回は、国税庁が発表した調査結果をもとに平均給与がどうなっているのか、解説します。
平均給与は2年連続で増加
はじめに、全体の平均給与額の推移を見てみましょう。
●平均給与の推移
国税庁「民間給与実態統計調査」より
上のグラフのとおり、2022年(令和4年)分の民間企業で働く会社員やパート従業員の平均給与は458万円でした。2020年(令和2年)は435万円、2021年(令和3年)は446万円ですから、2年連続で上昇していることがわかります。2021年から2022年にかけて前年比で2.7%上昇しており、2014年(平成26年)以降もっとも高い平均給与額となりました。
今回の調査で平均給与が上昇した原因としては、コロナ禍からの回復や、人材不足による賃金上昇の影響があるとみられています。
では、ボーナスはどうでしょうか。同様に全体のデータを見てみましょう。
●平均賞与の推移
国税庁「民間給与実態統計調査」より
平均賞与額も2年連続で上昇し、2022年(令和4年)は72万円でした。こちらも、2014年(平成26年)以降もっとも高い額となりました。
平均給与を業種別に見ると?
2年連続で上昇した平均給与額ですが、果たしてすべての業種で上がったのでしょうか。
●業種別の平均給与
国税庁「民間給与実態統計調査」より
2022年の調査で、もっとも平均給与が高かった業種は「電気・ガス・熱供給・水道業」の747万円(平均給与と平均賞与の合計額)でした。次に「金融業・保険業」の656万円、「情報通信業」の632万円と続きます。
一方、もっとも平均給与が低かったのは「宿泊業、飲食サービス業」の268万円でした。ただし2022年はコロナ禍からの回復途中だったため、数値が低く出た可能性があります。2023年に入ってからは国内外に旅行する方が増え、外食需要もコロナ禍以前の状態に戻りつつあります。観光や飲食関係の業種では消費活動が活発になっているため、2023年以降は給与が上昇するかもしれません。
業種別平均給与の推移
では、2021年と2022年の平均給与を業種別に比較したらどうなるでしょうか。2021年と2022年の業種別平均給与を比較して、増減率の順番に並べたのが次の表です。
●業種別平均給与の推移表
国税庁「民間給与実態統計調査」より筆者作成
2021年から2022年にかけて、平均給与額がもっとも上昇したのは「運輸業、郵便業」で48万円。ついで「不動産業、物品賃貸業」が30万円、「農林水産、鉱業」が28万円の上昇となっています。増減率の面でも、これらが増加の上位3業種となります。
反対に、平均給与額がもっとも減少したのは「電気、ガス、熱供給、水道業」で41万円。ついで「複合サービス事業」では28万円、「金融業、保険業」では25万円減少しています。増減率で見ると、もっとも大きく減少しているのは「複合サービス事業」となっています。
平均給与額が高かった「電気、ガス、熱供給、水道業」と、次点の「金融業、保険業」は、どちらも前年より減少しました。このように、民間企業全体の平均給与額は2年連続で上昇しているものの、減少した業種もあることがわかります。
2024年以降も平均給与は上がる?注目の業種は
2年続けて民間企業の平均給与額が上昇しましたが、今後はどうなるのでしょうか。各業種の動向が気になるところです。
たとえば、今回の調査で平均給与額が3番目に多かった情報通信業界は、AIの開発が活発化していることや、SaaSの市場規模が拡大中であることから、今後も給与額の上昇が続きそうです。
また運輸業・郵便業は、今後の変化に注目が集まっています。2024年4月から適用される働き方改革関連法によって、ドライバーの時間外労働の上限が960時間となるためです。いわゆる物流の2024年問題によって、時間外労働が制限されるため収入が減少するかもしれません。物流に関わる運輸業や郵便業の平均給与は、今後大きな変動がありそうです。
そのほかに注目が集まっているのは、金融関連の業種でしょう。2024年1月にはNISA制度が拡充され「新NISA」が始まります。また、新札も同年7月前半に発行される予定です。今回の調査では平均給与額が下がった金融業ですが、新NISAや新札発行をきっかけに給与額が変動する可能性があるかもしれません。
2022年の民間企業の平均給与は2年連続で上昇していますが、一部の業種では下がっていることを紹介しました。物価上昇も進み、生活がいっそう厳しい時代ですから、コロナ禍からの回復が進む2023年以降も平均給与が増え続けることに期待したいところです。
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原田 文香 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
公務員や会社員を経て、2021年よりライターとして活動。金融関連の記事執筆を担当した際に、豊かに生きるためには『正しいお金の知識が必要である』と強く実感する。正しいお金の知識を、世のなかに広く伝えたいと思い、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。多くの方が安心して豊かに生きられるように、生活に密着したお金の知識をわかりやすく伝えます。
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