23/09/27
積立投資で1000万円を貯めるシミュレーション 達成に向けて守るべき8つのルール
低金利が続く日本では、預金だけで1000万円を目指すよりも、株式や債券といったリスク資産にも投資をしながら貯める方が効率的です。貯金ゼロの人が、いきなり投資を始めるのは危険ですが、投資信託などの商品を、一定のタイミングで一定の金額買い続ける積立投資は、少額から始めることができます。貯金ゼロからの積立投資で1000万円を貯めることは可能なのか。実現に向けて守るべき8つのルールを紹介します。
1000万円を貯めるのに必要な毎月の積立額は?
目標金額に必要な毎月の積立金額は、金融庁の「資産運用シミュレーション」を用いて、簡単に試算できます。
●目標金額1000万円に向けた毎月の積立金額
金融庁「資産運用シミュレーション」より筆者作成
想定利回りが7%(年率)のケースでは、毎月1万円以下の積立額で30年後に1000万円を貯めることができる試算ですが、「7%なんて不可能じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
長期の積立投資ではリターンが安定する
金融庁が公表しているデータによると、1985年以降に毎月同額ずつ国内外の株式と債券を買い付けた場合、保有期間5年におけるリターンの振れ幅(年率)が−8%から14%であるのに対して、20年の保有期間では、2%から8%に収斂されています。
●国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布
金融庁「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ」(第1回)事務局説明資料より
つまり、積立期間が長いほど、5%や7%の利回りは決して非現実的な数字ではないのです。
2023年9月時点で、メガバンクの10年定期預金の金利は0.002%(年率・税引前)。国内外の株式や債券などへの積立投資によって、教育資金や老後資金といった少し先に必要なお金を、効率的に用意することが期待できます。
「積立投資の準備」で守る3つのルール
貯金ゼロからいきなり積立投資を行うと、途中で断念せざるを得なくなるかもしれないので準備が非常に大切です。次の3つのルールを必ず守りましょう。
●積立投資のルール①:最低でも6ヶ月分の生活費を用意する
「命金には手をつけるな」という格言が、投資の世界にはあります。
冷静な判断には心の余裕が欠かせません。生活に最低限必要なお金を、元本割れのリスクが伴う投資に充てないことは鉄則です。
世帯の状況にもよりますが、最低でも6ヶ月分の生活費を確保したうえで、積立投資を始めましょう。積立投資は家計を見直すチャンスでもあります。
●積立投資のルール②:投資の目的と目標額を設定する
積立投資は、積立期間が長いほど、安定したリターンが期待できます。逆に言うと、短期的には積立投資の効果をあまり実感できないかもしれません。
そのため、「子どもの10年後の教育資金」や「自分たちの20年後の老後資金」など、積立投資の目的を明確にしておくことが、モチベーションを維持するためにも大切です。
期間と目標金額が定まったら、シミュレーションサイトも使って、毎月の積立額の目安を調べましょう。
貯金ゼロの人は生活費の確保が優先です。ネット証券では100円から投資信託の積立を始められるので、徐々に積立額を増やしていくことをおすすめします。
●積立投資のルール③:投資のリスクを理解する
株式や債券は、定期預金などの元本確保型商品と異なり、元本が変動するリスクを避けることはできません。したがって、投資を始める前には、その変動リスク(特にマイナス方向)をどの程度まで許容できるかの把握が必要です。
リスク許容度は、ご自身の収入や資産、年齢、投資経験、リスクに対する考え方や目的などによって総合的に決まります。
貯金ゼロの人は、短期的には許容できるリスクは低いため、例えば個別銘柄への株式投資は望ましくありません。生活費の余裕をある程度確保してから、長期の積立投資で徐々にリスクを取った運用をしていきましょう。
「積立投資をするとき」に守る5つのルール
ここでは、投資信託の積立投資で守るべき5つのルールを紹介します。
●積立投資のルール④:複数の資産を組み合わせる
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があります。卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴが壊れたら全ての卵が割れてしまいますが、複数のカゴに分けておけば安心です。
積立投資でも、異なる値動きをする複数の資産や銘柄を組み合わせて、元本が変動するリスクを安定させる必要があります。
【3つの分散投資】
金融庁「NISAを始める前に」より
●積立投資のルール⑤:世界中に分散投資をする
積立投資では投資対象地域の分散も欠かせません。
1つの国や地域に依存していると、その国や地域に固有のリスクが顕在化したときに、値動きが大きく変動することになります。
例えば、株式投資信託の場合、全世界株式の投資信託1本で、銘柄と地域を広く分散させることも可能です。
●積立投資のルール⑥:毎月一定額の投資を継続する(積立をやめない)
積立投資は、一定周期に一定額の投資を継続することで、購入単価を平準化させる「ドルコスト平均法」に基づいた投資手法です。
一般的には、積立期間が長くなるほど購入単価が安定し、時間のリスクを分散することができます。短期的な相場の変動に一喜一憂して、自動積立の解除や売却をしないようにしましょう。資産を「育てている」という意識が、積立投資では大切です。
●積立投資のルール⑦:非課税制度を活用する
積立投資のリターンを最大化するためには、税金や手数料といったコストを最小限に抑えることが大切です。
通常、投資信託などの金融商品から発生する利益には、20.315%の税金がかかりますが、NISAを活用すると、NISA口座で保有している商品から発生する利益に税金がかかりません。また、つみたてNISA(2024年からは新NISAの「つみたて投資枠」)の投資対象商品は、購入手数料が無料のものに限られている点も押さえておきましょう。
老後資金の準備を積立の目的としている場合には、NISA同様に運用益が非課税になるiDeCo(個人型確定拠出年金)の活用もおすすめです。
●積立投資のルール:⑧収益は再投資する
投資信託では、運用成績に応じて分配金が発生する場合があります。
分配金の受取は、投資信託の購入時に「受取コース」か「再投資コース」を選ぶことができますが、長期の積立投資なら「再投資コース」がおすすめです。その理由は、再投資によって増えた投資額が次の収益を生み出し、資産を指数関数的に成長させる複利効果が期待できるからです。
なお、運用成績が好調でも、分配をせずに再投資を続ける投資信託も多くあるので、購入前は過去の分配実績も確認しておきましょう。分配実績が少ない投資信託の方が、長期の積立投資には向いています。
まとめ
今回は、貯金ゼロからの積立投資で守るべき8つのルールを紹介しました。難しいルールは何一つありません。コツコツと積立が継続できれば、積立投資で1000万円を貯めることは十分に期待できます。しかし、貯金がゼロのまま投資を始めるのは危険です。すぐに家計を見直し、最低限の生活費を確保した上で、少額から明るい未来への一歩を踏み出しましょう。
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神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker
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