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23/08/24

資産運用・経済

定年後に毎月不労所得を生み出す、新NISA高配当株投資

定年後に毎月不労所得を生み出す、新NISA高配当株投資

就職してから退職するまでが資産形成期。退職後は、資産取り崩し期に変わります。
ただ、資産の取り崩しは精神的にやりにくいものです。資産を取り崩して「長生きし続けてお金がなくなったらどうしよう」と不安になるかもしれません。
かといって、人間誰しもいつまで生きるかはわからない中で、お金をたくさん残しても後悔することでしょう。死んだ時が一番お金持ちでは意味がありません。

資産を取り崩すのが不安なら、資産の一部をキャッシュフローがある資産に変えて保有するという戦略はどうでしょうか。公的年金とは別に入ってくる不労所得があったら、心理的な不安も減り、定年後の大きな味方になります。
今回はそんな、定年後に毎月不労所得を生み出す、新NISA高配当株投資を考えてみたいと思います。

2024年からの新NISAは定年世代でも使いやすい

投資の運用益に税金がかからなくなるNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)の制度が、2024年から新しくなります。新NISAは、旧NISAのつみたてNISAと一般NISAを合わせたような制度です。

●2024年からの新NISA 新旧比較

(株)Money&You作成

新NISAではこれまであった非課税期間が無制限になったので、いつまでも非課税で資産を持ち続けることができます。そのうえ、新NISAの年間投資枠はつみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円、合わせて年360万円までと大幅に拡大しているので、まとまった金額を投資することができます。生涯の投資上限は1800万円までですが、新NISAの資産を売却した場合には翌年以降に売却枠を再利用できます。

新NISAならば、高配当株から得られる配当金も非課税です。定年世代でも高配当株に投資して不労所得を手にしたり、運用しながら取り崩したりするのに使いやすい制度になったといえます。

高配当株とは?増配株とは?

高配当株とは、株価に占める配当金の割合(配当利回り)が高い銘柄のことです。「配当利回りがいくら以上だと高配当株」という明確な基準はありませんが、3〜4%を超えてくると高配当といわれます。配当金は、会社の事業が順調なときに、株を持っている株主に支払われる利益の一部です。

たとえば、日本株と米国株の高配当株上位10銘柄は、次のとおりです。

●日本株と米国株の高配当株上位10銘柄

(株)Money&You作成

企業名になじみのないものもあると思いましたので、参考までに業種の情報を入れておきました。業種がわかればだいたいどんな会社かわかるでしょう。日本株は建設業・食料品・輸送用機器などが多くなっていますね。米国株は日用品などの一般消費財やIT通信にかかる企業が多くなっています。配当は通常、日本株であれば年 1〜2回、米国株だと年4回もらえます。

また、高配当株とともに確認したいのが、増配株です。増配株は配当金の金額を増やしてくれる銘柄のこと。特に、長年にわたって毎年配当金の金額を増やしている銘柄を連続増配株といいます。増配によって配当が増えるだけでなく、株価もさらなる上昇が見込めます。そのうえ、増配株は業績のよい銘柄が多いため、市場全体が暴落している時にも強いという特徴もあります。

日本株・米国株の連続増配株上位10銘柄は、次のとおりです。

●日本株・米国株の連続増配株上位10銘柄

(株)Money&You作成

日本の連続増配株として有名なのは花王(4452)で、33年と独走しています。これでも十分長いですが、米国はさらに長く、アメリカン・ステイツ・ウォーターの69年を筆頭に、60年を超えて増配している会社が多くあります。
業種で見ると、日本株は化学・金融・情報通信が多くなっています。対する米国株は公益事業・一般消費財・工業が多くなっています。インフラと言われているような業種は安定しているので、高配当株や増配株になりやすい特徴があります。

市場はときどき暴落します。ITバブルの崩壊、リーマンショック、コロナショックといったものを乗り越えて連続増配しているわけですから、さすがの一言です。
最近、日本株は株主優待を廃止して配当に力を入れる会社が出てきていますので、今後は高配当株・増配株はますます人気になっていくかもしれません。

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「配当利回りが高い銘柄=良い銘柄」とは限らない

ただし、配当利回りが高い銘柄に飛びつくのは危険です。配当利回りの計算式には「1株あたりの配当金÷株価×100」と、「株価」が入っています。つまり、配当利回りが高い銘柄の中には、「株価が下がって配当利回りが高くなっている」銘柄が入っている可能性もあるのです。

株価が下がる理由はさまざまですが、個別要因で大きいのは業績悪化です。こうした企業の場合、いずれ配当を減らす「減配」や配当をなくす「無配」を行う可能性があります。

配当が減ると、株価もさらに下がってしまいます。ですから、高配当株・連続増配株を探すときには、企業が好業績かどうか、財務は健全かどうかを確認する必要があります。

高配当株・増配株選びの 5つのチェックポイント

高配当株・増配株を選ぶときのチェックポイントは、次のとおりです。

●高配当株・増配株のチェックポイント①:売上高や営業利益が大きいか

売上高は会社の活動で得られた収入の合計額です。売上から、その売上を得るためにかかったさまざまな費用を引いた残りが会社の利益となりますが、まずはしっかりと売上があがっているのか、年々右肩上がりになっているかをチェックします。また、本業であげた利益を表す営業利益も一緒にチェック。過去5年間と今後2年間の予測が伸び続けている会社が有望です。

●高配当株・増配株のチェックポイント②:営業利益率・経常利益率が高い

営業利益率は売上に占める本業で稼いだ利益の割合、経常利益率は営業利益からさらに営業外収益・費用を差し引きした、会社の収益力を測る指標です。もちろん、営業利益率・経常利益率が高いに越したことはありません。同じ業種の他社と比べて高いなら、利益を稼ぎ出す力が強いと判断できます。

●高配当株・増配株のチェックポイント③:1株あたり利益(EPS)が年々増加している

1株あたり利益とは、会社の最終的な利益である当期純利益を発行済み株式数で割ったもの。1株あたり利益が大きく、年々増えている会社は堅実に成長していることを表します。

●高配当株・増配株のチェックポイント④:借金が少ないか

会社の成長には、借金が欠かせません。ただ、適度な設備投資のための借金などはもちろん構わないのですが、度を超えた借金があると財務的に苦しくなってしまいます。そこで、会社にあるお金のうち、返さなくていい部分(自己資本)の割合を示す「自己資本比率」をチェックしましょう。50%以上だと安全性が高いと判断されます。
また、会社の有利子負債(利子をつけて返さなければならないお金)は少ないほど健全。配当金は会社が蓄えている利益剰余金から出しますので、利益剰余金が多いことも注目ポイントです。

●高配当株・増配株のチェックポイント⑤:不況に強い業種か

高配当投資では、業績や株価が比較的安定している、不況に強い業種の銘柄を選びましょう。不況に強い業種には、食品、医薬品、電力・ガス、鉄道、通信などが該当します。いずれも、たとえ不況になってもなくてはならないものなので、不況に強いというわけです。そうした業種の好業績銘柄に投資しておけば、配当金も安定して得られる期待ができます。

リスクと上手く付き合うには「分散投資」が必須

上の5つのポイントに合う業種や銘柄に集中投資していい、というわけではありません。投資先の業種の分散も大切です。
同じような業種の銘柄は、同じような値動きをする傾向にあります。もしも、投資先の銘柄の業種が偏っていたら、別の業種の銘柄を選ぶようにすると、仮にある業種が値下がりしても他の業種の値上がりでカバーする「分散投資」の効果が得られます。

株式市場で注目を浴びる銘柄は、景気や金利の動向に応じて変わります。景気が弱いときには、前述のとおり業績が景気に左右されない不況に強い銘柄が好まれます。それに対して景気がよくなるときにはハイテク株、金融株、工業株、消費循環株(自動車や宝飾品などの高級品)、素材株などが人気になるというわけです。

●景気・金利と注目される業種の関係

(株)Money&You作成

景気が循環するなかで、注目される業種も変わりますので、うまくバランスを取っておくことが大切です。

また、高配当株・連続増配株に投資する方法は、個別株投資だけではありません。ETF(上場投資信託)の中には、米国の高配当株・連続増配株にまとめて投資できるものがあります。たとえば、次のようなETFです。

●主な高配当株・増配株ETF

(株)Money&You作成

高配当株ETFを3銘柄、増配株ETFを2銘柄紹介しています。
ETFは1本で複数の投資先に投資するのと同じ効果が得られるので、リスクの分散に役立ちます。また、保有している間にかかる手数料(経費率)もとても安くなっています。

まとめ

資産の一部を高配当株・増配株に変えて保有する戦略をお伝えしてきました。高配当株・増配株を活用すると、資産取り崩しの心理的な負担も減り、定年後のお金の大きな味方になります。高配当株・増配株に投資していれば、配当金を年金のように受け取れます。年金には税金や社会保険料がかかりますが、新NISAを使って高配当株・増配株に投資していれば、非課税で配当金が受け取れるのは、大きなポイントです。

ただ、配当利回りの高さや増配の実績だけで飛びつくのはNG。5つのチェックポイントを踏まえて銘柄を選び、リスクを減らすために業種分散・銘柄分散を行いましょう。
ETFを活用すれば、分散投資が手軽にできます。

株やETFに投資するなら、2024年から始まる新NISAの成長投資枠を活用しましょう。新NISAは無期限で、税金がかからずに配当金を手に入れ続けることができます。さらにNISAは自由に引き出し可能なので、資産の取り崩しにも相性がいいのがメリットです。

ただし、新NISAで米国株・米国ETFに投資した場合、運用益にかかる国内の税金はゼロにできますが、米国内では配当金に10%の税金が徴収されてしまいます。NISAを利用してもゼロにはできない点には注意しましょう。

長生き時代の今、資産を取り崩していくだけだと心穏やかでいられません。高配当株・増配株のような、キャッシュフローを得られる資産を保有しておくとよいでしょう。

今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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