23/03/31
65歳から100歳まで支出はいくらかかる?年金ではいくら足りないのか
「人生100年時代」と言われるほどの長寿国である日本。長く生きられることは喜ばしいものですが、少子高齢化に伴い老後の資金不足は深刻化しています。今回は100歳まで生きた場合の支出額と、老後に不足する金額をシミュレーションします。
どのくらい老後資金が足りなくなるか早いうちに知っておけば、対策も取りやすいでしょう。老後のお金に不安がある方はぜひ参考にしてみてください。
100歳まで生きた場合にかかる老後生活費はいくら?
生命保険文化センター「2022年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人世帯の最低日常生活費は月23.2万円、ゆとりある老後生活費は月37.9万円となっています。老後の生活費をこの中間の月30万円とし、老後期間を65歳から100歳までの35年間と仮定すると、合計支出額は1億2600万円です。
これは単純に月30万円に35年(420か月)をかけた金額ですが、時間の経過とともに物価は上昇するものです。昨今の物価高でそのことを実感されている方は少なくないでしょう。例えば、35年かけて物価が25%上昇した場合、老後の合計支出額は1億4521万円まで膨れ上がります。
●老後の合計支出額(35年かけて物価が25%上昇した場合の試算)
筆者作成
金額が大きすぎてびっくりするかもしれませんが、もちろんこの金額すべてを自分で準備する必要はありません。「老後の合計支出額」から原則65歳以降にもらえる「老齢年金の総額」を引いた金額が年金だけでは不足する金額(自ら準備する必要がある金額)となります。
つまり、老後に不足する金額の計算式は
老後に不足する金額 = 老後の合計支出額 - 老齢年金の総額
となります。
2000万円では足りないかも?老後の不足金額をシミュレーション
2019年に金融庁が発表した「老後2000万円問題」が話題になって久しいですが、これは平均的な高齢者世帯の実収入と実支出の差が月5.5万円程度あり、その不足が65歳から95歳の30年間続くと仮定した場合の金額です。したがって、老後の支出額に物価上昇は加味されていません。また収入や支出の状況、何歳まで生きるかによってもその金額は変わってきます。
前述のように老後35年間で物価が25%上昇した場合、どのくらい老後資金が不足するのか、上の式に当てはめてシミュレーションしてみましょう。なお年金額も物価上昇に伴い高くなりますが、物価上昇率と同じように増えるわけではないので、ここでは支出のみ物価上昇を加味するものとします。
【前提】
家族構成:夫婦2人世帯
年齢:ともに65歳
職業:ともに無職(年金受給者)
老後期間:65歳~100歳(35年間)
支出額:月30万円、35年間の合計1億4521万円(物価上昇率25%)
年金額(収入額):年321.6万円(夫 月16.3万円、妻 月10.5万円)※物価上昇および税金は考慮しない
●老後に不足する金額
= 老後の合計支出額 - 老齢年金の総額
= 1億4521万円 - (321.6万円 × 35年間)
= 1億4521万円 - 1億1256万円
= 3265万円
今回のケースでは、年金とは別に3265万円もの老後資金が不足する結果となりました。物価上昇を加味して考えると、年金だけでは不足する金額が増えることがわかります。
ただし上記の金額はあくまでも一例で、年金額を含めた収入や支出の状況によって老後に不足する金額は異なります。
自分の年金額を知りたい場合は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や、日本年金機構が公開しているウェブサイト「ねんきんネット」で確認しましょう。
支出についてもその人の家族構成やライフスタイルによって変わってきます。老後の支出がどの程度か見当がつかない場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも一案です。
まとめ
日本では、リタイア後の期間が延びることで老後資金が不足する「長生きリスク」が問題になっています。まずは今回紹介した老後の生活費の目安や、老後に不足する金額の考え方を参考に、自分はどのくらい老後資金が不足しそうかざっくり計算してみましょう。支出に関しては、物価上昇を見越しておくとゆとりを持ったマネープランが立てられますよ。
不足する金額の見当がついたら、その金額に向けて今のうちから老後資金の準備を始めることをおすすめします。iDeCoやつみたてNISAなど、老後資金の準備に適した優遇制度も活用しながら長生きリスクに備えましょう。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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