23/01/10
係長・課長・部長…昇進すると給与はいくら増える?年収1000万円超の割合は
企業で働く会社員にとって「年収1000万円超」は目標額のひとつであり、かつ、なかなか超えられない壁でもあります。では一体、会社内でどのあたりまで昇進すれば年収1000万円が期待できるのでしょうか。それは果たして可能なのでしょうか。そして年収をUPさせるために、私たちは今後どのように働いていけばよいのでしょうか。
今回は役職ごとの平均年収や実際に役職に就ける割合、さらに年収1000万円超もらっている人の割合を統計データからみていきます。今後の働き方の参考にしてみてください。
部長クラスになっても、なかなか1000万円に届かない
役職に就くといくら年収がもらえるのでしょうか?厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考に、従業員が10人以上の規模の会社の役職別平均年収をみてみましょう。
●役職別平均年収
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成)
上表のとおり役職に就きその職位が上がるほど、年収も上がっていることが分かります。非役職と部長級の平均年収の差は男性で約463万円、女性で約372万円と、いずれも2倍以上です。
一方で部長級の年収は男性で約903万円、女性で約734万円。残念ながら部長級でもなかなか年収1000万円には届かないのが一般的のようです。ただし、このデータはあくまでも平均値なので、企業・業種・職種内容などによりその金額は大きく異なります。勤続年数が短い20-30代でも年収1000万円を超える人は一定数います。
役職に就ける割合はどれくらい?
それでは次に、どのくらいの人が役職に就けているのか、その割合を学歴別にみていきましょう。
●役職につける人の割合
(厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成)
部長になれる年齢は大学・大学院卒、高卒ともに50代以降になると比率が高まります。このことから、勤続年数が長くなるほど昇進する機会があることが分かります。さらに55-59歳以降は大学・大学院卒の比率が20%前後ですが、一方で高卒はわずか5~6%程度です。
また、課長になれる年齢は40代から比率が上がり、大学・大学院卒では50-54歳が最も高く25.2%となっています。高卒では最も比率が高い50-54歳でも9.3%と、役職に就ける割合は学歴による差があることが明らかになっています。
ただしいずれの年齢層・学歴でもその割合は30%未満ということを考えると、大学・大学院卒だとしても昇進は狭き門であるといえるでしょう。
1000万円もらっている人の割合はどのくらい?
昇進の話からは少し外れますが、実際に年収1000万円の給与を手にしている人はどのくらいいるのでしょうか。1年を通じて勤務した給与所得者5270万人について、給与階級別の割合をみてみましょう。
●給与階級別の人数と割合
(国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」をもとに筆者作成)
1000万円超の給与をもらっている人の比率は男性で全体の7.6%。女性はさらに低くわずか1.2%です。こちらも昇進以上にかなり狭き門であることが窺えます。
年収をUPするにはどう働けばいい?
会社内で昇進するのも、年収をUPさせるのも難しいとなると、一体どうやってお金を増やしていけばいいのでしょうか。
例えば、以下のような選択肢が挙げられます。
●1.副業をはじめる
働き方の多様化が進む昨今では、副業をはじめる人が増えています。ランサーズ株式会社の「フリーランス実態調査 2021」によると、副業・複業ワーカーは812万人と、昨年より100万人ほど増加。新型コロナウイルスの影響で広まった在宅ワークの影響で通勤時間がなくなった分、副業する時間ができたことが要因と考えられます。
また、副業を認める企業が増えてきたことや、副業案件を紹介してくれるマッチングサービスの普及などもあり、副業しやすい環境が整ってきたことも副業が注目されている要因といえるでしょう。
複数の収入源を持つということは、安定的に収入を得るために有効な手段です。本業にプラスになるような副業なら、相乗効果も期待できるでしょう。ただし本業に支障が出るような働き方は本末転倒です。本業が疎かにならないよう、スケジュールや業務の負荷を考慮しつつ、長く続けられる副業を選びましょう。
●2.労働市場での自分の価値を高める努力をする
多くの日本の企業では、長年にわたって年功序列・終身雇用制度が守られてきました。しかし、時代は急速に変化しています。世界中で技術革新が繰り広げられ、競争が激化する時代に企業が生き延びていくには、従来の雇用制度ではもはや太刀打ちできなくなりつつあるのです。
今、企業に勤める人たちに求められるのは「エンプロイアビリティ」という、従業員として雇用される能力です。目まぐるしく変化する社会で必要とされる人材になれるよう、知識や技術、人間力を磨いて常にアップデートしておくことが大切です。そうすることで自分の価値が上がり、社内でも評価されやすくなります。より良い条件の外資系企業などへの転職を視野に入れることも可能になってくるでしょう。
また、副業で得た経験やスキルが労働市場での自分の価値を高めるのに役立つこともあります。そのような観点から副業案件を選ぶのもおすすめです。
●3.資産運用をする
収入を増やす方法は、労働だけではありません。資産運用をすることで「お金に働いてもらう」という方法もあります。現在は銀行にお金を預けても年利0.002%程度の超低金利。1000万円を20年間預けても、4000円ほどしか増えません。
資産運用なら、長く運用することで複利効果(投資で得た利益をふたたび投資にまわすことで、利益が利益を生み膨らんでいく効果)が生まれ、将来的に大きな利益を得られる可能性があります。
ただし元本保証ではないため、リスクを抑えるための対策は必要です。投資のキホンは「分散投資」。一つの資産にまとめて投資するのではなく、投資対象(商品、地域、通貨など)を分散させてリスクを抑えた運用を心掛けましょう。
また、定期的に決まった金額を積み立てる「積立投資」もリスク軽減に有効です。価格の高いときには少なく、安いときに多く買うことで、購入価格を平均化できます。これにより、一時的に値下がりしたとしても大きく損をしにくくなるのです。
積立投資で資産運用する際は、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの税制優遇制度も活用しましょう。
つみたてNISAは年間40万円までの投資で得た利益が非課税になる制度で、いつでも引き出し可能。さまざまな用途に利用できます。2024年からは制度が拡充され、つみたてNISA同様の「つみたて投資枠」で年間120万円、一般NISA同様の「成長投資枠」で年間240万円まで投資可能に。最大で1800万円(生涯投資枠)まで無期限で非課税にできるようになります。
iDeCoは老後の資産づくりのための制度です。原則60歳まで引き出せませんが、投資の利益が非課税になるだけではなく、掛金は全額所得控除の対象となるため節税効果が高く、手取り年収を増やせる可能性があります。
不況下では賞与が支払われないことを見越したライフプラン設計を
年収は毎年上がるもの。そう考えられがちですが、不況下では必ずしもそうとは限りません。
国税庁が発表した2021年分(令和3年分)の民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は約443 万円。昨年より2.4%増加しているものの、その前は2年連続で減少しています。これは新型コロナウイルスの影響で、賞与が減額または支給されない企業が増加したことが主な要因と考えられます。
今後の年収を考えるうえで、賞与の考え方には注意が必要です。賞与は一般的に会社の業績に連動して支払われるもの。そのため、賞与のある会社に勤めている方は、現在のような不況下では年収が目減りしてしまう可能性をふまえてライフプランを設計する必要があります。
とくに賞与を当てにした住宅ローンの返済や大きな買い物は極力控えたほうがよいでしょう。また、今後も現在のような不況によって賞与の減額やカットが起こることを想定して、副業や資産運用にチャレンジすることも有効です。
会社の給与とは別の収入源を持つことは、不況下の大きな支えとなるでしょう。現在の仕事に活きるような副業を始めれば、前述した「エンプロイアビリティ」を高めることにつながる可能性もあります。資産運用も、早いうちからコツコツと積み立てることで20年後30年後に大きな複利効果が生まれるためおすすめです。
まとめ
会社に長年勤め続ければ自動的に昇進する時代は、もはや終わりつつあります。時代の変化を恐れず、柔軟かつタフな姿勢で新しいことに挑み続ける。それが今後の社会を生き延びていくためのカギとなります。年収をUPするには、自分の価値もUPしていくことが大切です。
会社内の昇進だけにとらわれず、副業や資産運用など会社の給与以外の収入源も模索しながら、長期的な視点を持って年収UPを目指しましょう。
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鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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