26/01/27
退職金「自己都合」と「会社都合」の差は意外と少ない

「退職金は、会社都合のほうが多くもらえる」と思っていませんか?たしかに制度上、自己都合より会社都合のほうが優遇されるケースは多くありますが、実際の支給額の差は想像より小さい場合もあります。
今回は、退職金制度の基本や「自己都合」「会社都合」の違い、そして最新データに基づく学歴別・勤続年数別の支給額の実態を詳しく解説します。
退職金の土台を作るのは「勤続年数」と「学歴」
退職金は、長年勤めた従業員が定年退職などで職業生活を引退した際、その後の生活を保障することを目的に支給されるものです。退職金の制度は「退職一時金制度」と「企業年金制度」の2つの柱で構成されています。
【退職一時金制度】
退職時に会社から一括で支払われる制度です。会社の退職金規程に基づいて支給額が決まられます。
【企業年金制度】
公的年金(厚生年金など)に上乗せして、一定期間または生涯にわたって年金形式で支給されます。日本の年金制度において、厚生年金が「2階部分」と呼ばれるのに対し、企業年金はさらにその上の「3階部分」と位置づけられます。
今回は、退職一時金制度にスポットを当てて解説します。
退職金には、大きく分けて「後払い給与(本来もらうべき賃金の積立)」と「功労金(会社への貢献に対する報い)」という2つの側面があります。そのため、退職金の支給額を決定する土台として、以下の2つの要素が重要になります。
●勤続年数:長く働くほど評価が高まる
多くの企業では、勤続年数が長くなるほど1年あたりの積立ポイントや算定倍率がアップする仕組みを取り入れています。そのため、勤続20年よりも30年、30年よりも定年まで……と、長く勤めるほど退職金の増加スピードが高まっていくのが一般的です。
●学歴:基本給の差が反映される
一般的には、最終学歴が初任給やその後の昇進などに影響します。退職金の計算式においても「退職時の基本給×勤続年数別の倍率」となっている場合、学歴による賃金差が、最終的な退職金の受取額に直結するといえます。
この「勤続年数」と「学歴」によって作られた土台に、最後に「退職理由(自己都合か会社都合か)」というフィルターがかかることで、実際に手にする退職金の金額が決まります。
「退職理由」は、最終的な支給額を調整するフィルター
学歴や勤続年数によって算出された「土台となる金額」に対し、最後に大きく影響するのが「なぜ辞めるのか」という理由です。一般的に退職理由は、「会社都合」と「自己都合」の2つに分けられます。
●会社都合の退職
会社の経営不振や部門閉鎖、あるいは定年退職など、社員側に非がない形で職場を去る場合は、会社都合の退職です。
この場合の退職金は、原則として「100%(企業によっては加算あり)」の係数が適用され、規定上の満額が支給されます。
会社に貢献してくれた社員に対して、退職後の生活保障や、人員整理における円滑な合意形成を目的としていることもあり、手厚く整えられています。
●自己都合の退職
転職や起業、家庭の事情など、自身の意志で退職する場合は自己都合の退職です。
特に勤続年数が短い段階では、会社都合の退職よりも退職金の支給額がカットされるケースが多くあります。
なお、重大な規則違反等による解雇(懲戒解雇)では、就業規則に基づき退職金の全額または一部が「不支給」となるなど、特に厳しい扱いを受けることがあります。
退職金の平均は「会社都合」と「自己都合」でどう違う?
退職金の「会社都合」と「自己都合」の平均がどうなっているか、「大学卒、総合職相当」「短大・高専卒、総合職相当」「高校卒、総合職相当」の3つのケースで確認してみましょう。データはすべて中央労働委員会「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」を元と
●大学卒、総合職相当の退職金の平均は?
大学を卒業してすぐに入社し、定年まで勤め上げた場合の平均退職金は「2858万円」です。一方、途中で退職する場合の「会社都合」と「自己都合」の差を勤続年数別に整理したのが以下の表です。
<大学卒、総合職相当の勤続年数別退職金>

筆者作成
勤続年数が浅いうちは「自己都合」だと「会社都合」の半分程度しかもらえないことがわかります。しかし、勤続年数が長くなるにつれて、両者の差は相対的に縮まっていく傾向にあります。
特に注目すべきは、勤続30年を超えたあたりからです。金額としての差は280万円前後で横ばいになりますが、会社都合に対する自己都合の「支給率」で見ると、勤続38年では約9割にまで達しています。
「自己都合で辞めると損をする」というイメージは確かに間違いではありませんが、長年会社に貢献してきた社員に対しては、退職理由に関わらず一定以上の功労を認める仕組みになっている企業が多い、ということがデータから読み取れます。
●短大・高専卒、総合職相当
続いて、短大・高専卒(総合職相当)のデータを見てみましょう。定年まで勤め上げた場合の平均退職金は「2028万円」となっています。「会社都合」と「自己都合」の差を勤続年数別に整理したのが以下の表です。
<短大・高専卒、総合職相当の勤続年数別退職金>

筆者作成
短大・高専卒のデータにおいて、まず注目すべきは「定年時の勤続年数が長いにもかかわらず、総額は大卒より抑えられる」という点です。
大卒が勤続38年で定年を迎えるのに対し、短大・高専卒は勤続40年と、より長く働いています。しかし、定年退職時の支給額を比較すると、大卒の2858万円に対し、短大・高専卒は2028万円と、約830万円の差が生じています。これは、基本給の設定や昇進スピードなどの差が、最終的な退職金算定に大きく影響していると考えられます。
自己都合と会社都合の支給率については、大卒と同様に勤続年数が長くなるほど差が縮まる傾向があります。特に勤続30年を超えると自己都合でも会社都合の約9割が支給されており、「長く勤めること」が退職理由による減額リスクを抑える最大の対策であることは共通しています。
●高校卒、総合職相当
最後に、高校卒(総合職相当)のデータを確認しましょう。定年まで勤め上げた場合の平均退職金は「2163万円」です。「会社都合」と「自己都合」の差を勤続年数別に整理したのが以下の表です。
<高校卒、総合職相当の勤続年数別退職金>

筆者作成
高校卒の退職金データを他の学歴と比較してみましょう。
高校卒の定年退職時に受け取る退職金は2163万円であり、短大・高専卒の2023万円を約135万円上回っています。これは高校卒の勤続年数が42年と長く、短大・高専卒の40年よりも2年分多く積み上げていることが影響しています。長く働き続けることで、学歴による基本給の差を補っています。
一方、大学卒と比較すると、高校卒の方が4年長く働いているにもかかわらず、金額面では依然として約700万円の開きがあります。
自己都合での退職の場合、勤続3年時点から会社都合の約55%が支給されています。これは大学卒の約49% や短大卒の約48% よりも高い水準です。定年目前(42年)では支給率が約91%まで上昇し、学歴を問わず「長期勤続者には理由を問わず手厚く報いる」ことがわかります。
勤続年数を重ねると「格差」は縮まる
「会社都合のほうが得」というイメージが強い退職金ですが、データからは、勤続年数を重ねるほど会社都合と自己都合の格差が縮まっていくことがわかります。長年貢献した社員に対しては、自己都合の退職であっても、会社都合の約9割を支給する企業が多いことは、老後のキャリアプラン、マネープランを立てる上でも心強いと言えるのではないでしょうか。
この機会に、ご自身の勤める会社の「退職金規定」をじっくり確認してみましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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