22/12/09
貯蓄2000万円以上あっても安心できない理由 資産の目減りを防ぐ4つの方法
老後資金として、仮に定期預金を2000万円持っていたとしても油断はできません。というのは、お金の価値はインフレや円安などの影響で目減りすることもあるからです。
生活をしていくうえで、インフレ・円安などは見逃せないお金の動きです。今回は、インフレや円安について解説したうえで、資産の目減りを防ぐための方法を4つ紹介します。
お金の価値はインフレ・円安などに左右される
株式や投資信託などで「投資」をしていると、元本割れをする可能性があります。そのような危険を冒したくないということで、普通預金や定期預金などにお金を預けているという人も中にはいるでしょう。
お金を普通預金などに預けていれば、余程のことがない限り、お金の額面はキッチリ保障されるため、元本割れが起こることは、ほぼなく安心なように感じます。しかし、実際のところ「お金の価値」そのものは、インフレや円安などの影響で大きく左右されます。
2%のインフレが20年続けば資産は約30%目減りする
総務省統計局の2022年(令和4年)10月分として発表された「2020年基準・消費者物価指数総合指数」は103.7。これは、2020年の物価を100とした場合、2022年10月分の物価が3.7%上昇したことを示しています。
たとえば、2020年時点で毎月20万円の生活していた場合、2年後の現時点での生活費は約21万5000円になり、毎月約1万5000円、年間にして18万円も出費が増えていることになります。このように、物価が上昇することをインフレ(インフレーション)といいます。インフレの状況下では、物の値段は上がり続けますが、お金の価値はどんどん下がります。
もし今後、さらに物価が上昇するとすれば、お金の実質的な価値はいくら減るのでしょうか。
●物価上昇が続いた場合の2000万円の資産価値
※金利ゼロ、物価上昇率はそれぞれ一定として実質価値をシミュレーションしています。
筆者作成
もし、物価上昇が年2%であれば、老後資産が2000万円あったとしても、20年後の実質的な価値は1346万円。実に30%以上資産価値が目減りするのです。
さらに物価上昇が3%であれば、20年後の実質的な価値は1107万円ですから、資産価値は45%近く目減りします。
このように、インフレになると「何も贅沢していないのに、日々の生活にかかるお金が増してしまう…」という厄介な状態になってしまうのです。
円の価値は相対的なもの、円安に傾けば預貯金も減る
「円」の価値が下がることは、預貯金の価値を目減りさせる要因となります。円の価値が下がるというのは、円安の場合をいいます。
たとえば、1ドル=100円と1ドル=150円ででは、1ドル=150円の方が円安となり、ドルに対して「円」の価値が下がった状態です。実際、アメリカで1ドルの商品を購入する場合を考えると、1ドル=150円は、1ドル=100円よりも1.5倍の円を用意しないと同じものが買えない場合であることがわかります。
私たちの生活は、多くのモノ・サービスが海外からの輸入で支えられています。もし、円安であれば、石油や小麦などのような輸入品は、今までより多くの円を支払わないと得られません。モノ・サービスの原価が上がれば、その分、供給価格が上がり、インフレになってしまいます。
世界と私たちはつながっています。私たちが日々使っているお金=円の価値が相対的に高いか、安いかはとても重要なことなのです。もし、インフレや円安によって、円の価値が下がってしまったなら、預貯金額だけでは見えてこない「お金の価値」そのものが減っていることになります。資産の目減りを防ぐには、社会の変化に合わせてお金も増えるような努力を早く始める必要があります。
資産の目減りを防ぐ4つの方法
では、具体的にどうすれば資産の目減りを防げるのでしょうか。4つ紹介します。
●資産の目減りを防ぐ方法①:投資にお金を回す
インフレや円安などの影響による資産の目減りを防ぐには、資産運用でインフレや円安を上回る利回りが必要になります。
仮にインフレ率が3%だったとしても、普通預金や定期預金などの利率がそれ以上であれば資産の目減りは防げます。しかし、現状の金利はほとんどゼロ。もし、ATM手数料や送金手数料を含めて考えたなら、実質的にはマイナスになる状況です。
このまま、預けたお金の額面は確保されるからといって、何も考えず普通預金などにお金を寝かせていると、社会の変化に対応できないまま、徐々に資産が失われてしまうことになるでしょう。せっかく貯めたお金を、インフレなどでも確実に維持し、さらに増やすことを目指すためには、投資へお金を回すことが必要です。
投資にはリスクがあり、ときにはお金が減ってしまう場合もあります。しかし、インフレ率を上回るリターンを得ることができれば、資産の目減りを防ぐことができます。
●資産の目減りを防ぐ方法②:全世界の株式に投資するインデックス型の投資信託を買う
全世界の株式に投資するインデックス型の投資信託(全世界株型)とは、先進国、新興国に関係なく、世界全体の株式の値動きを示す指数に連動して運用される投資信託です。投資をする際には、さまざまな資産に投資して「リスクを分散すること」が大切です。
全世界株型の投資信託であれば、1本で世界中の株に分散投資をしたのと同じ効果が得られます。特定の国、会社、モノに投資する場合、値動きは気候や社会情勢などの影響を受け、上がったり下がったりと値動きが安定しません。しかし、全世界株型であれば、さまざまな国や地域の株式が含まれており、値動きのバランスをとってくれます。投資初心者や、分散投資を手軽にしたいという場合に向いています。
●資産の目減りを防ぐ方法③:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用する
資産の目減りを防ぐには、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用し、節税しながら投資で増やすという方法があります。
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された積立・保険・投資信託などの金融商品で自ら運用する制度です。そして、運用の成果を原則60歳以降に一時金または年金で受け取ります。
iDeCoの積立額は最低月額5000円から。上限は加入者の職業で違いがあります。たとえば、会社員の場合は月額2万3000円、公務員の場合は月額1万2000円、厚生年金に加入していない個人事業主(フリーランス)などの人は月額6万8000円まで掛金を拠出できます。
iDeCoの最大の特徴は、拠出時、運用時、受取時に税制優遇が受けられることです。具体的には、次のとおりです。
・拠出時:毎年拠出した積立金はすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くすることができます。
・運用時:iDeCoの運用で得た利息、投資での利益には税金がかかりません。
・受取時:一時金でまとめて受け取るときは退職所得控除、年金のように分割で受け取るときは公的年金等控除の対象になり、所得税を抑えることができます。
iDeCoは、原則60歳まで引き出せませんが、老後資金を確実に用意するためには好都合でしょう。支払う税金額を抑え、効率的にお金を増やすには、うってつけの方法といえます。
●資産の目減りを防ぐための方法④:つみたてNISAを利用する
資産の目減りを防ぐには「投資」が必要なことはわかりますが、初めて資産運用をするとき「何に投資すればいいのか」がわからない人も多いのではないでしょうか。そういった方には「つみたてNISA」を利用するという方法があります。
つみたてNISAでは、毎月など一定のペースで投資信託などをコツコツ積立購入していきます。そうすることで、得られた利益などに対して、通常であればかかるはずの税(20.315%)がかからなくなる制度です。毎年40万円までの投資の利益にかかる税金を最長20年間非課税にできます。
たとえば、10万円の利益が出た場合、通常であれば10万円の約20%となる2万円ほどが税金で差引かれ、実際もらえる金額は残りの約8万円となります。しかし、つみたてNISAはそのような税金がかかりません。利益の10万円は、そのままもらえます。大変おトクな制度といえます。
つみたてNISAで購入する商品は、国が定めた基準を満たした投資信託・ETF(上場投資信託)のみ。いずれも手数料が安く、長期間かけてお金が増やせると見込まれる商品が揃っています。先述した全世界株型の投資信託も含まれています。
なお、つみたてNISAの資産は、途中でお金が必要になったらいつでも自由に引き出せます。老後資金の準備としても良いですし、それ以外の必要なコトにも活用できます。
まとめ
普通預金や定期預金にたくさんお金がある状態は安心感があるかもしれませんが、インフレが続けば、資産価値が目減りします。少なくとも年利2%ぐらいの運用利益を目指して投資すれば、資産価値の目減りを抑えることができるでしょう。資産価値の目減りを防ぐには投資が欠かせません。なるべく早めに取り組むことをおすすめします。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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