22/10/26
年金「増やしすぎ」に注意!繰り下げ受給の注意点を全部解説
年金は原則65歳から受給できますが、受給開始を1か月繰り下げるごとに0.7%増額される仕組みになっています。2022年(令和4年)4月からは75歳までの繰り下げが可能になり、年金を最大84%増額できるようになりました。
繰り下げ受給により年金を増やせる可能性はありますが、注意しておかなければならない点もあります。今回は、繰り下げ受給の8つの注意点を解説しますので、参考にしてください。
繰り下げ受給の注意点1:加給年金や振替加算は増額されない
加給年金とは、年金受給者に扶養している年下の配偶者や子供がいる場合に加算される手当です。振替加算とは、加給年金の対象となっていた配偶者自身が65歳になったときに、その配偶者の老齢基礎年金に加算される金額です。
繰り下げにより年金をもらわない期間は、加給年金や振替加算ももらえません。また、加給年金・振替加算は繰り下げによる増額の対象外です。加給年金や振替加算をもらえなかったために、逆に年金受取額が少なくなる可能性もあります。
繰り下げ受給の注意点2:75歳を過ぎれば年金は増えない
年金繰り下げを希望する場合、いつからもらうかを事前に申し出るわけではありません。65歳に到達しても年金請求手続きをしなければ自動的に繰り下げになり、後に請求した時点で増額された年金が支給される仕組みになっています。
ただし、年金が増額するのは75歳までで、それ以降は増額しません。75歳を過ぎてから年金の請求を行っても、75歳時点にさかのぼって計算されるだけです。
繰り下げ受給の注意点3:日本年金機構以外の老齢厚生年金も繰り下げになる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、別々に繰り下げできます。たとえば、老齢基礎年金だけ先にもらい、老齢厚生年金は繰り下げすることも可能です。なお、老齢厚生年金を繰り下げする場合には、日本年金機構以外の共済組合等から受け取る老齢厚生年金もすべて繰り下げになります。
繰り下げ受給の注意点4:障害年金や遺族年金を受給していれば繰り下げできない
公的年金には、病気やケガで障害が残ったときに支給される障害年金や亡くなった人の家族が受け取れる遺族年金もあります。65歳になった時点で障害年金や遺族年金の受給権を得ていれば、老齢年金の繰り下げ受給を申し出ることはできません。ただし、障害基礎年金(または旧国民年金法による障害年金)のみ受給権がある人は、老齢厚生年金の繰り下げ受給が可能です。
繰り下げ受給の注意点5:66歳以降に遺族年金・障害年金受給権者となったらそれ以上増えない
66歳以降に年金繰り下げしている期間中に遺族年金または障害年金の受給権者となった場合、その時点からは年金が増額しません。それまでの繰り下げにより増額した年金は、遺族年金等が発生した月の翌月からもらえます。
繰り下げ受給の注意点6:厚生年金基金等からの年金も繰り下げになる
会社員の場合、公的年金以外に企業年金がもらえるケースもあります。老齢厚生年金の繰り下げをすれば、厚生年金基金や企業年金連合会からもらう企業年金も一緒に繰り下げ・増額になります。企業年金がある人が年金繰り下げを希望する場合には、企業年金の支給先である基金等に支給停止の申出をする必要があります。
繰り下げ受給の注意点7:年金が増額すれば社会保険料や税金も上がる
年金も所得となり、年金受給者も所得に応じた社会保険料や税金を負担しなければなりません。繰り下げにより年金受給額が増額しても、社会保険料や税金も増えるので、思ったほど手取りは増えないことがあります。
繰り下げ受給の注意点8:本人が亡くなった場合、遺族は繰り下げ請求できない
65歳以降年金を繰り下げするつもりで年金をもらっていなかった人が亡くなった場合、遺族が未支給年金を請求できます。この場合に遺族が請求できる年金は、増額された金額ではありません。繰り下げせずに65歳時点でもらえる額で計算されます。
まとめ
年金繰り下げには加給年金が受け取れないなどのデメリットもあるため、思ったほど年金が増えないこともあります。年金を増やすことだけに気を取られないで、自分や家族の健康状態や資産状況、ライフプランを考えて繰り下げするかどうかを考えましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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