22/09/22
【年金早見表】60歳以降も働いたら年金はどのくらい増えるのか
60歳や65歳の定年を迎えた後も継続雇用などで働き続ける方が増えています。「人生100年時代」といわれる今、60歳や65歳はまだまだ働ける時代です。元気で働けるうちは働き、60歳以降も厚生年金に加入して保険料を納めることで、老後の年金受給額が増えます。
今回は、60歳以降も働いたときに将来もらえる年金額がどのくらい増えるのかがひと目で分かる早見表を紹介します。
60歳以降も厚生年金に加入するとどうなる?
日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての方が加入する「国民年金(基礎年金)」を1階部分、会社員・公務員の方が加入する「厚生年金」を2階部分とする2階建ての仕組みとなっています。60歳までの会社員の方は、厚生年金保険料という1種類の保険料を負担することで、国民年金と厚生年金の両方がもらえます。
ですが、60歳以降の定年を迎えた後も継続雇用などで働き続けると事情が異なってきます。60歳までは、厚生年金に加入すれば、自動的に国民年金に加入する事になっていましたが、国民年金に加入できるのは20歳以上60歳未満のため、60歳以降は国民年金に加入できません。そのため、60歳になった時点で20歳から40年間(480ヶ月)ずっと年金保険料を納付し続けてきた人は、国民年金の加入月数は480月で打ち止めとなり、それ以降増えることはありません。
一方、勤務を続けながら厚生年金保険制度の被保険者(加入者)として保険料を掛け続けると、将来もらえる年金額に反映されます。老齢厚生年金の受給額は、平均標準報酬額と被保険者月数をもとに計算しますが、厚生年金の加入月数に上限はないので、負担してきた保険料の額によっても異なるものの、60歳以降も保険料を納めれば受給額が増えることになります。
受給額はどのくらい増える?早見表で確認
では、老齢厚生年金の受給額はどのくらい増えるのでしょうか。
老齢厚生年金の増加額は60歳以降の年収と働く期間が分かれば概算の金額が計算できます。厚生年金の加入は原則として、最長で70歳までという決まりがあります。働き続けていても70歳になれば、厚生年金の加入資格を喪失することになりますので、早見表は61~70歳までの1年刻みとしました。
●60歳以降も働いた場合の年金増加額早見表
筆者作成
表は縦軸に60歳以降何歳まで働くかの年齢、横軸に60歳以降の年収をとっています。例えば、60歳から65歳まで年収400万円で働いた場合、60歳以降働かなかった場合と比べて、年額で11万円ほど年金の受給額が増加する、ということを表します。
年額で11万円ほど年金の受給額が増加するということは、月額換算で約9100円程度の増加です。「5年も長く働いたのに、たったの月額9100円?」と思うかもしれません。ですが、この受給増加額は死ぬまで一生もらえるので、平均寿命※まで生きたとすると男性の場合は約183万円、女性の場合は約250万円も多く受け取れる計算になります。
※平均寿命は男性81.47歳・女性87.57歳(厚生労働省「令和3年簡易生命表」)で試算
男性:(81.47-65)×11万円=181.07万円
女性:(87.57-65)×11万円=247.27万円
長く働いて厚生年金保険料を払っても、元が取れないのでは?という心配する方もいらっしゃいますが、100歳まで長生きする可能性を考えると、生きている限り受け取ることができる公的年金を増やすことは、リタイア後のマネープランを考える際、大きな安心材料となることは確かです。
老齢基礎年金に反映されない保険料は、損なのか?
60歳以降にも厚生年金の加入期間があると、報酬比例部分は増えますが、老齢基礎年金が増えなくなるのは前述の通りです。では、国民年金の加入期間が40年に達していない人が、厚生年金保険料を納め続けていても、老齢厚生基礎年金の受給額は増やすことはできないのでしょうか。
実は、60歳以降に厚生年金に加入していれば、老齢基礎年金の満額に近づけることができる別の仕組みがあります。60歳以降の期間は、国民年金の加入期間ではないものの、実際にはこの期間も加えて計算した年金額と、老齢基礎年金の受給額の差を「経過的加算額」として受け取ることができるためです。
例えば、大学生だった時には年金保険料を納めていなかった人や転職の際に加入しなかった期間のある人など60歳時点で国民年金の加入期間が40年に達していない方も多く存在します。そのような方が、60歳以降も厚生年金に加入すると老齢基礎年金に相当する部分が老齢厚生年金として計算され、「経過的加算額」が支給されます。つまり、60歳以降に厚生年金に加入していれば、国民年金に任意加入するのと同じ効果が得られるのです。
65歳~70歳までの年金は毎年増える
65歳以降に厚生年金に加入して働いた場合、年金の増額分が年金の受給に反映される時期についても確認しておきましょう。
原則、年金が受給開始となる年齢は65歳です。2022年4月より年金をもらいながら働いた場合、70歳までに受け取る年金は厚生年金の「在職定時改定」制度によって毎年反映され、きちんと増額されるようになりました。
具体的には、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映します。
●在職定時改定の仕組み
厚生労働省の資料より
たとえば65歳以降、月額20万円で1年間就労した場合、年金額は毎月約1,100円、年間約13,000円増える計算。上の図の「在職定時改定による年金額増額部分」の合計額(66歳〜69歳までの増額分)は約13万円です。
2022年3月までは、65歳以降も働いても、その効果が年金の受取額として表れるのは退職時まで待たなければならなかったため、就業意欲が低下してしまう懸念がありました。
在職定時改定によって、退職を待たずに早期に改定分の年金額に反映されるようになったため、年金を受給しながら働く高齢者の就業意欲の向上が期待できます。
65歳以降も働くなら、繰り下げ受給も視野に
65歳時点で年金受給を考える際、給与所得など、年金以外の一定の収入がある場合には、将来受け取る年金を増やすため、年金の繰り下げ受給を選択することも良いでしょう。
年金の繰り下げ受給を選んだ場合、65歳から年金の受け取りを1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ年金額が増えます。66歳まで、1年間繰り下げた場合で0.7×12ヶ月=8.4%増、75歳まで10年間繰り下げれば0.7%×120ヶ月=84%増となります。
年金を繰り下げるべきか迷った時、働いて収入があれば、とりあえず繰り下げておくという手も使えます。65歳時点で決めるのは、65歳から年金をもらうのか、遅らせるのかという点だけで、何歳からもらうかまでは決める必要はありません。「そろそろもらいたい」と思った時に年金事務所で繰り下げ受給開始の手続きをすれば、そこから増額された年金が受け取れるという流れになります。
途中で予期せぬ出来事(介護やリフォーム費用など)で大きな金額が必要になった場合には、今までもらえるはずだった年金受給額(最長5年分)をまとめて一括で受け取ることもできます。ただし、5年以上経過した分の年金は遡って一括請求することができませんので、その点は注意しておきましょう。
なお年金は申請主義といって、受給のための手続きをしないと受け取れません。したがって、年金の受給手続き自体を忘れてしまうことは絶対に避けたいものです。「自分に限ってそんなことはない」と思いがちですが、高齢になるにつれ、認知機能も弱まるのも事実です。周りの家族は、「当然年金を受け取っているだろう」と思っていて、年金を受け取っていないことに気がつくのが遅れるケースもあります。
法律上は、年金の受給権が発生しても、請求しないで5年が経つと時効になってしまいます。国はもらい忘れの年金については、積極的には教えてくれないため、年金を繰り下げる場合には、周囲の家族にも伝えておくなど、期日管理できる仕組みを整えておきましょう。
まとめ
厚生年金に加入していると、どうしても月々支払う厚生年金保険料の金額を負担に感じてしまうかもしれません。しかし、厚生年金の受給資格を満たして60歳以降も働けば、増額分が上乗せされるため、老後の生活にも経済的なゆとりができるでしょう。
「人生100年時代」と言われる昨今、老後の収入の柱である年金は多ければ多いに越したことはありません。老後の生活の充実を考え、定年後も社会に出て働き続けたいと考えるのなら、より長く厚生年金へ加入できる働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
【関連記事もチェック】
・退職翌年の住民税は高いって本当? 年収300万円・500万円・700万円だといくらか
・老後のお金を激減させる「NG行為」ベスト5
・年金を月20万円もらえる場合の手取りはいくら? 年金から天引きされる税金・社会保険料の金額【Money&You TV】
・宝くじ「高額当せん」に要注意!? 驚くほど税金がかかるケースあり
・「お金持ち夫婦」と「貧乏夫婦」を分ける、決定的な違い5選
KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう