22/06/06
年収400万円は「高給取り」なのか
少し前に、若者の間で「年収400万円が高給取り」と考えられていることが大変話題になりました。バブル世代以前に生まれた世代にはにわかに信じられないかもしれませんが、今どきの若者は物欲も少ないうえ、ブランド志向もありませんが、年収も増えていません。そんな若者にとって「頑張れば手が届く可能性がある」と希望を抱かせる年収が「400万円」だというのです。果たして、年収400万円は高級取りなのでしょうか。平均年収のデータより、年収400万円の水準をチェックしてみましょう。また、年収400万円の生活レベルや家計の改善方法についても解説します。
「年収400万円」は平均年収より少ない
国税庁の統計調査によれば、日本のビジネスパーソンの平均給与額は433万円で、2年連続で減少しています。平均年収は男女合わせた数字となっており、男女別に見ると男性の平均給与額は532万円、女性の平均給与額は女293万円と男女間の賃金格差が顕著に現れています。つまり、年収400万という水準は、女性の立場で考えれば高いと感じる一方で、世の中の男性全体で考えると平均年収を大幅に下回る水準であることが分かります。
●平均年収
全体:433万円(5,245万人)>>「年収400万円」は平均年収より少ない
うち男性:532万円(3,077万人)
うち女性:293万円(2,168万人)
若者にとって「年収400万円は高給取り」はあながち間違いではない
年代・性別ごとに平均給与を見てみると、20~24歳の男性の平均給与は277万円、女性は241万円。25~29歳でも男性393万円、女性319万円となっています。「年収400万円」が現実的な数字となってくるのは30代からとなります。
●年齢階層別平均年収
国税庁「民間給与実態統計調査(2020年度)」より筆者作成
つまり、20代で年収400万円をもらえていれば、20代前半であれば高給取りですし、20代後半であれば平均よりももらえている方といってよいでしょう。そして、30代前半になると平均的な年収水準となります。
しかしながら、これはあくまでも平均としての数値。給料の多寡は二極化しており、30代になっても労働者の半数以上が400万円に届かないのが今の日本の現実です。今の20~30代は、非正規雇用や、正社員であっても低賃金で働くことを余儀なくされている方も多いのです。こうした背景から、若者の間では、現実的に目指すべき年収水準が「年収400万円」となっているのです。
年功序列で賃金が上昇していったバブル世代の方は「たった400万円?」と驚かれるかもしれませんが、若者の間では「年収400万円は高給取り」というのはあながち間違いではないようです。
年収400万円の手取り額は315万円ほど
さて、実際に年収400万円の生活レベルはどのくらいなのか気になる方も多いと思います。
年収400万円といっても、その中から税金や社会保険料が差し引かれ、その残りが手取り額となります。税金や社会保険料の金額は人それぞれ異なりますが、年収400万円のおおよその内訳は以下のイメージとなります。
●年収400万円の内訳
[収入]
額面:400万円
[控除]
所得税9万円
住民税:18万円
社会保険料:58万円
[手取]:315万円
収入から税金や社会保険料が差し引かれ、手取り315万円となっていますが、20代後半の年間ボーナス平均支給額が50〜70万円と考えると、1ヶ月の総支給額は約27万円で手取り額が22万円ほどといったイメージでしょうか。
独身であれば、一人暮らしをしたとしても15~17万円程度の生活費で暮らすことは十分可能です。暮らしぶりは人それぞれ異なりますが、たまの外食や娯楽にかけるお金、そして将来のことを考えて3~5万円ほど貯金する余裕はできるので、生活に困ることはまずないでしょう。
さらにこれにプラスして50〜70万円ほどのボーナスがあることを考えると、年間100万貯金することだって不可能ではないですね。もし、実家暮らしや家賃手当等がある会社にお勤めの方であれば、家賃分が浮きますのでさらに余裕が生まれます。年収400万円という水準は、独身で贅沢さえしなければそこそこ余裕のある暮らしぶりが実現できそうな水準となります。
結婚して世帯を持つなら共働きも視野に
しかしながら、結婚して世帯を持つなら共働きも視野にいれないと厳しい水準でもあるのが年収400万円です。
ある婚活サイトの統計データでは、女性が結婚相手に求める年収で最も多かったのは「400~500万円以上」。これは決して高望みではなく、結婚して子どもを養うことを考えれば、現実的な条件ではないでしょうか。結婚して世帯を持てば、家族が増えて、生活費も2人分、3人分と増えていきますので、結婚を考えたときには、共働きで少しでも収入を増やしたり、支出を切り詰めたりする必要がでてきます。
年収400万円の手取りは315万円ほどとご紹介しました。40歳を超えれば、介護保険料の天引きが始まります。収入によって金額は変わりますが、年収400万円の場合、介護保険料として年間で約6万円負担が増加します。
また将来的には、インフレで物価が上がり相対的にお金の価値が下がってしまうことや社会保険料が年々増加傾向にあることも考えると、夫婦2人とも正社員で働くほどではありませんが、妻にもパートタイムである程度、働いてもらい、家計を助けるなどの工夫は必要となってきます。
国の制度をフル活用することで家計改善につながる
子どもも小さいため共働きも難しい…そんな年収400万円の方が少しでも手取りを増やすための方法として、国の制度をフル活用することをおすすめします。税金や社会保険料は取られるばかりではなく、所得控除や手当などで軽減を受けられる仕組みがあります。
例えば、扶養している配偶者がいる場合、所得によっては「配偶者控除」が受けられますし、16歳以上の子どもや同居の親を養っている場合は、「扶養控除」の対象となりますので、そのぶんだけ税金を抑えられ、手取り額が増えます。また収入によって所得制限は設けられてはいますが、小さな子どもがいる家庭には、「児童手当」も国からもらえます。年収400万円であれば、1人あたり約200万円もらえます。各自治体で実施している「ふるさと納税」では日常的に使う食料品や日用品を返礼品として選ぶと、その分支出も抑えられるため、家計改善につながります。
こうして支出が抑えられた分のお金は、投資に回すと良いでしょう。ここでも国が推奨する制度である「つみたてNISA」や「iDeCo」などが活用できます。専用の口座を使って購入した投資信託の分配益・譲渡益にかかる税金が非課税となる制度です。
投資はリスクがありますし、始めるタイミングが難しいというイメージがありますが、「つみたてNISA」や「iDeCo」は少額からスタートできますし、長期・積立・分散という3つの観点から初心者でも安心して投資が始められるためおすすめの制度です。
まとめ
20代の若者にとってみれば、年収400万円は高級取りです。しかし、年収400万円は、結婚して世帯を持つなら厳しい水準だといえるでしょう。年収400万円であっても工夫次第で家計を改善する方法はあります。より豊かに過ごすためには、使えそうな国や自治体のお得な制度を自分で積極的に情報収集し、今できることから実行に移してみる行動力が大切です。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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