22/05/21
大人なら誰もが最低限知っておくべきお金の教養
2022年4月から成人年齢(成年年齢)が20歳から18歳に引き下げられました。成人になれば、金融関係でできることが一気に広がります。
そこで今回は、大人なら誰しも最低限知っておくべきお金の教養をご紹介。新たに成人となった18歳の人はもちろん、すでに大人になった人でも、お金の教養を身につけ、行動していくことが大切です。
2022年4月から、18歳になると金融関係で何ができる?
明治時代から約140年間にわたって、日本での成人年齢は20歳と民法で定められていました。しかし民法が改正されたことで、2022年4月からは成人年齢が18歳に変わりました。これによって、2022年4月1日時点で18歳・19歳の方は一気に成人に。また、以後は18歳の誕生日を迎えたときに成人となります。
成人になると、さまざまな契約手続きを自分で(親の同意なしで)できるようになります。金融関係では、
・携帯電話の契約
・クレジットカードを作る
・部屋を借りる(賃貸契約)
・各種ローンを組む
・民間の生命保険や損害保険に加入する
・NISA口座や課税口座の開設
・投資実行
などができるようになります。
民法でいう「成年年齢」とは、「一人で有効な契約をすることができ、父母の親権に服さなくなる年齢」のことです。したがって、自分で携帯電話を契約してスマホ代を分割払いしたり、毎月の通話料・通信費を支払ったりできます。
住宅ローンを組むことはもちろん、キャッシング、カードローン、リボ払いなど各種ローンを利用することができます。不動産の賃貸契約を結んで一人暮らし始めたりすることもできます。生命保険や損害保険に加入したり、投資したりできるようになるのです。
これらの契約は、すべて自己責任です。ですから、成人になったからといって、十分な知識がないまま安易に契約をしてしまうと、思わぬトラブルにつながることもあります。
そうしたトラブルを回避し、お金で困ることのないようにするためにも、成人になったらお金の教養を身に付けなければならないということです。
お金の教養1:収入以上に支出しない・先取り貯蓄
先取り貯蓄は、給与などの収入があったら、先に貯蓄分を取り分け、残ったお金で生活する方法です。
●先取り貯蓄でお金を貯める
著書「はじめてのお金の基本」より
お金は、先に生活費を出して余ったら貯めようという「あとから貯蓄」では貯まりません。先取り貯蓄をしておけば、残ったお金を仮に全部使っても、確実に貯蓄ができます。一見、当たり前のことに思われるかもしれませんが、実際、貯蓄ゼロ世帯が各年代に2〜3割はいます。当たり前と思っても、できていない方もいるのです。
支出に回す分が少なくて心配になるかもしれませんが、人は案外、少ないお金でやりくりしようとすると慣れてくるもの。ですから、ぜひ先取り貯蓄を心がけてください。
お金の教養2:利子・利息・金利・利回り
利子・利息・金利・利回り。似ているようで少し違います。
利子・利息は、どちらも金額そのものを指す言葉。お金を借りたり、貸したりするときに、お金の利用料・使用料としてやり取りされるのが、利子・利息です。利子と利息は、ほぼ同じ意味です。
対して、金利・利回りは割合(%)を表す言葉。金利は利子・利息を計算するための割合のことです。また、利回りは投資額に対して増えた年間収益の割合を表します。
たとえば、100万円の株を購入して、1年後に105万円で売却したとします。この間、配当金を3,000円受け取っていた場合、トータルリターン(投資の収益)は50,000円+3,000円=53,000円。利回りは53,000円÷100万円×100=5.3%と表せます。
お金の教養3:複利効果
利息の計算方法には、単利と複利の2種類があります。
単利は、利息を元本に組み入れない計算方法です。単利では、当初の元本部分に対してのみ利息がつきます。対する複利は、利息を元本に組み入れる計算方法。
複利では、利息を組み入れた元本に対してさらに利息がつくため、時間が経つほど雪だるま式にお金が増えていきます。投資では、利益を再び投資に回し、お金がお金を生み出す複利効果を生かすことで、お金の増えるスピードを上げることができます。
複利は、借金でも同じです。
リボ払いやキャッシングを利用したときの金利は年18%が一般的です。仮にリボ払いで30万円買い物し、月1万円ずつ返済した場合(買い物は1回のみ・定額返済・年利18%)の返済総額は約40.1万円(返済回数41回)に。実に10万円以上も利息を支払うことになるのです。
ですので、複利効果は味方につけることが大切。敵に回しては大変です。
お金の教養4:投資商品の仕組み・メリット・デメリット
投資商品には、実にいろいろなものがあります。投資商品は、安全性・収益性・流動性の3つのポイントを押さえてみるとわかりやすいでしょう。
●主な投資商品の特徴
著書「1日1分読むだけで身につくお金大全100」より
「安全性」は運用した結果元本が減りづらいこと、「収益性」は運用することで利益が出やすいこと、「流動性」は現金に交換しやすいことです。
3つのポイントがすべて完璧な投資商品があればいいのですが、残念ながら存在しません。ですから、投資商品を選ぶにあたっては、それぞれの投資商品の特徴を知り、組み合わせることが大切です。
お金の教養5:投資のリスクとリターンの関係
投資の世界の「リスク」は、「危険性」ではなく、「投資の結果(リターン)のブレ幅」という意味。リスクとリターンには、トレードオフ(比例)の関係があります。
●投資商品のリスクとリターンの関係
著書「1日1分読むだけで身につくお金大全100」より
ローリスク・ハイリターンな商品はありません。お金を増やしたければ、リスクとうまく付き合っていくことが大切なのです。
お金の教養6:リスク許容度にあった資産運用
投資商品を選ぶ際には、リスク許容度を考えましょう。リスク許容度とは、損失に耐えられる度合いのこと。「どのくらいまで損しても大丈夫か」の指標です。
●リスク許容度は人により異なる
著書「1日1分読むだけで身につくお金大全100」より
金融商品のリスクは誰が買っても同じです。しかし、リスク許容度は上図のとおり、年齢・運用期間・他の収入や資産・投資歴・家族の有無などで異なります。客観的にみてリスク許容度が高いと考えられる場合でも、本人が「あまりリスクを取りたくない」と思っているならば、リスク許容度は低くなります。
リスク許容度は高いからいい、低いから悪いというものではありません。自分のリスク許容度を知り、そのリスク許容度に合わせた投資先や資産配分を考えることが大切です。
お金の教養7:具体的な商品選びのポイント
金融商品はいろいろありますが、どれを買っても資産が増える、というわけではありません。
数ある金融商品のなかから、いい商品を選ぶための「商品選びのポイント」も身につけておくと、投資する際の行動に結びつきやすいでしょう。
たとえば、投資信託であれば、以下のようなポイントを押さえておくといいでしょう。
●信託報酬は安いか
投資信託では、購入時に購入時手数料、保有中に信託報酬、売却時に信託財産留保額という手数料がかかります(購入時手数料・信託財産留保額はかからないものもあります)。このうち重要なのは、保有中の信託報酬。たとえ0.2%〜0.3%の違いでも、投資期間が長くなると大きな差になります。したがって、できるだけ信託報酬の安い投資信託を選びましょう。
●純資産総額が大きいか
投資信託の資産の規模を表す純資産総額。投資信託が理想的な運用をするには、ある程度の規模が必要なので、純資産総額が大きい投資信託を選ぶのがいいでしょう。反対に、純資産総額があまりに低いままだと、途中で運用を中止する「繰上償還」が行われる可能性があります。特に、資金が流出している投資信託には注意が必要です。
●運用成績が中長期で伸びているか
純資産総額に加えて、投資信託の値段を表す基準価額をチェック。純資産総額とともに右肩上がりになっている投資信託がいいでしょう。過去の成績がよくても今後もよいという保証はありませんが、5年・10年といった期間で堅調に推移していれば有望でしょう。
●つみたてNISAやiDeCoが利用できるか
つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇を受けられる制度は優先して使ったほうが有利です。投資の利益を非課税にできるほか、iDeCoでは所得税や住民税を減らす効果も得られます。
お金の教養8:金融詐欺・投資詐欺
誰でもなるべくラクしてお金を稼ぎたいですよね。しかし、そんなことはできません。「元本保証で大きく増える」「ローリスクでハイリターンな投資」もありませんし、「あなただけに特別に教えます」という投資の必勝法もありません。
もしそんな勧誘があった場合は、ポンジスキームを疑いましょう。
ポンジスキームとは、ひとことでいえば詐欺の常套手段です。
建前では、「出資者全員のお金を集めて運用し、その利益を出資金に応じて配当金として還元する」としています。
しかし実際は運用せず、後から参加する別の出資者から集めたお金を、一部の運営者が着服し、残ったお金をそれ以前の出資者に配当金と偽って渡しています。集めたお金を横流ししているだけなので、いずれお金がなくなり破綻します。破綻すれば、出資者のお金は戻ってきません。
ほかにも、投資詐欺にはさまざまなものがあります。
・上場するといわれた未公開株に投資したが一向に上場しない
・仮想通貨を入金しておくだけで月利15%の利益が出るといわれたが一向に利益が出ない
・数十万円もする投資教材を購入したり、コミュニティに入って学んだりしたのに、そのとおりやっても勝てない
・海外の投資商品や不動産に手を出したがいつのまにか連絡がつかない
一見「おいしい話」には、必ず落とし穴があります。リスクとリターンはトレードオフ。
引っかからないようにしましょう。
お金の教養9:リスクを抑えてリターンを得る「長期積立分散投資」
リスクを抑え、堅実にリターンを得ることを目指すなら、「長期積立分散投資」を行うことです。
「長期」は、長い時間をかけて投資を行うことです。数十年という長い期間で投資することでリスクが抑えられるうえ、複利効果も期待できます。
「積立」は、一定額ずつコツコツと投資することです。一定額ずつ定期的に投資することで、価格が高いときには少なく、安いときには多く買うことができます。これを続けると、平均の購入単価が下がり、値上がりしたときに利益が出やすくなります。
そして「分散」は、投資先や購入タイミングをわけることです。どこかひとつの投資先だけに集中してしまうと、その投資先が値下がりしたときに資産が大きく減ってしまいます。しかし、投資先を分散させれば、どれかが値下がりしても損失は大きくなりませんし、他の投資先の値上がりで損失をカバーできる可能性もあります。
金融庁の資料をもとに、分散積立投資を5年間・20年間行った場合の運用成果をまとめたのが次の図です。
●分散積立投資を5年間・20年間行った場合の運用成果
著書「はじめてのお金の基本」より
上が5年間、下が20年間の成果です。下の20年間では、元本割れを起こしておらず、収益率が年2%〜8%で推移していることがわかります。
お金は減らさず、増やしたいですよね。そのためにも、ぜひ長期積立分散投資を身につけ、実践していきましょう。
まとめ
成人なら誰もが最低限知っておくべきお金の教養を解説してきました。新成人の方はもちろん、すでに大人の方も、まずはお金の教養を身につけていただければと考えます。
ただせっかくのお金の教養も「知っている」だけでは不十分です。
ぜひ今すぐ行動に移して、お金で困ることのないようにしていきましょう。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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