21/06/07
「住民税非課税世帯」ってどんな世帯?メリット・デメリットは?
所得に応じてかかる税金が、所得税と住民税です。ただし、低所得の場合には課税されません。今回は、住民税が課税されない「住民税非課税世帯」について、どういったメリットがあるのか、デメリットはないのかを説明します。
住民税の課税のしくみはどうなっている?
住民税とは、道府県民税と市町村民税(※東京都は都道府県民税と特別区民税)を合わせた呼び方です。所得税と同じく個人の所得に対して課税される税金ですが、所得税は国に納める税金で、住民税は都道府県、市町村といった自治体に納める税金になります。
住民税の税額は、会社を通じて、あるいは確定申告により申告された前年度の所得にもとづき決まります。所得税と違い、課税する側の自治体の側で税額を計算して税金を徴収する方式になっています。
住民税には均等割(一律に課税される金額)と所得割(所得に応じて課税される金額)があり、両者を合わせた金額になっています。均等割は5000円(2023年まで)、所得割は税率10%が標準税率ですが、自治体によっては多少異なるところがあります。
住民税非課税になるのは年収いくら以下から?
住民税非課税とは、均等割も所得割も賦課されていないことを意味します。以下の条件に該当する人は、所得割も均等割も課されません(※自治体によっては異なるところがあります)。
(1) 生活保護法の規定による生活扶助を受けている人
(2) 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下であった人
(3) 前年の所得金額が以下の表の条件に該当する人
住民税がかからない年収は、たとえば次のようになります。
ア 一人暮らしでアルバイトをしている人の場合
所得45万円以下で住民税非課税になりますが、所得とは年収から所得控除を差し引きした金額です。給与所得者は最少でも55万円の給与所得控除が受けられるので、年収100万円以下なら住民税がかかりません。
イ 専業主婦の妻と子ども1人がいる会社員の場合
3人×35万円+31万円=136万円となるため、所得136万円以下で住民税非課税になります。給与所得控除を加えた年収で言えば、205万円以下です。
住民税非課税世帯とは?
住民税は個人に課される税金なので、家族であっても別々に課税されます。住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税を課税されていない世帯のことです。
●住民税非課税世帯の数はどれくらい?
住民税非課税世帯については詳しい統計がなく、正確な数はわかりません。2019年(令和元年)国民生活基礎調査によると、1万世帯のうち住民税課税世帯は7667世帯とされています。これに従うと、住民税非課税世帯は残りの2333世帯ということになり、全体の23.3%です。同調査によると日本の全世帯数は5178.5万世帯となっているため、その23.3%を住民税非課税世帯と考えると、約1200万世帯と推計されます。
●住民税非課税世帯は低所得世帯の基準になる
社会保障の多くの施策において、住民税非課税かどうかが低所得世帯の基準になっています。住民税非課税世帯になると、低所得者として優遇措置が受けられる場面が増えるということです。
以下、住民税非課税世帯となった場合のメリットとしてどのような優遇措置があるのか、また、住民税非課税世帯にデメリットはないのかを説明します。
住民税非課税世帯が受けられるメリットとは?
住民税非課税世帯が受けられる主な優遇措置としては、以下のようなものがあります。
●0~2歳の保育料が無料になる
2019年10月から、幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3~5歳のすべての子供の利用料が無料になっています。住民税非課税世帯の場合には、0~2歳の保育料も無料になるという優遇があります。
●高等教育無償化の対象になる
2020年度に開始した高等教育無償化とは、日本学生支援機構の給付奨学金と大学等の授業料・入学金の減免を併せて受けることにより、大学等にかかる学費の負担を大幅に軽減できる制度です。たとえば、住民税非課税世帯で子どもを自宅から私立大学に通わせる場合、給付奨学金として月3万8300円(2020年度)が給付されるほか、授業料の減免も受けられます。
●高額療養費制度の自己負担額軽減
高額療養費制度とは、医療費の自己負担が一定額を超えた場合、超過分について加入している健康保険から払い戻しを受けられる制度です。住民税非課税世帯には、高額療養費制度の自己負担額を軽減する措置もあります。
●障害者がいる世帯ならNHK受信料が免除に
身体障害者、知的障害者、精神障害者がいる世帯で住民税非課税となっている世帯については、NHK受信料が全額免除になる優遇があります。
●国民健康保険料・国民年金保険料の減免
国民健康保険料は所得を基準に計算しているので、住民税非課税の所得なら保険料は高くありません。それでも支払い困難な場合には、役所で申請すればさらに減免してもらえることがあります。国民年金についても、申請すれば保険料の全額免除が受けられます。
●給付金の対象となることも
住民税非課税世帯は、国などの給付金の対象となることが多くなります。2014年(平成26年)から2018年(平成30年)まで、消費税率引き上げに伴い実施された臨時福祉給付金では、住民税非課税世帯が支給の対象になりました。2019年(令和元年)には住民税非課税世帯を対象に、プレミアム付商品券が配られたことも記憶に新しいでしょう。
2021年度には、住民税非課税の子育て世帯やひとり親世帯に対し、子育て世帯生活支援特別給付金が支給される予定になっています。
住民税非課税世帯になったらデメリットはある?
上述のとおり、住民税非課税世帯になると、さまざまな優遇が受けられるというメリットがあります。住民税非課税世帯になって、特にデメリットになることはないでしょう。だからと言って、わざわざ住民税非課税世帯になることに、大きなメリットがあるわけではありません。
●低所得はデメリットになる
住民税非課税になる世帯は、世帯収入がかなり少ないはずです。優遇措置があるとはいえ、それによって生活が劇的に楽になるということはないでしょう。そもそも、子供がいなかったり、病院にかかることがなかったりすれば、優遇が受けられる場面も少なくなります。
生活していくにはお金が必要ですから、低所得にはやはりデメリットがあります。やむを得ない事情で収入が少なくなったときには、優遇措置を受けられることで安心感が得られるかもしれません。しかし、優遇を受けるために意図的に収入を減らすようなことをしても、メリットになるとは言えないでしょう。
●世帯分離する場合にも注意が必要
住所が同じでも、住民票上の世帯を分けると別世帯とみなされます。住民税非課税世帯の恩恵を受けるために、住民税を課税されている人を除外する形で、世帯分離を行うことを考える人もいるでしょう。しかし、世帯分離した場合、配偶者控除や扶養控除の要件をみたさなくなり、逆に税金が増えるケースも多くなっています。国民健康保険料を払っている場合にも、世帯分離によって保険料が増えることがあります。
介護のために親子で同居しているような場合、世帯分離して所得を分けることで、介護保険サービスの自己負担額を減らせるケースもあります。世帯分離を考えるなら、住民税を非課税にできるかどうかだけでなく、総合的にみたメリットとデメリットを比較するようにしましょう。
まとめ
住民税非課税になる年収は、家族構成によって変わるほか、自治体によっても多少異なるところがあります。詳細は自治体のホームページなどで確認してください。
急な収入減などで生活に余裕がなくなった場合、住民税非課税なら優遇措置が受けられることも知っておくと安心です。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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