20/09/16
住民税ってどうやって決まる?10%以上かかる自治体があるのは本当か
毎月、給与明細に記載されている住民税の額を見て、「結構高いな…」などと感じることありませんか? 住民税は、実際にはどのような手順で計算されているのでしょうか。また、住民税は基本的にどの地域でも一律ですが、自治体によっては加算される場合もあります。どうしてでしょうか。今回は、住民税の計算方法や、住民税の高い地域とその理由などをわかりやすくお話しします。
住民税は都道府県・市区町村に支払う税金
住民税は、みなさんが住んでいる自治体に納める税金です。
日本に住んでいれば誰もが、1月1日に住民票の届け出のある自治体(各都道府県や各市区町村)に対して、住民税を納めます。
住民税には、都道府県に納める「都道府県民税」と市区町村に納める「市区町村民税」の2つが含まれています。また、それぞれの税金は、前年の所得を基準にした「所得割」と課税対象者が一律に負担しなければならない「均等割」の2つで構成されています。所得割の税額は、前年1月~12月までの課税所得に税率およそ10%を掛けて算出します。毎年6月に届く「住民税の通知書」で税額を知ることができます。
実際の住民税の納め方には「普通徴収」「特別徴収」の2種類があり、働き方で区分されます。
会社員は特別徴収で住民税を納めます。特別徴収では、勤務先の会社が給与から住民税を預かり、各々の社員が住んでいる自治体へ納付します。納付額は、1年分を12回で分納することになります。
一方、個人事業主であれば、普通徴収で住民税を納めます。普通徴収であれば、各自治体から自宅へ納付書が届き、金融機関で直接支払います。納付額は、一括で納めることもできますが、4回(6月、8月、10月、翌1月)に分納することも可能です。
住民税の税率はどうなっている?
住民税には、地方自治体が課税する際に通常用いる「標準税率」が決められています。住民税の標準税率を一覧表にまとめました。
総務省ホームページ地方税の概要をもとに筆者作成
所得割は政令指定都市か否かで都道府県民税と市区町村税の内訳が変わります。とはいえ、基本的には合計10%となります。均等割はお住まいがどこであろうと同じ金額になります。
所得割や均等割が加算されている自治体も
住民税額の計算方法は、全国どの地域でも同じです。しかし、住んでいる地域によって、所得割に掛ける税率や均等割に違いがあります。自治体の財政を立て直すためであったり、都市の未来を創造するためであったり理由はいろいろです。
住民税の高い地域を見ていきましょう。
●住民税が高い都道府県
住民税が高く設定されている県は、神奈川県、宮城県、兵庫県です。
神奈川県は、水源環境の保全・再生のために「水源環境保全税」を上乗せしています。実際の超過課税は、所得割に0.025%、均等割に300円です。
宮城県は、豊かな環境を保全し、住みよい環境つくりの財源として、均等割に1,200円の「みやぎ環境税」を加算しています。
兵庫県は、豊かな自然を次の世代に引き継いでいくため、緑を保全・再生する取り組みとして均等割に800円の「県民緑税」を加算しています。
●住民税が高い市区町村
住民税が高く設定されている市には、神奈川県横浜市、兵庫県豊岡市などがあります。
横浜市は、緑を守り、つくり、育む取組を進める横浜みどりアップ計画を推進する財源として、均等割に900円の「横浜みどり税」が加算されています。神奈川県の上乗せと合わせると、全国で最も住民税が高い市といえます。
豊岡市は、平成21年度から所得割に0.1%の超過課税を適用しています。市の財源確保を目的としています。所得割に増税されている唯一の市です。こちらも、兵庫県の均等割の加算があり、住民税の負担が多い市といえます。
住民税の計算方法
住民税の計算は非常に複雑です。ですので、ざっくりと課税所得の10%と理解していただければ結構ですが、詳しく知りたいという方のために、細かな計算方法を紹介します。
ここでは、東京都江東区にお住まいの方を例に、住民税の金額を試算します。
【前提条件】
・家族構成・年代:1人暮らし・30代
・前年収入:350万円
・控除額:
社会保険控除額50万円
基礎控除33万円
①所得金額の算出
所得金額を算出する際は、給与所得控除を計算します。
●給与所得控除一覧表(令和元年分)
給与所得控除は、収入金額ごとの計算式に沿って算出します。
前年収入350万円は「180万円超360万円以下」の欄を見ます。
350万円×30%+18万円=123万円
350万円(前年収入)-123万円(給与所得控除)=227万円(所得金額)―ア
②所得控除額の算出
・社会保険料控除:50万円
・基礎控除:33万円
上記の控除額を合計すると
50万円+33万円=83万円 (所得控除額)―イ
③課税される所得金額の算出
アからイを引き、課税される所得金額(課税所得額)を算出します。
227万円(所得金額)−83万円(所得控除額)=144万円(課税所得額)―ウ
④税額の算出(所得割)
ウに東京都の税率(4%)、江東区の税率(6%)を掛けます。
144万円×4%=5万7,600円(都民税)―エ
144万円×6%=8万6,400円(区民税)―オ
エ+オ=14万4,000円(所得割合計)
⑤調整控除額の算出
調整控除額とは、住民税を計算する際、国に納める所得税と比べると、基礎控除などの人的控除が少ないため、住民税の税額負担を調整するために設けられたものです。
例えば、所得税を計算する際の基礎控除は38万円ですが、住民税の基礎控除は33万円です。このように控除が少ないと、課税所得が増え、納める住民税が増えてしまいます。調整控除額は、所得税と住民税の金額をならすことを目的にしています。
調整控除額は、課税される所得金額が200万円以下の場合、次のA)またはB)のいずれか少ない金額×5%(区民税4%・都民税1%)となります。
A)人的控除額の差額の合計額
今回の例では、一人暮らしがモデルとなっており、人的控除の対象になるのは、基礎控除の33万円です。基礎控除の人的控除の差額は「5万円」となります。
B.上記③の課税所得金額
こちらは「144万円」となります。
A)、B)を比較すると、A)の方が少ないので、調整控除額は、A)×5%で算出できます。
5万円×5%=2,500円(調整控除額)
⑥最終的な住民税の算出
④の所得割-⑤の調整控除+均等割で住民税が確定します。
14万4,000円(所得割)−2,500円(調整控除)+5,000円(江東区均等割)
=14万6,500円(住民税)
まとめ
実際のところ、住民税の計算方法は同じでも、地域の事情によって増税となる場合があります。住民税は、生活していれば継続的に支払うことになるため、引っ越しなどを検討する際は、チェックしてみると良いでしょう。しかし、住民税が高かったとしても、地域の都市創造、福祉、防災など、安心して暮らせる環境作りのために確保されているのであれば、有効だと納得できます。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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