21/05/04
女性のほうが年金が有利な4つの理由
日本では男女の性差で、損をしたり、得をしたりすることがまだまだ残っています。男性が有利といわれることが多いですが、実は年金制度においては女性のほうが有利な面もあります。今回は女性のほうが有利な年金のポイントを4つ、紹介します。
有利なポイント1:女性は男性より長生き
日本人の平均寿命が過去最高を更新し続けています。厚生労働省「簡易生命表(令和元年)」によれば、2019年の平均寿命は、男性81.41歳、女性87.45歳となっています。
男女の平均寿命の差は、6.04歳。しかし、国民年金の掛金は男女同一です。そもそも女性のほうが男性より長生きなので、同じ保険料を納めて65歳から年金をもらい始めるとすれば、女性のほうが長生きなので、もらう期間が長く有利という声もあります。仮に6年間多く老齢基礎年金を受け取るとしたら、78万900円(2021年度)×6年=465万5400円多くもらえる計算です。
有利なポイント2:特別支給の老齢厚生年金の受け取り開始年齢が5年長い
現状、老齢厚生年金の受給開始年齢は基本的に65歳からですが、かつては男性60歳、女性55歳からもらえるようになっていました。そのため、法改正の経過措置として、ある一定の期限より前に生まれた人には、特例的に65歳前から老齢厚生年金がもらえる仕組みになっています。この65歳前にもらえる年金を「特別支給の老齢厚生年金」といいます。
特別支給の老齢厚生年金は、段階的に支給開始年齢が引き上げられています。そして、男性は1961年4月2日、女性は1966年4月2日以後以後に生まれた人からは受け取れなくなります。受け取り開始年齢の期限が女性のほうが男性より5年長いため、その分多くの方が特別支給の老齢厚生年金を受け取れることになります。
有利なポイント3:年の差婚なら加給年金が受け取れる場合がある
加給年金とは、厚生年金保険の加入者に生計を維持されている65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合に加算される年金のことです。厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が65歳になったときに、65歳未満の配偶者がいる場合は年39万500円(特別加算含む)、1人目・2人目の子がいる場合は各22万4700円、3人目以降の子がいる場合は各7万4900円を受け取ることができます(金額はいずれも2021年度)。
たとえば、夫が厚生年金に加入していたとします。もし夫が65歳で妻が50歳の年の差が大きい夫婦の場合なら、配偶者分の加給年金を15年間受け取ることができます。39万500円(2021年度)×15年=585万7500円ですから、大きいですね。なお、加給年金を受け取る条件として、生計を同じくしており、前年の収入が850万円未満(所得655万5000円)であることが必要です。
ちなみに妻を夫と読み替えた場合でも、しくみは同じです。ただし、生計を維持されている配偶者は、正社員だけではなく、パートなども含めて厚生年金保険の加入期間が20年を超えると加給年金の対象から外れます。男性の場合は女性にくらべ、結婚や出産で働き方が変わることが少ないので、会社員や公務員で働いた期間がトータルで20年以上あれば、加給年金はもらえないことになります。20年に近い場合は注意が必要です。
有利なポイント4:遺族年金は女性だけに支給の年金がある
遺族年金には男女差が残っていて、男性に不利という部分があります。同じ読み方でも男性が「寡夫」になった場合には、受け取れない年金があります。
●遺族厚生年金の受け取り
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、生計を維持されていた配偶者・子、父母、孫、祖父母の順に受け取ることができる年金です。この場合、受け取る人の年齢も決まっています。妻の場合は何歳でもいいのですが、夫の場合は55歳以上です。受け取り開始の年齢も妻には決まりはありませんが、夫は60歳からと決まっています。もし、妻が亡くなって、夫が55歳未満で子どももいないとなると、自分の年金しかもらえないことになります。
●中高齢寡婦加算
遺族厚生年金には、夫が亡くなったときに40歳以上で子どものいない妻が受け取れる加算があります。この加算は妻が自分の年金を受取れるようになる65歳までの間が支給期間になります。この制度は「寡婦」というように対象は妻なので、男性は対象になりません。
●寡婦年金
自営業者やフリーランスのような国民年金の第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた場合に妻が受け取れる「寡婦年金」があります。子がいないか、いても一定の年齢を超えている場合で、10年以上婚姻関係にあった(事実婚を含む)ことが必要です。夫が老齢基礎年金を受取らずに亡くなった場合に、妻だけが受取ることができます。寡婦年金が受け取れる期間は、妻が60歳から65歳になるまでの5年間です。
まとめ
先ごろ発表された世界経済フォーラム(WEF)の「ジェンダー・ギャップ指数2021」では、日本は156か国中120位と、主要7か国(G7)では最下位でした。男女平等には程遠い状態です。
年金制度に男女差があるのは、就労の状況や賃金、社会背景などで女性が経済的に弱い立場に置かれてきたことが影響しています。今では働き方も多様になり、専業主夫や女性のほうが収入が高い世帯もありますし、同性同士のカップルもあります。ライフスタイルの変化につれて、実態に合わなくなった制度は今後見直しがされる可能性があるでしょう。
とはいえ、自分の場合には、どんな年金が支給されるのか要件や内容を知っておくと、将来の生活設計が描きやすくなるでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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