20/10/27
「10月の給与が減ってる!」と驚いた人がチェックすべき給与明細のポイント
毎月振り込まれる給与が、10月に減ることがあります。「どうして?」とびっくりした方は、給与明細をチェックしてみましょう。実は10月は、「社会保険の見直し」が反映される月なのです。今回は、毎月の社会保険料がどのように決まるのか、詳しくお話しします。
10月の給与が減ったのはなぜ?
10月の給与の手取りが減っていたら、給与明細の「社会保険の控除額」をチェックしてみましょう。
給与から天引きされる社会保険には、健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上の方のみ対象)、雇用保険などがあります。中でも、健康保険、厚生年金保険、介護保険は、毎年7月に社会保険料の見直しをする「定時決定」があります。定時決定では、直近3ヶ月(4月・5月・6月)の給与をもとに「標準報酬月額」算出します。これにより保険料の金額が決まり、9月1日から反映されます。
昨年に比べ支給される給与が増えていれば、標準報酬月額が増えることになります。そして、社会保険料の控除額が増加し、10月に受け取る手取り額が減ります。このため、10月分の給与が減ったように感じてしまうのです。
多くの会社の給与明細の備考欄には「標準報酬月額の変更に伴い、社会保険料が変更になっています」という説明が添えられているはずです。
給与から控除される社会保険の決まり方
健康保険や厚生年金保険、介護保険などの社会保険料の見直しのプロセスについて、もう少し詳しく説明します。
●標準報酬月額とは
標準報酬月額とは、会社員が会社から支給される毎月の給与などを区切りのよい幅で区分したもの。それぞれの社会保険料を出すときの計算のもとになるものです。
健康保険・介護保険の標準報酬月額は、第1級の5万8千円~第50級の139万円までに区分されています。また、厚生年金の標準報酬月額は、8万8千円~65万円までの32等級に区分されています。
標準報酬月額を計算する基準になる金額は、基本給だけでなく、役職手当、資格手当、通勤手当、残業手当など、労働の対象として支給されるものをすべて合計した「総報酬額」です。
例えば、毎月の給与などの総報酬額が21万円~23万円であれば、標準報酬月額は22万円のグループにまとめられます。このとき健康保険・介護保険は18等級、厚生年金は15等級に属することになります。
このような標準報酬月額をまとめた表が、あらかじめ都道府県ごとに作成されています。そして、等級ごとに個人が負担する健康保険、介護保険、厚生年金保険料が一目でわかるようになっています。
●定時決定での計算方法と反映される時期
毎年7月に行われる定時決定では、会社が4~6月の3か月間に支払った給与の総支給額をもとに計算し、年金事務所または健康保険組合へ書類を提出します。
諸手当を含む総支給額をもとに、標準報酬月額を計算してみましょう。なお、いずれの月も17日以上勤務していることが前提となります。
例)総支給額が4月:23万円、5月:25万円、6月:24万円の場合
・標準報酬月額の計算式=総報酬額(4月+5月+6月)÷3
数字をあてはめ計算をすると以下のようになります。
(23万円+25万円+24万円)÷3=24万円
標準報酬月額は「24万円」に決定します。等級は、健康保険・介護保険では19等級、年金保険では16等級になり、9月から翌年8月まで適用されます。
●毎月の社会保険料の計算方法
実際に控除される社会保険料を計算するときは、標準報酬月額に健康保険、介護保険、厚生年金保険などの保険料率を掛けて計算します。このとき算出された保険料は、会社と社員本人で負担します。実際の計算式は以下のとおりです。
① 健康保険
被保険者が40歳未満の場合:標準報酬月額×健康保険料率
被保険者が40歳以上の場合:標準報酬月額×(健康保険料率+介護保険料率)
保険料率は、都道府県ごとに違いがあります。会社の本社所在地によって適用される料率が決まります。
② 厚生年金保険
標準報酬月額×18.3%
保険料率は、2017年9月以降固定されています。
算出した保険料は、会社と社員が折半で負担します。給与明細の健康保険、介護保険、厚生年金などの控除欄に表示されているのは、社員負担分です。
実際の例で、社会保険料を計算してみましょう。
Aさん 33歳
勤務先の本社所在地:東京
標準報酬月額:24万円(健康保険では19等級・厚生年金では16等級に該当)
健康保険料率:9.87%
厚生年金保険料率:18.3%
① 健康保険料
24万円×9.87%=2万3,688円
Aさんが負担する保険料は、2万3,688円÷2=1万1,844円
② 厚生年金保険料
24万円×18.3%=4万3,920円
Aさんが負担する保険料は、4万3,920円÷2=2万1,960円
定時決定で標準報酬月額が決定すると、原則1年間は変更することはありません。しかし、様々な理由で給与の大幅な変動が3か月以上続けば途中で標準報酬月額を変更する「随時改定」もあります。
とはいえ、給与の総支給額は社会保険料の計算の元になっていることを覚えておけば、給与の手取り額がいつもと違っていても焦ることなく給与明細をチェックできるでしょう。
まとめ
毎年、給与に応じた標準報酬月額の見直しがあります。反映されるのは9月分の給与(10月支給分)からとなり、給与の手取りが減ることもあります。そんなときは、給与明細のどこを確認すればよいかこのタイミングで確認してみるとよいでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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