19/03/08
年金は賃金・物価の上昇ほど増えない!年金はどうなる?老後資金はどうする?
2019年は、5年に1度の年金制度の見直しである「財政検証」が実施され、報告書が発表される年に当たります。財政検証のときに、おおむね100年後に年金給付費の1年分の積立金を持つことができるように、年金額の伸び率の調整を行う期間の見通しやその他の施策が決まります。
財政検証は、公的年金制度のこれからを考える上で大変重要なのです。
今回はこの財政検証を前に、年金額が決まるしくみのおさらいと、今後の動向を踏まえて、個人でできる老後資金の貯め方・増やし方を考えます。
年金額は賃金や物価の上昇率ほどは増えない!
年金は、基本的には現役世代の賃金や物価の上昇率に連動しています。しかし、賃金や物価の上昇率よりも伸び率を下げる(賃金や物価の上昇率ほどは年金を増やさない)ことで、保険料などの収入財源の範囲で年金給付をしながら、安定した運営を行おうとしています。これが、「マクロ経済スライド」です。
具体的には、以下の図のように年金額を調整しています。
画像:厚生労働省HPより
2019年度の年金額については、
・物価変動率:+1.0%
・賃金変動率:+0.6%
と、どちらもアップしていますが、物価変動率が賃金変更率を上回るため、法律により賃金変動率が用いられます。
スライド調整率は、年金被保険者数の変動率(今回+0.1%)×平均余命の伸び率(定率-0.3%)で計算されます。それを賃金変動率から差し引くことで、年金額の変動率が決まります。
・スライド調整率:-0.2%
・2018年度に調整できなかったスライド調整率:-0.3%
そのため、
0.6%-0.2%-0.3%=0.1%となり
年金額は0.1%のアップとなりました。
スライド調整により所得代替率はしばらく下がる
マクロ経済スライドでは、被保険者数の変動率と平均余命の伸び率からスライド調整率が決まります。少子高齢化である昨今、スライド調整率は給付において、マイナスに働きます。しかしマクロ経済スライドはエンドレスではなく、財政検証の結果、100年後も給付が安定して見通せるとなれば、スライド調整はストップし、賃金や物価の上昇率そのままに年金額もアップします。
とはいえ、しばらくはスライド調整が続くと考えられます。賃金や物価が上昇するほど年金額はアップしないため、いわゆる所得代替率(現役世帯の所得に対する、年金受給世帯の所得率)は下がります。
だからといって、年金がなくなることはありません。なぜなら、スライド調整のしくみの図からわかるように、賃金や物価が下がったときは調整が行われないことになっていて、あくまでも賃金や物価の上昇がある場合のみの調整だからです。
この、スライド調整の期間がどれくらいになるかが財政検証で見通されます。
また、年金額以外の気になる動向としては、繰り下げ受給年齢の限度を70歳から延ばすというものがあります。
ぜひ財政検証に注目してください。
老後の生活費の基礎となる老齢基礎年金を増やす
では、老後資金はどのように貯め、増やせばいいのでしょうか。
老後資金の土台は、何といっても公的年金です。生きている限り確実に受給できる、賃金や物価が上昇すれば年金も増える、という安心のしくみがあるからです。老齢基礎年金・老齢厚生年金を基本に老後資金を考えましょう。
中でも、遺族厚生年金との調整などがない老齢基礎年金は、自分の老後の生活費の基礎です。保険料の未納をしない、付加保険料を払うなど、できる限り増やせる方法をとっておきましょう。
確定拠出年金や国民年金基金を優先させる
老後資金を貯めるのに公的年金の次に優先させるべきなのは、「公的年金に準ずる方法」です。例えば会社員なら、企業型確定拠出年金でのマッチング拠出、自営業者なら国民年金基金や小規模企業共済、そしてどちらにも共通するiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。
これらの魅力は、掛金が全額所得控除の対象となるので、掛金を払っているときにも節税の効果を受けることができることと、基本的には途中で引き出せないので、確実に老後資金を貯めることができることです。
まとめ
公的年金は、そのときの現役世代の所得と同じ額はもらえません。国はモデルケース世帯の所得代替率を、「50%を切らない」ようにしています(モデルケースとは、夫標準的な給与収入で40年間厚生年金に加入し、妻40年間専業主婦だった共に65歳以上の年金受給世帯)。
老後も現役時代に近い生活を続けたいと思うなら、自分で老後資金の確保をしておくことや、働き続けるための方法を考えなければなりません。
そのどちらの準備も、少しでも早くから始めておくことが鉄則です。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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