18/12/04
消費税増税対策「ポイント還元制度」の仕組みは?メリットと懸念点も解説
2019年10月に予定されている消費税増税。現在の税率8%から10%に引き上げられることによる消費者の負担増加は避けられません。これに伴い、どのような対策が政府から打ち出されるかが注目されています。
今回は、消費税増税対策の一つとして最近話題となっている「ポイント還元制度」について解説します。
ポイント還元制度の仕組みと目的
ポイント還元制度は、消費税増税対策として予定されている経済施策です。中小店舗でキャッシュレス決済をした際に、利用したクレジットカード会社などを通じてポイントが還元されます。還元されるポイントは、ポイントを発行する会社の負担を国が補助する仕組み。
ポイントが還元されるキャッシュレス決済にはクレジットカードの他、電子マネーやQRコードも対象となります。気になるポイント還元率については、5%のポイント還元を検討する考えを11月22日に安倍晋三首相が表明し、注目を集めています。実施期間は消費税増税が開始される2019年10月から東京オリンピック開催前までの約9ヵ月間です。
制度の目的は、消費税増税に伴う駆け込み需要や反動減から起こる「経済の変動を抑制」することです。加えて、ポイント還元をキャッシュレス決済に限定することで、中小店舗の「キャッシュレス化を促す」狙いもあります。特に東京オリンピックで増加が予想される訪日外国人のキャッシュレス化の需要に対応する意味合いが強いと考えられます。
消費者から見たポイント還元制度のメリットとは?
● 増税分以上に還元が受けられる
現在予定されているポイント還元率は5%です。消費税率は現在の8%から10%に引き上げられるため、増税される2%より3%多く還元されます。さらに税率を現在の8%に据え置く軽減税率が適用される飲食料品(酒類と外食を除く)もポイント還元の対象となるため、飲食料品をキャッシュレス決済することで5%分がそのまま還元されるといったメリットがあります。
● キャッシュレス決済に対応する店舗が増える可能性
ポイント還元制度による顧客の流入を見込んで、キャッシュレス決済に対応する中小店舗が増える可能性があります。普段の買い物でクレジットカードや電子マネーを利用している人にとっては、利用できる店舗が増えるため利便性が高まります。
● キャッシュレス化で訪日外国人の利便性向上
キャッシュレス決済に対応する店舗が増えると、訪日外国人の買い物もしやすくなります。クレジットカードの対応店舗が増えることで、その分両替する日本円が少なく済むためです。多額の現金を持ち歩く必要がなくなるので、セキュリティ面も向上します。
ポイント還元制度の懸念点
● 高齢者や現金派の人には恩恵が受けにくい
この制度の対象はキャッシュレス決済に限定されているため、普段現金で買い物をしている人にとってはメリットがありません。特に現金で決済を行う割合が高い高齢者にとっては恩恵を受けにくい施策と言えます。
● 中小店舗の負担増加
キャッシュレス決済に対応するためには、店舗側に導入コストがかかります。決済端末の購入やクレジットカード会社への手数料が必要になるためです。中小店舗ではこれらの導入コストの負担が大きいという理由でキャッシュレス決済に対応していないケースが多くみられます。したがって中小店舗のキャッシュレス化を促進させるためには、端末の配布や手数料の補助などの対策が施されるかどうかといった点もポイントとなってきます。
● 格差拡大を懸念する声も
この制度においては格差拡大が懸念されています。一つは地域格差です。都市部ではキャッシュレス決済に対応している中小店舗も少なくありません。一方、地方では都市部と比較してキャッシュレス決済に対応している中小店舗が少ないため、地方の消費者が恩恵を受けにくいといったデメリットが予想されます。
また、収入格差の問題もあります。クレジットカードを作るには一定の安定した収入が必要なため、クレジットカードが作りにくい低所得者層はこの制度の恩恵を受けにくいといった懸念があります。
まとめ
ポイント還元制度は検討段階にあるため、対象となる店舗の詳細や具体的なポイント還元方法など明らかになっていない部分が多くあります。今後の動向に注目が必要です。
またキャッシュレス決済手段を持っていない場合は、クレジットカードや電子マネーなどを利用できるようにして、ポイント還元を受ける準備をしておきましょう。
【関連記事もチェック】
・キャッシュレス決済・スマホ決済アプリ7選
・消費税8%で住宅購入したいならいつまでに契約すべき?
・スマホ決済の選び方・使い方 キャッシュレス時代に備えよう
・キャッシュレスの次はカードレス 静脈認証決済ならカードも不要
・銀行ビジネスの現状は?銀行の将来はどうなっていくのか|マネラジ。#76
鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
この記事が気に入ったら
いいね!しよう