18/11/28
長期間別居中の夫婦が離婚した時に覚悟しておくべきお金のこと
夫婦が長期間別居している場合、「このままずるずると夫婦を続けるよりも、財産分けをして離婚した方がよいのか?」と考えることもあると思います。
今回は、夫婦でいる場合と離婚した場合との違いから、離婚届を出すタイミングについて考えてみます。
離婚したときの最も大きな違いは相続権がなくなること
別居のまま夫婦でいるのと離婚するのとでいちばん違う点は、相続です。夫が亡くなったとき、妻は必ず相続人になります。妻は、子供がいれば夫の財産の半分を、子供がいなければ夫の財産の3分の2以上を相続することが可能です。
「相続まで待たなくても、離婚すれば財産の半分をもらえるのでは?」と思う人もいるかもしれません。それは少し違います。離婚で財産分与が受けられるのは、あくまで婚姻期間中に夫婦が築いた財産の半分です。夫が離婚時に持っている財産の半分ではありません。
たとえば、夫が親から相続した財産は財産分与の対象にはなりませんが、夫が亡くなったときに相続することはできます。相続のことを考えると、夫が亡くなるまで添い遂げた方が得ということです。
離婚時に約束しても将来の退職金を確実にもらえる保証はない
夫の退職間近に離婚した場合、将来受け取る退職金についても、財産分与が受けられます。退職金は給与の後払いと考えられており、夫婦が婚姻期間中に築いた財産に含まれるのです。
将来の退職金については、受取予想額を算定し、離婚時点で先に受け渡しを済ませておくこともできます。しかし、退職金の額の算定が難しい場合や、離婚時点で手元に現金がない場合には、退職金が出た時点での受け渡しを約束するしかないでしょう。
離婚しても夫の将来の退職金をもらえるなら、夫の退職前に離婚したいと考える方も多いと思います。退職金をもらう約束を公正証書にしておけば、もし夫が払ってくれなくも、強制執行が可能です。しかし、それで確実に夫の将来の退職金をもらえるとは限りません。
離婚時の約束どおり将来の退職金を払ってもらえるのは、あくまで夫が元気で定年まで勤務した場合です。もし夫が定年前に亡くなったら、夫自身が退職金を受け取れないため、退職金を払ってもらうこともできません。
なお、退職前に亡くなった場合、会社から死亡退職金が支払われることがあります。しかし、死亡退職金は就業規則などで定められた親族に払われるもので、離婚した妻に受け取る権利はありません。
夫の退職まで離婚せずにいれば、本来の退職金も死亡退職金ももらえます。老後の資金として夫の退職金をアテにしたいなら、退職までは離婚しない方がいいということです。
相手から離婚を請求される可能性も想定しておく
ここまで説明してきたとおり、お金のことだけ考えると、離婚せずなるべく長く夫婦でいた方が良いことは明らかです。しかし、別居が長期間続いている間に、夫にも再婚したい女性が現れる可能性があります。自分には離婚する気がなくても、相手から離婚を請求されることもあるということです。
一方的に離婚を請求された場合、離婚原因があれば、離婚に応じざるを得ません。裁判になった場合、離婚原因が認定されれば、離婚判決が出るからです。別居が長期間続いていれば、夫婦関係は破綻しているとみなされ、離婚原因になってしまいます。夫婦関係が破綻していれば、不貞行為にもなりませんから、慰謝料ももらえません。
法律上、夫婦には同居・協力・扶助義務があります。離婚せず夫婦でいることを選ぶなら、仮に同居が困難だとしても、最低限夫を助ける姿勢は必要です。妻として何もしていない場合には、妻の座を奪われてしまっても文句は言えません。
離婚するときには、相手に「離婚させられる」よりも、自分で「離婚する」ことを選びたいはずです。長期間の別居で夫婦としての実態がなくなっているのなら、いつ離婚になってもいいように、覚悟は決めておくべきでしょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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